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メルカリを卒業します|約5年で学んだ9つのこと

こんにちは。メルカリのsaimaruです。タイトルの通り、5月末をもってメルカリを卒業することを決めました。2018年7月(忘れもしないIPOの翌月)に入社したので、過ごした期間は約4年11ヶ月。沢山の方にお世話になりました。本当にありがとうございました。

メルカリでは主に人や組織、採用にまつわるPR/ブランディングを担当し、直近の約1年間はEmployer Branding Teamのマネージャーとしてチームづくりをしてきました。

今回のnoteではこの約5年間でメルカリから得た学びや経験を感謝の気持ちを込めながら、自分なりに整理してみたいと思います。結果的に8,000字の長編になってしまったので、目次を見つつ摘み読みしていただけると嬉しいです。

なぜ、メルカリに入社したのか

そもそもなぜメルカリに入社したのか、その背景について簡単に触れたいと思います。

メルカリに入社した理由は「編集を通じて、人の意思決定により深く関わる仕事がしたい」とう想いからでした。きっかけは、メルカリのオウンドメディア「メルカン」に掲載されていた、『メルカリ アッテ』サービス終了の記事。

外からすると一見ネガティブにも捉えられる「サービス終了」という事実を前向きなアクションとして捉え直しているのがとても印象的で、この記事をきっかけにメルカリグループについて興味を持ちはじめました。後日、メルカリのバリューに掲げられている「Go Bold(大胆にやろう)」の意味を知ると、「失敗を臆さない」理由が理解できました。チャレンジャーでありながらも誠実な姿勢にとても共感したことを、鮮明に覚えています。

Go Bold 大胆にやろう

世の中に大きなインパクトを与えるイノベーションを生み出すためには、メンバー全員が前例にとらわれず、大胆にチャレンジすることが大切です。そのためには挑戦を続け、数多くのトライアル・アンド・エラーを繰り返し、失敗から学びを得ることが重要です。常に会社や自身のビジョン、あるべき姿を見失わず、周囲をリードしながら、ミッションの達成を目指します。

メルカリを代表するバリュー「Go Bold(大胆にやろう)」を体現することは至難の業だった

当時のメルカリは、既に「採用に強い企業」として認知されていましたが、その実力の根底には「Go Bold」をはじめとしたバリューやカルチャーの力があるのかもしれない。そんな組織を自らも体感しながら、人の意思決定に関われる仕事ができたら、最高ではないか。そんなことを感じ、メルカリの門を叩きました(入社後は、いきなりコーポレート合宿に参加し、洗礼を浴びました)。

チームメンバーの誕生日を全力でお祝いするカルチャーも好きだったな。なお、私は毎度ファインダー越しに笑顔を眺めていました(笑)

メルカリで何をしてきたのか

この約5年間は、一貫して採用広報/ブランディングを担当させていただきましたが、途中の約2年間はBrand Management Teamの立ち上げに携わらせていただきました。当時の上長である(Tabaranこと)田原さんのもと、時にぶつかり合いながら鍛えてもらったおかげで、ようやく二足歩行ができるようになったと思います。2019年から2020年くらいはあまり記憶がないです(笑)、そのくらいがむしゃらだったのかもしれません。2021年にHR(People & Culture)に戻り、2022年にはEmployer branding Teamを立ち上げ、マネジメントに従事してきました。

携わらせてもらったプロジェクトはどれも面白いものばかりでした。

オウンドメディア「メルカン」採用サイトの企画・運用・リニューアル、ATSの変更、瞬間風速300ポジションの採用広報(ヤヴァイ)、鹿島アントラーズのサポート、グループ横断のデザイナー・エンジニア採用、Diversity & InclusionMercari India、大型広告出稿、souzohの怒涛採用(青春だった)、souzoh FM爆誕、ブランドガイドラインの策定、カケルメルカリ、PRチームの採用広報(イベントラッシュ)、merlogi爆誕・採用ニューノーマル・ワークスタイル「YOURCOICE」メルカリ×エンジニアtypeとのテックカンファレンス、自チームの採用・立ち上げ、鬼のセキュリティ採用、創業10周年企画などなど。

もう上げ出したらキリがないくらい自由にやらせていただきました。

メルカリ創業10周年の社内イベントにて。最高な仲間たちだった

なかでも、一番のハイライトは「メルカリ(会社)とメンバー(社員)が大事にする、共通の価値観」をまとめたCulture Docのプロジェクトだったと思います。約1年半に渡り、全社的に議論し、途中挫けそうにはなりながらも、なんとか形にすることができ、個人的にも感慨深かったプロジェクトです。

なにより、メルカリのメンバーにも改めてカルチャーの重要性を理解してもらえたことが嬉しかったです。Culture Docは後日社外へ公開しましたが、SNS等でメンバーそれぞれの視点でカルチャーを言語化していて、メルカリの組織の強さを改めて体感しました。現在はさらにブラッシュアップを進めている最中なので、今後どのようにカルチャーが変化し、育まれるのか。とても楽しみです。

Netflixさんを招き、社内勉強会も開催。BusinessとCultureの関係性を、Body & Soulと表現してたのが、印象的でした。本当にありがとうございます
Netflix創業者であるリード・ヘイスティングスのこの言葉は何度も何度も読み直した

その他、過去の仕事に関する詳細については以下のnoteにしたためました。ぜひご覧いただけたら嬉しいです。

📍メルカリで“インハウスエディター”を1年3ヶ月経験して気づいたことを伝えたいだとか

📍メルカリで“インハウスエディター”を3年半経験して気づいたことを伝えたいだとか

この5年で、メルカリから何を学んだのか

前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。この5年間で私がメルカリから学んだことを複数のトピックにわけ紹介したいと思います。当然ですが人によって見解が異なる面もあるため、あくまで個人的見解としてお受け止めください。

(1)全てはミッションありき、コトに向かう

メルカリに入社して驚いたことは数多くありますが、一番はやはりミッションを本気で信じている人が多いということです。全社定例に用いるスライドやドキュメントの冒頭には、必ずミッションが書かれています。常に、自分たちは何を果たしたいのか、日々の業務を通じて何を証明したいのかを意識している。OKRもミッションからブレイクダウンした目標を必ず掲げますし、四半期ごとに内容を大胆に変えたり、ときには柔軟にチューニングしていることにも驚きました。そのくらいミッションと現時点の紐付けが徹底されているし、だからこそ成しえる組織力なんだと実感しました。

(2)バカにルールを合わせない、性善説な組織カルチャー

続いて、メルカリに入社して一番のカルチャーショックは「性善説でルールをつくる」という考え方でした。会長の小泉さんは全社定例などで、よく「メルカリはプロの組織だから、バカに合わせてルールをつくらない」と話していました。会社もメンバーを信じ、メンバーも会社を信じる。どれだけ組織が大きくなっても性善説が根底にある組織を目指していました。それはお客さま同士の信頼を軸としたC2Cマーケットプレイスを提供している我々だからこそ、より重要なんだとも感じ、スッと腹落ちしたことを覚えています。

組織には、さまざまな問題・課題があるけど、カルチャーさえしっかり理解し、浸透していれば解決するかもしれない。それは採用も組織もマネジメントも、事業にも言える気がします。カルチャー浸透は、企業にとって固定資産じゃないかなとも。先ほど触れたCulture Docの制作には1年半もの時間を費やしました。そんなにコミットする企業は他に聞いたことがありません(汗)。カルチャーへの投資は手を抜くものではなく、大胆に投資すべき。その考え方はメルカリで学びました。

ちなみに、私が入社した当時はCulture & Communicationsというチームがあり、メルカリのカルチャーを叩き込んでもらいました。その筆頭にいらっしゃったマチルダさんの記事も貼っておきますね。メルカリらしい素晴らしいチームだったと思います(できれば再度、復活してほしい)。

(3)集中と余白という、仕事のあり方・進め方

メルカリでの仕事のあり方、進め方には特徴があります。例えばメルカリでのミーティングは基本的に30分で終わります。それ以上かかるケースは本当に稀なくらい。しかも驚くことは大体の議題は30分で事足りてしまうということ。事前に資料を作り、周囲が読み込んでさえすれば、完結してしまう。共有資料はスライドで綺麗にまとめるというよりも、ドキュメントで端的にまとめる。そしてその場で全員で書き込み、完成させる。仕事のあり方・進め方のすべてが気づきでした。

一方で、全てのコミュニケーションに効率性を求めているわけではありません。その最たる例が1on1だと思います。しかも、メルカリの特徴は「No Agenda」でも歓迎されるという点。仕事の話は一切せず、ただ時間を共有するために行うのも良し、単に雑談するのも良し。「目的がない1on1なんて無意味」という考え方がなく、あくまで相互理解につながればOKというハードルの低さが魅力的で、だからこそコミュニケーションの障壁がないのだと思います。

MTGでは意思決定することに集中しつつも、1on1は極めて緩い。もちろん真面目な1on1もありますが、その集中と余白の使い分けがとてもうまいなと、アンラーンした出来事でした。

(4)マネージャーは「役割」であり、チームを成功に導くための存在

メルカリに入社後、ある相談を当時のマネージャーに持ちかけたときに言われた言葉が印象に残っています。「基本的に西丸さんを信じてお任せします。私の役割は、できないことをいかにできるようにするか、よりよくするかを考えフィードバックすることだと思っています」。一言一句、そのままではないですが、マネージャーは「できる・できない」を判断する人ではなく、実現するためのフィードバックをする人だと。できないことを説く時間よりも、できるようにするためのフィードバックに時間を費やしたい。そんなマネージャーの考えによるものでした。

それ以降、マネージャーに求める姿勢も変わりましたし、自分がマネージャーになってからも、いかに任せ、よくするかだけを意識するようにしました。社内を俯瞰してみると、そういった思考を持つマネージャーが多くいると思いますし、「役職」ではなく「役割」としてチームに尽力していると感じます。マネージャーとメンバーは主従関係ではなく、あくまで対等であり、役割に差があるだけであるということを学びました。

(5)「フィードバックはギフト」が成り立つ信頼関係

上記でフィードバックについて触れましたが、メルカリではフィードバックを以下のように定義しています。

フィードバックは、本人は気が付きにくい強みや、より活躍するための変化や新たなチャレンジを考えるきっかけとなるGiftです。

単なる指摘や不満じゃない、Giftである認識を相互に持つことが大事であると。加えて、より効果をなすにはフィードバックする人・される人の間に信頼関係を築くことが大事であるということにも気付かされました。当たり前かもしれませんが普段チームで仕事を進めるにあたり、めっちゃくちゃ大事な考え方だなと、改めて学び直したのでした。

(6)採用は全員でやり抜き、発信は止めない

記事の冒頭でも触れましたが、私が入社する2018年当時から「採用に強いメルカリ」という認知は業界内外にまで根付いており、入社前からその源泉には関心がありました。入社後、約5年という月日を経て、仮にその源泉が何かを挙げるとしたら、以下のポイントに絞られるのではないかと思います。

・経営陣が誰よりも採用にフルコミットする
メディア(第三者)に頼りつつも、オウンドでも発信する
メンバーのSNSはフル活用する
人事に関わらず、現場マネージャーも採用目標を持つ
最新のテクノロジーはまず試す
リファラルを維持しつつも、直応募を増やす
自らのサクセッションプランがある
採用抑制でも発信を継続する

要するに「採用は全員でコミットする」、そして「発信を止めない」。この2つに集約されるように思います。

全員採用について思うのは、例えばTwitter1投稿につき2,000 likeつくよりも、メンバー2,000人に1tweetしてもらった方がよほど価値があるということ。メンバーにSNSを強制するのはナンセンスだとは思いますが、広報がうまい企業ほどメンバーの熱狂がSNSにそのまま滲み出でいるケースが多いように思います。

言い方を代えれば「自分のチームメンバーは自分で採用する」くらいの気概を全員が持つことが大切なんだなと痛感しました。採用することは同時に市場を知ることであり、企業の魅力を知る行為であり、課題や今後の展開を顕在化する行為でもある。採用活動自体がチームや個人を棚卸しする行為なんですよね。逆にこれらを常に考えてる人ほど、採用する速度が速い印象を持ちます。もちろん、全員が採用にコミットできるのは、採用の重要性や一人ひとりが参加する意義を理解できてはじめて成せる術だと思うので、上流の「Why:なぜやるか」を、丁寧に説明することがまずは大事なんだと思います。

また、「発信を止めない」という点については、仮に採用抑制されたとしても発信は止めてはいけないという意味を指しています。いつでも、誰もが、採用候補者になりうるポテンシャルを持っています。その一瞬の隙に、その企業が転職先として純粋想起されるかどうかは、何気ない日々の発信にかかっていると考えています。それがカルチャーとして醸成されている企業こそ、真の採用力がある企業だと思います。オウンドメディア「メルカン」は多くのメンバーに支えられながら、止めることなく発信し続けています。

ちなみに、メルカリの元データアナリストチームのヘッドであるhikaruさんは、ハイアリングマネージャーとしてお手本のような方でした。自らも採用へのミッションを持ち、積極的にイベントや記事、個人SNSでも発信していましたし、誰が見ても多くのリソースを割かれていたと記憶しています。こちらのnoteはとても参考になるのでおすすめです。

(7)「採用ブランディング」とは全てを指す(結局のところ)

メルカリで長年採用に関わっていたので、採用に関するトピックをもう一つ加えさせてください。それは「採用ブランディングとは何か」という問いです。いまだに自分のなかで、その言葉が指す意味や定義がしっくりきていないのです。現時点では「組織・人材・人事施策に関わることを通じ、“働きがい&働きやすさ”のある職場であることを伝える行為」と意味付けていますが、またきっとすぐに変わると思います。そこで、いっそのこと「採用(力)」と「ブランド(力)」を分解して考えてみるとなんとなく見えてきたので、シェアしたいと思います。あくまで個人見解です。

📍「採用力(=採用競争力)」の構成要素

・Mission:会社のパーパスやカルチャー
Issue:企業が抱える質の高いイシュー
Environment:尊敬できる同僚、働き方や福利厚生などの職場環境
Compensation:給与や株式報酬など報酬思想

📍「ブランド力」の構成要素

・Service & Activity:サービスや企業活動
People & Behaviour:社員の振る舞い(SNSを含む)
Environment & Space:オフィス・イベントの空間演出
Communication:メディアを通じたコミュニケーション(TVCM/オウンド)

この「採用力」と「ブランド力」の掛け算によって蓄積されるものが、きっと「採用ブランド」であり、それに関する連続的な行為そのものが「採用ブランディング」ではないか?というのが、個人的にメルカリで得た気づきでした。

メルカリの新オフィス「Mercari Base Tokyo」のネーミングも担当させていただきました。このオフィス、最高に快適で居心地良いです

(8)「洗練」よりも「リアル」や「雑味」が勝る採用オウンドメディア

以前、ある方から「採用オウンドメディアの大事なことって?」みたいな問いをいただき、咄嗟に「社内の人間同士だからこそ言える、ありのままの言葉を紡ぎ、伝えること」と答えました。洗練された言葉が並ぶ記事は第三の媒体でも書けてしまう。その企業、その人らしい言葉が雑味も含めて表現できるかがオウンドメディアの醍醐味なのではないかと思います。

また、オウンドメディアの企画や編集について一つ確信してることとしてPV、UUなどの定量、コメントなどの定性の反響、その全てが伸びてる記事の共通点は、社会や業界の役に立つコンテンツであるということ。例え企画の出発が内的であっても、出口は社会を意識する。編集力の見せ所とも言えると思いますが、これがなかなか難しい。なので、インハウスの編集者に求められるスキルは、単に編集できる人、ライティングできる人、分析できる人ではない。それらのスキルはデフォルト設定で、いかに社会と会社が置かれてる状況をメタ認知し、文脈を編み、読者とのコミュニケーションをデザインしていくかだと思います。もうこれに尽きる気がします。これを自社メディアの運営から学べたのも、経験としてとても大きかったです。

いつかメルカンで使ったメルマイク。誰かの手に渡るといいな(笑)

(9)誰かに委ねず、自分で決める覚悟を持つ

人を頼りにすることは良いことだとは思いますが、意思決定を委ねるような仕事をしたら成長できないことを学びました。私が尊敬する同僚が、「日々、意思決定をする気で考えきり、物事を前に進める」という話をしてくれたことがあります。本当にその通りだなと。人に委ねる癖がつくと他責思考に陥り、自らに変化をもたらそうとしなくなる。

私の周囲には彼をはじめ優秀な同僚が多くいましたが、彼らは全員その姿勢を貫いて仕事に取り組んでいたと思います。人の成長は意思決定の数に比例するんだと痛感しました。

「自分で決めて(意思決定する気で考え切って)もってこいよ」って思うことが正直あります。自分に対してもいつも問い続けています。「決める気あんのか?」って。それが一番楽しいってわかってる人は「決めて」くるなと感じます。

一人目人事が話す、ソウゾウがまだまだおもしろく、Move Fastにできる理由

最後に

メルカリでの約5年間で学び得たことは、他の企業でも通用することだとは思っていませんし、企業の数だけカルチャーが存在し正解も変わるものだと思います。ただ一つ言えることは、企業としてて何かを信じて進むことは、そこで働く個人の活力になるということ。これはどの企業にも共通して言える大切なことではないでしょうか。

マーケットプレイスである「メルカリ」という事業は、個人をエンパワメントするエネルギッシュなサービスです。そんなサービスを手がける私たちも相互にエンパワメントし合うような組織であるべきです。「あらゆる価値を循環させ、 あらゆる人の可能性を広げる」というメルカリグループの新たなミッションは、まさにそれを意味していると、個人的に感じています。

サービスと組織を表裏一体と考え、それを体現するメルカリの人・カルチャーが大好きでしたし、その仲間に入れてもらえて最高に幸せでした。

改めて、メルカリメンバーのみなさん(卒業生のみなさんを含む)、メディア・ライター・カメラマンのみなさん、これまで世話になった全ての方へ、心からの感謝をお伝えさせてください。本当にありがとうございました。今後もどうぞよろしくお願いします。Go Bold---!

最高な時間でした、ありがとうございました!


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