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OKRよりもMBOよりも大事な、あるいは会社と他人に期待するなという話(前編)

はじめに

人事のお仕事をしていると、この世の中には「人事制度がめちゃめちゃイケている天国のような会社がある」という神話がありそうで、違和感なのと、人事として社員と話していると「目標設定なんて意味ないじゃないか」と言う人が多いなと思ったので書いてみました。ちなみにここで書く内容は決して視座が高いものではなく、どこの会社が良いとか悪いという話ではなく、「その辺にいる経営視点とか持ってない普通の個人が楽しく働くために持っておくと良い観点」です。意識の高い人にはあんまり役に立たないし、「もっと視座上げろよ!」って言われても困るやつです。

1. 人事制度にまつわるイメージと本当のところ

OKRだかMBOとか色々ありますけど、世の中には「こんな画期的なやり方をしている会社がある!」と取材されたり、お手本のようにされている会社があります。確かにそれらの会社は従業員の満足度が高く見えたりします。そして、もっとも隣の芝が青く見える領域でもあります。「うちの会社はク○な制度なのに、○○社みたいな会社で働きたい!」などなど。
残念ながらそんなものは幻想です。理由は大きく2つあります。

①従業員満足度は人事制度によって作られているわけではない
従業員満足度の高さというのは、多くの場合ですが、人事制度によって保証されるものではありません。
前提として、報酬水準が高い、もしくは会社自体が成長している、強烈な宗教色がある。大体こんなところでしょう。(異論は認めます)
そういった環境に、モチベーションの高い優秀な人材が集まる、優秀な人材が優れたカルチャーを作り出す、結果、より居心地の良い環境ができあがっていく。そういうサイクルです。
人事制度はあくまで、↑に書いたような環境の一要素でしかなく、決して魔法のアイテムではありません。

2.人事制度と評価にまつわる都合の悪い話

あくまで個人の考えで、どこの会社の話というわけでは全くないですが、以下2つだと考えています。
①人事制度というものは、会社のために個人を気持ちよく働かせるためのものである。
②評価は政治と印象で決まる。最重要なのは成果とプロセスだけではない。

①と②についてそれぞれ話しましょう。
①について
経営者は別に赤の他人の幸せを願っているわけではありませんが、「私の望んだ世界の実現のために働け!」とか「私の私腹を肥やせ!」と言っても赤の他人は動いてくれません。ではどうするか。高い給与を与えたり、面白い仕事を与えたり、ビジョン(私の望んだ世界)に共感してもらったり、何かしら「その会社での活動と自己実現の接続」を提供することで、気持ちよく働いてもらおうとするのです。人事制度というのはその「その会社での活動と自己実現の接続」の一つでしかありません。ですから、変に期待するのはやめましょう。

②について
残念ながら評価というものには政治と印象がついてまわります。
a.政治について
あなたが会社のえらい人だったとして、どちらを評価しますか?
・今回の評価で昇格しないと辞めることがわかっている社員と、何回か我慢させても辞めなさそうな社員
・長期的には部長まで務めてくれそうな社員と、昇格させたところで2,3年以内に辞めそうな社員
・10年以上頑張ってくれた社員と、2,3年しか働いていない社員
・自分のことをめちゃめちゃ慕ってくれる社員と、正直相性悪いなって思っている社員
・自分がめちゃめちゃ評価しているマネージャーが推薦した社員と、自分が評価していないマネージャーが推薦した社員

なんとなく察しますよね。そうです。「成果出したから昇格だ!」とか期待するのはやめましょう。

b.印象について
あなたが会社のえらい人だったとして、誰を評価しますか?
・ものすごく難しい案件にトライしている(っぽい)社員と、難しい案件ではないが着実に件数をこなした社員
・数年に一度しかないイベントを乗り越えた社員と、定常業務をミスなくこなした社員
・毎日遅くまで残業している社員と、定時で帰っている社員
・自分がよく知っている業務領域で成果をあげた社員と、自分がよくわからない領域で成果をあげた社員
・マネジメントをしている社員と、プレイングで高い成果を上げる社員
・営業で成果をあげた社員と、財務経理で成果をあげた社員。
よくわからないですよね。そうです。これは人によってわかれるんです。アテにならないですね。必要以上に期待するのはやめましょう。

おわりに

なんだかめっちゃ長くなってしまったので、一旦終わりにします。後編では、↑で書いたような残念な世の中で、「視座とか言われても困るわ」というタイプの人たちがどういう心持ちでいると少し気が楽になるか、というお話をします。あらためて言っておきますが、この話は特定の会社が良い悪いとかいう話ではなく、シンプルに「会社とか他人に期待すんなよ」という話です。「従業員を幸せにする!」というのを本気で第一義に考えている経営者の人もいるでしょうし、もしかしたら↑で書いたようなことが一切起きない桃源郷のような会社もあるかもしれないです。でも99.99%の人は、そんなことに期待しない方が多分健康に生きていけます。

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