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ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#84

佐佐木 政治

おゝ 「地球」と命名した 
この一個の天体のわきには 
死で封印された「月」がある

夜空をまぶす「星」の数ほど 
地球は事件ではなやかであるが
「月」は死んだ美女のように 
すべての言葉を拒絶する

言葉は明滅する夜空の星
消えるために用意された 
どこかの円周の上でまばたく

言葉は世界を覆う おそらくぼくらが消滅したあとも 
言葉は果樹園のように残るだろう 
いろとりどりの実を散りばめた果樹園となって 空に残るだろう
どんな実をもぎ取るかで ぼくらの言葉はついえるのだ


父・佐佐木政治
昭和6年長野県飯田市に生まれる。飯田高松高校卒業後、大学で仏文学を学ぶことを断念、木曽にて印刷業を営む。生涯、詩を詠み、本を作る。亡くなる二年前に脳梗塞で麻痺や認識障害を患うものの、動かない手を駆使して最後の詩集「神へ捧げるソネット」を手作りした。


>>>>>>>いつもフォトギャラリーから素敵な写真を使用させていただいています。感謝してます。ありがとうございます。<<<<<<  


亡父の詩集を改めて本にしてあげたいと思って色々やっています。楽しみながら、でも、私の活動が誰かの役に立つものでありたいと願って日々、奮闘しています。