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マーケティングが“音“を“楽しむ“を奪った⁈

4月から「Golden Time Age CLUB」として様々な“大人の新たな音楽の楽しみ方“イベント作りをスタートしました(第一回目:歌謡曲ナイト大盛況ありがとうございました!)が、5月26日にちょっとマニアックな企画を行います。
テーマは「モノラルサウンドを爆音で聴こう!です。

“モノラルサウンド“の迫力はハンパ無い!

「モノラル=古い音=音質良くない」
こう思う方がほとんどだと思いますし、私もそうでした。
が!
実は違ったのです!
先日、企画のプロデュースをお願いした株式会社カジハラ・ラボ代表取締役の梶原弘希さんに、新宿のとある音楽BARに連れて行って頂いたのですが、そこでの「モノラルサウンド」体験は衝撃的でした。
まずびっくりしたのは、
「え?なんでこんなに一つ一つの音がクッキリと粒だっているの⁈」
ということ。
全ての音が凄くクッキリ、そして厚い。
もっと言うと“濃い“のです。
ザ・ロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」。
音楽プロデューサー フィル・スペクターの代名詞である“ウォール・オブ・サウンド“の象徴とも言える有名な曲です。
正直、これまでは「どこがウォールなんだろうね〜、このモコモコしてるとこかな?」くらいな認識だったのですが、しっかりとしたモノラルサウンドシステムで聴いたら、マジで壁が迫って来ました、音の壁が!

“モノラル<ステレオ“ではない!

面白いのは、ステレオというのは音の再現技術としての発明ではあるが、サウンドスタイルとしてはモノラルの進化形ではない、ということ。
モノラルとステレオ
実はそれぞれ別々の確立されたサウンドスタイルなのです。
聞いたところによると、かのビートルズもモノラルのサウンドスタイルが好きで(モノラル版の“I saw her standing there“を聴いたのですが、身震いしますね笑)、モノラルのミキシングは自分達でキッチリとやっていたがステレオ版は適当にやっておいてよー、だったそうです。

“音“自体を楽しむ

今回の新宿での衝撃体験、一言で言うと「“音“ってこんなに楽しいの⁈」ということでした。
私、オーディオマニアではないですが、“いい音を聴く“ということ自体がこんなに楽しいものなのだ、とは知りませんでした。
いい“楽曲“を聴く、ではなく、“音=サウンド“を聴く、いや“全身で感じる“ということ、是非オススメしたいです。
本当に細胞ひとつひとつが喜ぶって感じになりますよ。笑
でも、なぜ、そんな素敵な体験が古臭いものとして時代の隅に追いやられていってしまったのでしょう?

実は単なるマーケティング戦略⁈

商品セールスにおいては、それが消耗品でない限り、メーカーが売上を上げる為には“買い換え需要“を喚起させる必要があります。
それは音楽機器の世界でも同様で、そのひとつが1960年代のステレオ音源&機器への移行だったのです。
新たな“ステレオ“という商品群を売り出す為には、現状の否定とアップデート感の創出が有効です。
そこから、“モノラル=古い=音が良くない“というマーケティングプランが実行されたわけです。
そして、私もそんな単なるマーケティングプランを事実と捉えて生きてきたのです。
マーケティングとしては大成功ですね。

“音“を楽しむの劣化が“音源“産業を弱体化させた⁈

ステレオのマーケティング大作戦に成功した音楽機器産業は、同じような手法を繰り返していきます。
それはCD、MD(あったな〜笑)、配信DL、サブスクと。
私もその波にしっかりと乗っていましたし、“楽曲“を楽しむ上ではそれは便利で良かったのです。
一時期はそれによって音源/楽曲セールスの規模も拡大しましたし。
ですが、その“利便性“と引き換えに、“音“自体を楽しめるという“音の質“は低下していきました。
そして、それは音源ビジネスにボディーブローのように効いて来ていたのです。
私の音楽関係の友人が言っていましたが、CDの売り上げが落ちてライブの売り上げが上がったことは、人々の中に“音“自体を楽しみたい!という欲求が生まれて来たことの表れではないか、と。
つまりは“音自体を楽しむ“全身の細胞で音を感じるという喜びは人間にとって根源的な欲求なのだと思うのです。

大切なのは手法ではなく“スタンス“

以前も書きましたが、こういうことからも、世の中の人々を単なるマーケットと捉えて、その消費をコントロールしようとする“マーケティング“という発想は、既に時代遅れなのだと思います。
これから大切なのは、手法ではなく、スタンス。
本当に世の中の人々を幸せにしたい、楽しませたいというスタンスを持った企画、企業、活動だけが受け入れられていくのだと思います。
そして、そのようなスタンスの方が楽しいですよね、自分も。

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