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漫画の感想

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「世界が余りに強大で不可解すぎて、人間の個体差など無意味」というチートと逆の設定が好き。

「世界が余りに強大で不可解すぎて、人間の個体差など無意味」というチートと逆の設定が好き。

「ケントゥリア」の五話を読んだ。
 これは自分が好きそうな話だな、と期待がふくらんでいる。

「世界の全貌は人には理解できない」
「人は何一つ意味もわからず世界の隅っこで生きているだけ」
「人の個体差(能力差)など、世界から見ればミジンコと蟻程度の差しかない」
という世界観が大好きである。
 ホラーが好きなのは、ホラーというジャンル自体がこういう世界観だからだ(クトゥルフ神話が典型だけど)
 この

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色々引っかかることがあっても、「ケントゥリア」を面白いと思い期待する理由。

色々引っかかることがあっても、「ケントゥリア」を面白いと思い期待する理由。

 第一話の序盤は読んでいて引っかかるポイントが多かった。
「奴隷」は資産なので、労働力にならなそうな老人と二人分の価値がある妊婦が同じ待遇というのはありえないのでは、と気になった。
「買い手がつかない」というが、これも何故かわからない。ミラなんて絶対高値だろう。
 その他にも、船長の「何も成せない無価値な奴らだ」と言う台詞も引っかかった。
 これは明らかに奴隷を「商品」ではなく対等の人間として人生

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【ENNEAD(エネアド)感想】 S2第60話まで。ホルスのアヌビスの嫌いかたが好きである。

【ENNEAD(エネアド)感想】 S2第60話まで。ホルスのアヌビスの嫌いかたが好きである。

 続きが溜まったので読みに行ったら、「エネアド」が超絶面白いことになっていた。
 ホルスがイシスの神殿にかくまったセトを、オシリスによって呪いの力を与えられたアヌビスが連れさらいに来る。
 状況としてはこうなのだが、アヌビスは自我がない、セトはひたすらアヌビスを気遣う、ホルスはひたらすらセトのことしか考えていない。
 誰一人誰とも意思の疎通が出来ない(しようとしない)

 シーズン2に入ってからの

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【「進撃の巨人」キャラ語り】「友達とは何か?」を描いた「進撃の巨人」第69話「友人」が好きすぎる。

【「進撃の巨人」キャラ語り】「友達とは何か?」を描いた「進撃の巨人」第69話「友人」が好きすぎる。

「創作はすべて作者の願望」の亜流みたいな雑な話だし、例えもズレている(サウザーは愛情の喪失に傷ついたのであって友情ではない……台詞もそうなっているし)
 ジャンルの特徴について話したい、ということはわからないでもないが、それを踏まえても持論のために触れるものすべてを雑に扱いすぎだと思う。「その論が正しいかどうか」以前の問題だ。

 友達は

二人が「相手は友達」と思っていることだけが、成り立つ要件

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ひぐちアサ「ヤサシイワタシ」の二種類の読み方。

ひぐちアサ「ヤサシイワタシ」の二種類の読み方。

 *ネタバレ感想です。未読のかたはご注意ください。

 ひぐちアサ「ヤサシイワタシ」全二巻を読んだ。
 この話は二種類の読み方が出来る。
 二種類の読み方とはどういうものかと、それぞれの感想を語りたい。

◆ストーリーの肝になるのは「弥恵はなぜ死ななければならなかったのか」という疑問

「ヤサシイワタシ」がどういう話かは、前半のヒロインである弥恵が死んだ理由に集約されている。
 大事なのは「弥恵は

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「八月の光」×「ビラヴド」×伊黒小芭内で社会構造と個人の関係について考える。

「八月の光」×「ビラヴド」×伊黒小芭内で社会構造と個人の関係について考える。

「奴隷制度が人の心にもたらすもの」について描いた、トニ・モリスンの「ビラヴド」が面白かった。

「奴隷制度について描いている」と書くとついそちらに意識がフォーカスされるが(そしてもちろんとても重要な問題だけれど)、自分がこの話で一番興味を惹かれたのは物語の語りの手法だ。

「八月の光」の解説の中で、フォークナーが活躍した時代はちょうどヨーロッパでモダニズム文学が流行していた、と書かれている。
 ア

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「進撃の巨人」のアニメオリジナルエピソードに納得がいかず、見続けようか悩んでいる。

「進撃の巨人」のアニメオリジナルエピソードに納得がいかず、見続けようか悩んでいる。

 話題にする時期として微妙だし余り不満を言うのもなと思ったが、どうしても気になったオリジナル箇所があるのでそのことについて書きたい。

◆なぜ入れたかがわからない。

 アニメは原作とラストが違うと聞いて見始めたが、シーズン1の後半で気になる改変が二ヶ所あったのでこの先見ようか迷っている。

 一か所めは地下道の前でアニがアルミンに問い詰められたシーン。
 アニメではアニが唐突に笑い始めたけれど、

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「性格が悪いと思うキャラは?」という質問の答えには、その人の世界観、人生観が表れる。

◆「性格が悪い」とはどういうことなのか。

「このキャラは嫌い、自分にとって不愉快だ」と思うキャラはいても、そのキャラが「性格が悪いのかどうか」はよくわからないことが多い。
 自分にとっては不愉快だが、他の人にとってはそうでもない、むしろ好ましい(逆も然り)こともある。

「どのキャラが性格が悪いと思うか?」という質問の答えは、「どのキャラが好きか/嫌いか」という質問以上に、答える人の人生観や世界

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創作は創作として読むのが筋だと思うので。

 自分は上記の増田とは逆で、「エルフ夫とドワーフ嫁」は合わないと思う部分が多く序盤で読まなくなった。

 話題に上がったことをきっかけに、婚活のエッセイを読んだ。
 作者は、男に対してかなり警戒心を持っていると感じた。自分の感覚で言うと一般的な範囲の警戒ではなく、忌避感に近い。
「『エルフ夫とドワーフ嫁』の根底には、男性に対する拭いがたい怖さや不信があった」と感じたため、エッセイを読むことでエルド

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「人に無能力のレッテルを貼ることで、自分の万能感を相対的に上げる」→「価値の搾取」を描いた「夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない」を読んで欲しい。

「人に無能力のレッテルを貼ることで、自分の万能感を相対的に上げる」→「価値の搾取」を描いた「夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない」を読んで欲しい。

 久しぶりに宮崎夏次系の「夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない」を思い出して読んだ。

「相手に何もやらせず、無力感を与える」
「無能であるとレッテルを貼る」
「主体性を乗っ取る」
 そうすることで「無能な相手を助けること、代わりに色々やってあげること」を自らの居場所にしたり、相対的に自らの有能感を上げる手法を「価値の搾取」と呼んでいる。

 大多数の親はどのタイミングでどの程度子供に干渉す

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「進撃の巨人」全34巻を一気読み(再読)した感想を箇条書き。

「進撃の巨人」全34巻を一気読み(再読)した感想を箇条書き。


◆あまりに面白くて「なぜこんなに面白いのか」真剣に考えてしまう。

 アニメは原作とラストが違うという噂を聞きつけて、アニメを見始めた。
「滅茶苦茶おもしれえええ。続きどうなるんだ(知っている)」→ちょっとだけ原作で予習しておくか→「超おもしれええええ(人生二十回目くらいの叫び)」→結局全34巻一気読み。
 読んでいる途中、余りに面白くて「なぜこんなに面白いのだろう」と真剣に考えた。

◆半生記

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「セクシー田中さん」は、「大切にされる」とはどういうことかが伝わってくる作品だった。

 もう少し落ち着いてからにしようかなとも思ったが、これだけは書いておきたいので書くことにした。

 ↑の記事で書いたが「セクシー田中さん」を読んで「この漫画のキャラたちはとても大切にされている」と感じた。
 作者がキャラを気に入っていないと言ったり、「展開につまったから即席のヒロインを出してみた」という作品でも面白い作品はたくさんある。
 ただ作品の評価以前に「セクシー田中さん」のキャラたちを見て

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「セクシー田中さん」既刊7巻までの感想&改変が難しいと感じた理由。

「セクシー田中さん」既刊7巻までの感想&改変が難しいと感じた理由。

◆原作既刊7巻まで読んだ。

 ドラマ制作者と原作者の間で行き違いがあった、という話題から興味を持ち、「セクシー田中さん」既刊7巻までを購入して読んだ。
 ドラマの制作の特徴や事情以前に、原作を読むとこの話は改変がかなり難しいのではと感じた。

※以下はネタバレ感想及び純粋になぜ「セクシー田中さん」が改変しにくいのかをドラマ制作の事情は関係なく原作の特徴のみから考えたもの。ドラマは未視聴。

◆「

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強さに自信がある女性は、自分の肉体の魅力を誇示しても他人の好奇の眼差しを無視できる。他人はそこに注目する余裕がない。

強さに自信がある女性は、自分の肉体の魅力を誇示しても他人の好奇の眼差しを無視できる。他人はそこに注目する余裕がない。

 無意識にタイムトラベルをしているんだろうか。
 そう心配になるくらい既視感がある。

 発端のポストについては「女性キャラの恰好や体型に対して男(夫)が一方的に批評するのを聞いて、『この人の感覚はマトモだ』という感想が出てくるなんて、随分家父長主義的な人なんだな」という感想だ。
 漫画の話なのでいいけれど。(現実の女性に対してなら噴飯ものだが) 

 セレブや俳優のシースルードレスがたびたび話題

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