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物語のタネ その六 『BEST天国 #34』

様々な地獄があるように、実は天国にも様々な種類がある。
現世での行いや悪行により問答無用に地獄行きかが決められてしまうのに対して、天国は自分で選べるのだ。
ここにまた、ある1人の男が死んでやって来た。
名前は、宅見卓朗。享年37歳。
前回は「わくわく連絡天国」を訪れた宅見氏。
さて、今回はどんな天国に?

あらすじ

天国コンシェルジュのミヒャエルのオフィス―――

いつものように宅見氏がミヒャエルの淹れたコーヒーを飲んでいる。
ふと見ると、ミヒャエルが何やら熱心に雑誌らしきものを読んでいる・・・。

「ミヒャエルさん、何をそんなに熱心に読んでいるんですか?」
「え、あ、これ、ムーの最新号です」
「ムーってあの超常現象とか紹介している。ミヒャエルさん、そんなの読むんですか?」
「ええ、私、好きなんですよ」
「奇遇ですね!実は私も」
「宅見さんも⁈これは嬉しいです!ちなみに、宅見さんがお好きなのは未確認生物系?それとも陰謀系?」
「私は、どちらかというと陰謀系、で」
「フリーメイソンですね」
「ええ。ミヒャエルさんは?」
「私は、未確認生物系です。告白しちゃうと、未確認生物系のフィギュア集めてます」
「気持ち分かります。でも、ここは天国ですから、ムーに書いてあるような謎やその真相は全部分かっているんじゃないんですか?」
「・・・分かりたいと思えば」
「やっぱり」
「・・・宅見さんも知りたいですか?」
「え、知ることが出来るんですか?」
「はい。そういう天国はあります。行ってみますか?」
「はい、是非!」

いつものような白い空間―――
ただ、いつもと違うのは恐ろしく強い風と雨が降っている。

「ミ、ミヒャエルさん、て、天国でもこんな台風みたいなことあるんですね!」
「こ、ここは特別です!ただ、もうすぐおさまりますから!」

ミヒャエルの言葉通り、しばらくするとフッと雨風が止んで穏やかになった。

「いやー、ミヒャエルさん、お待たせしちゃってすみません」

これまた穏やかな声が。
見ると1人の男が立っている。

「ご無沙汰しております、ストーミーさん。突然すみません」
「いえいえ。今日は内覧でしょ?」
「そうです。こちら、今担当させて頂いております、宅見さんです」
「宅見です。初めまして。あの、ストーミーさん、こちらはどんな天国なんですか?」
「ミヒャエルさんから、なんて聞いてます?」
「ムーの世界が全部分かっちゃうところだって聞いているんですけど・・・」
「その通りです。全部分かっちゃいます」
「そうですか!ドキドキします。で、何天国なんですか?ムー天国?」
「いや、“宇宙の目“天国です」
「宇宙の目?あ、全てお見通しってことですか?」
「それもありますが、森羅万丈宇宙の世界。その中心ということです」
「中心!ということは、疑問や謎の真相が全て分かるんですね」
「分かります」
「すごい!大興奮の天国ですね」
「いや」
「いや?」
「逆です」
「逆?」
「宅見さん、ムーを読んでいる時、何が一番楽しいですか?」
「えーっと、そうですね。やっぱり、これは本当なのか⁈とあれこれ想像することかな。発見と推理を組み合わせて、もしかしてって考えるのが一番の醍醐味ですね!」
「そうですよね、想像、これが興奮しますよね」
「ええ、もう想像というか妄想というか。脳内を駆け巡る感じです!」
「でも、全ての謎の真相が分かったら」
「・・・あ」
「そうです、想像が無くなります」
「・・・・」
「“宇宙の目“天国は、とても静かで穏やかな、そして、ある意味とてもつらい天国なんです」
「・・・そうなんですね」
「わからないことがあるって素晴らしいことなんですよ。私が言うのもなんですが」
「・・・確かに」
「なんか水を差すような感じになりまして申し訳ありません」
「いや、とても大切な話を聞けた気がします」
「そう言って頂けると嬉しいです」

ストーミー氏に頭を下げる宅見氏。
ふと、思い付いたように、
「ちなみに、そんなつらい天国にはどんな方がいらっしゃるんですか?」「神様です」

さて、次はどんな天国に?





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