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希望とは何か? 「WISH」(最新作ネタバレあり)

「ウィッシュ(WISH)」(2023年 アメリカ 95分)

監督:クリス・バック、ファウン・ビーラスンソーン
出演(日本語吹き替え版):生田絵梨花、福山雅治、山寺宏一、檀れい


出典元:https://eiga.com/movie/97886/gallery/

どこのRPGゲームだったかは忘れましたが、占い師が主人公にこんなことを言っていました。
「人の人生は99%が決まっています。でも、残りの1%は、努力や行動でその先にある出来事が変わります。それを人々はこう呼びます。『希望』」

この言葉を考えたシナリオライターの人は本当に文才があると思います。
ゲームも一つの芸術作品ですよね。自分が学生時代に学校で大人にこれを訴えても聞く耳を持ってくれませんでした。(ため息)
この映画もそんな希望に満ちた内容か?と言えばそうではありません。

希望をなくしたすべての人に響く物語なのではないでしょうか?

あらすじ

どんな願いでもかなうというロサス王国。
王国の国民になりたいという人が世界中から来るこの国に住んでいる17歳のアーシャは国民から慕われているマグニフィコ国王との面談である秘密を知ることになる。
どんな願いでもかなう、という裏側にある真実は非常に恐ろしいものだった。


出典元: https://eiga.com/movie/97886/gallery/3/

ディズニー100周年にこの内容をぶつける勇気に称賛

ディズニー設立100周年の記念作品として、この内容を出してくるということに非常に勇気ある決断だったと思います。
それは同時に、今のままのディズニーではこの先はない、設立者のウォルトディズニーを神格化してばかりでは、衰退していくだけだという危機感を感じました。
ジャニーズや他の実力者が力を持つ構造の中で、自分が人気者になる、売れることと引き換えに様々なディールを実力者に差し出さなければならないということは、日常的にもよく見られることです。
それが本当に自分の求めたものだったのか?
今の生活が安定しているのは誰のおかげか、と脅迫されなければならないのか、ということを問うものであったと感じます。
ディズニーがこの作品を100周年の記念にぶつけてきたことに、非常に意義があると感じました。

願いを国王に差し出した人たち

ロサス王国では、18歳になると願いを国王に差し出す決まりになっています。
願いは様々ですが、その願いが叶うために国王や王国のために働く必要があります。しかし、願いを差し出した人たちはどこか浮かない毎日を送っています。
希望を見失った生活を送る代わりに安定的な毎日が保証される。
どこかで聞いたことがないでしょうか?
そう。サラリーマン生活です。。
この作品の賛否は分かれていますが、希望に満ちた生活をしている人にはおそらく響かない作品なのでしょう。
願いを差し出したことでなにか大事なものを失ったような気がする。
これも分からなくはないです。
子供向けのようで希望をなくした大人が見てもなかなか共感できるものになっています。

自分は変なのではないか?

みんなが18歳になると当たり前のように願いを差し出すのに、それがおかしいと思うのは変なのではないか?とアーシャは葛藤することになります。
当たり前を疑い、それは違うんじゃないかと訴えるのは非常に勇気のいることです。
その中で自分は変なのでは、と感じることもあるでしょう。
これは確かに経験したことのある人にしか響かない場面ではないかと思います。
アメリカでリーマンショックが起こる前兆を見つけて、先に動いた人たちの物語を思い出します。
詳しくはこちら (マネーショート)

人に理解をされないことを行うのには本当につらいことで、本質と向き合わなければ何も解決しない、さらには解決する必要さえないのではないかと考えることは、とてもつらいことです。
内なる声に蓋をして生きていくことがどれだけつらいことか、経験したことのない人でなければ絶対にわかりません。
アーシャも他の仲間たちと自分は違うのでは、と苦しむ場面があり、とてもつらさが共感できる人は、それだけそういう経験をしてきたのでしょう。

無邪気なスターの存在

そんなアーシャのもとに現れた魔法が使える無邪気なスターの存在は、王国の人たちの意識を変えていきます。
これはいろんなしがらみで思考が停止し、視野狭窄になっている大人たちにいろんな意味で気付きを与えてくれます。
全く何も知らない子供が「なぜ○○したらいけないの?」と単純に聞くというような行為をスターがしてくれていると理解することができます。
年齢が上がって行くと、自分一人でできることは増えて色々な現実も知ってしまうことも多いのですが、スターのように何も知らないことが強みになるということもあります。
分別のある大人が、皆のためにと自分の本音を抑えることが閉塞感にもつながることは大いにあり得ることです。


出典元:https://eiga.com/movie/97886/gallery/12/

国王の想い

マグニフィコ国王も自身の過去のつらい経験から、誰もが平和に暮らせる王国を作ろうと考え、実行します。
しかし、いつからか国王の個人崇拝がメインとなり、王国の人々の願いは国王のためのものになっていきます。
国王は自分がかっこいいから国民が慕っていると考え、何をしても許される、と傲慢な態度を取り始めます。
確かに、自分がイケメンだ、かわいいとか思っている人は男女問わず大体タチが悪いですよね(笑)
こうしたルッキズム批判も入れているところがディズニーの世間の流れを読む力に長けている、と言えるでしょう。

王国内に協力者が増えていく

国王を止めなければ大変なことになる
と考えていても動き出せなかった人たちがアーシャとスターのおかげで変わり始めます。
強いリーダーシップを発揮している人は、進んでいる方向が正しい時には皆が歓迎しますが、その動きが暴走しだすと大変なことになることはよくあります。
ロシアのお方も、ちょっと前まではロシア経済を成長させた立役者だったのですが、その功績を打ち消すほどの暴挙に出てしまいました。
やはり誰かが止めないといけない時に勇気を持ってNoということは非常に重要だということなのでしょう。

出典元:https://eiga.com/movie/97886/gallery/5/

映画中毒者からの一言

前の会社での退職時の顛末を大画面で見せられているみたいで
とても複雑な気持ちになりました。。

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