古着屋をやっていた頃

古着屋をやっていたことがある。

やっていたと言っても、ネット上に古着屋の屋号を立てて看板を出していただけである。

15年ほど前のアメカジブームの時に、古着屋巡りを楽しみとしていた街歩きをよくしていた。

そんな趣味の延長で、古着を仕入れて売って、自分も着ての一石二鳥を狙って、古着屋を副業としたかったという希望なだけだ。

そんな古着屋だったので、買いに来るような客は皆無だ。

ただ、古着屋のページデザインは独学で頑張ったため少し見栄えのいいものに仕上がっていた。

そのページにコンセプトを書いていたのが見た人に響いたのか、服飾系の専門学校生からインターンシップを行いたいという連絡があった。

これに少し戸惑った。

私は服飾系の学校を出たわけではないが、趣味程度で古着屋をやっていた頃でも、自営業の難しさを実感していた。

服を売るということがとても大変だったのは良く分かっていた。

こんな見かけだけの古着屋に、その後職業とする人が通う専門学校生がインターンシップで来ても、実は私はただのサラリーマンだった、古着屋はネット上だけで実店舗はないなんて、申し訳なさすぎるというものだ。

それ以上に、専門学校生は服が好きで服飾の学校に通ったのだから、少しでも実務ができるようなインターン先に行ってもらいたい。

迷う必要はないという方もいると思うが、インターンシップは丁重にお断りした。

その他にも、テレビのドキュメント番組の取材が来たりもした。

しかし、真実を話すと、やはり取材の話は立ち消えとなった。


この古着屋のコンセプトはよかったのかもしれない。

しかし、コンセプトだけではビジネスは回せない。やはり、実行力が必要だった。

世の中、なんとなく好きなことを仕事にすることが幸せなことという風潮があるが、どうも疑問に思わざるを得ない。

仕事にするためには、自分の好きと、世間的な好きがマッチする必要がある。

それは時代とともに変化もする。

そのときの好きを仕事にしても、違うものに気持ちが移ってしまうという事もある。

やはり仕事は仕事というのが一番なのかもしれない。

仕事に他の感情を入れると、仕事を仕事として見れなくなってしまうのかもしれない。

これはドライな考え方かもしれないが、自分の仕事に固執するといったこともなくなり、「無の境地」で仕事ができるのかもしれない。

趣味は趣味。仕事は仕事。というのが一番なのだろうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?