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編集部おすすめ! メキシコが舞台の傑作映画5選!

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『アモーレス・ペロス』

製作年/2000年 監督/アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ 脚本/ギレルモ・アリアガ 出演/ガエル・ガルシア・ベルナル、エメリオ・エチェバリア

巨匠イニャリトゥの快進撃はここからはじまった!

『バードマン』(2014年)でアカデミー賞作品賞オスカーを獲得したイニャリトゥによる、今や伝説となった初監督作。当時の彼はテレビプロデューサーやラジオDJなどの多彩な仕事ぶりで知られていたそうだが、初めて挑んだ本作で巨匠級の重厚さ、そして破壊力と獰猛さをスクリーンに刻み、最後にはしっかりと胸熱くさせるラストへと集約させていくのだから本当に凄い。この人はまさに映画監督になるべくしてこの世に生まれた人なのだろう。

舞台はメキシコシティ。オムニバス形式の第一話目は、闘犬をめぐって飼い犬が頭角を現し、第二話では事故で大怪我を負ったモデルの女性が不倫相手の家で療養生活を送り、第三話では無数の犬を引き連れた浮浪者姿の暗殺者が、生き別れた娘との再会を願う。すべてのエピソードは自動車事故によって一つにつながるのだが、そのエネルギッシュかつスマートな語り口にも舌を巻くばかり。亡くなった我が子に捧げて作られたという背景を踏まえて鑑賞すると、本作への理解がより深まるに違いない。

『ボーダーライン』

製作年/2015年 監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ 脚本/テイラー・シェリダン 出演/エミリー・ブラント、ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、ジョン・バーンサル

麻薬カルテルとの壮絶な死闘を描いた傑作!

様々な犯罪が行き来するアメリカとメキシコの国境エリア。特別部隊に配属されたFBI捜査官ケイトは、ベテラン捜査官マットと謎多きアレハンドロと共に麻薬カルテルを殲滅すべく一大ミッションへと身を投じていく。そこで残忍な殺し合いや騙し合いの数々を目にするうちに、次第にケイト自身の中にある善悪や法のボーダーラインまでもが揺らぎはじめ……。

これは一寸先も見えないトンネルを手探りで進んでいくかのような戦いの物語だ。冒頭から最後のショットまで、いつ何が起こるかわからない乾いた緊張感が絶え間なく続く。主演3人の演技は抜群に突き抜けているし、それを束ねるヴィルヌーヴの演出も息つく暇を忘れさせるほど凄まじい。これに加えて讃えたいのが、脚本を手掛けたテイラー・シェリダンだ。”フロンティア”を舞台に非情な命のやりとりを描きつつ、枯れ果てたかに見えた人間性をそこに熱くほとばしらせるのが抜群にうまい。かくもすべてのピースが見事にハマり、細部まで研ぎ澄まされた本作。2010年代における最高峰の映画に推す声が多いのもうなづける。

『すべての美しい馬』

製作年/2000年 原作/コーマック・マッカーシー 製作・監督/ビリー・ボブ・ソーントン 脚本/テッド・タリー 出演/マット・デイモン、ペネロペ・クルス、ヘンリー・トーマス、ルーカス・ブラック

3人のカウボーイを待つ過酷な運命とは?

1949年、生まれ育ったテキサスの土地を失い、新たな人生を求めてメキシコへ旅立ったジョンと、その親友レイシー。だが、途中で仲間に加わった少年ジミーの黒い馬をめぐって騒動が持ち上がり、さらに新たな働き口の牧場では美しい娘アレハンドラとジョンが激しい恋に落ちる……。コーマック・マッカーシーの原作小説を、俳優としても知られるソーントンが実写化。自然の美しさ、馬たちの躍動が際立つ一方、人間たちは不運と暴力の渦に巻き込まれて転がり落ちていく。だがそれだけでは終わらないのがマッカーシー文学で、主人公が序盤の心優しい男から成長し、自らの手で人生の手綱を引こうとする姿が心を打つ。

実は本作、もともとは3時間近くあったものが、ハーヴェイ・ワインスタインの命令で2時間以内に削ぎ落とされたのだとか。各シーンに込められた情熱の密度が計り知れない作品だけに、初志貫徹できなかった作り手の無念さは相当なものだったことだろう。いつの日かオリジナル版を目にする機会はやってくるのだろうか。

『天国の口、終わりの楽園。』

製作年/2001年 製作・監督・脚本/アルフォンソ・キュアロン 脚本/カルロス・キュアロン 出演/ガエル・ガルシア・ベルナル、ディエゴ・ルナ、マリベル・ベルドゥ

狂騒の後に切なさが押し寄せてくる……

主人公はメキシコシティで暮らす多感なティーン2人。頭の中はガールフレンドとのセックスのことでいっぱいの彼らが、とある人妻に一目惚れし「観光ガイドには載っていないとっておきのビーチに連れてってあげるよ!」と誘ったことで、生涯忘れ得ぬ一夏の旅路が幕を開ける。名匠アルフォンソ・キュアロンが万感の思いを込めて故郷メキシコで撮り上げ、現地では年間NO.1ヒットを記録した名作である。

日本人の我々がビックリするほどの性描写で彩られつつも、この旅を通じて狂騒の向こう側に“友情”や“生と死”といったテーマが浮かび上がってくるところに、もう2度とは戻ってこない掛け替えのない時間をヒシヒシと感じずにいられない。作品を彩るフランク・ザッパやブライアン・イーノの名曲も旅情にいっそうの深みや切なさを添えてる。今や国際的なスター俳優となったガエル&ディエゴの幼なじみゆえの息の合い方、即興性、感情のぶつけ合いにも注目したい。

『ザ・メキシカン』

製作年/2001年 監督/ゴア・ヴァービンスキー 製作総指揮・脚本/J・H・ワイマン 出演/ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツ、ジェームズ・ガンドルフィーニ、J・K・シモンズ

伝説の銃を手にするのはいったい誰だ!?

はじまりは一本の奇想天外な脚本だった。これに心底惚れ込んだプロデューサーは知名度の低い俳優を起用して低予算で映画化するつもりだったのだが、どこからかブラピとロバーツが脚本の噂を聞きつけ「ぜひやりたい!」と名乗りを上げ、事態はトントン拍子で進み出すことに。かくも多くの映画人を虜にした本作は、”メキシカン”と呼ばれる曰く付きのアンティーク銃をめぐって争奪戦が繰り広げられるクライム・コメディ。ブラピはギャングの命令でこの銃を回収するためにメキシコへ飛び、恋人役のロバーツは全く別行動でラスベガスへと車を走らせる中、この銃をめぐる二重三重の陰謀に巻き込まれてしまう。

人気絶頂期の二人の共演ゆえ、彼らのやりとりも大きな見どころなのだが、それ以上に、殺し屋役のジェームズ・ガンドルフィーニが添える絶妙な存在感が素晴らしい。ロバーツと行動を共にする中で愛の指南役となり、守護天使にもなって彼女を守るその姿。ラストで思いがけない名優が登場するなど、隠し球をいろいろ秘めた快作である。

文=牛津厚信 text:Atsunobu Ushizu
photo by AFLO

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