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#187日目 ダブリンでの2週間

こんにちは。sacaikumiです。
このマガジンでは、はじめての海外移住生活を通して感じたことを記録しています。

ロンドンでの半年間の暮らしを終え、アイルランドの首都ダブリンに移動してあっという間に2週間が経ちました。

海外での暮らしも半年を越えて、ようやく色んな意味で慣れてきたように思います。気持ち的な慣れっていうのがいちばん危険なのかもしれないけど。

アイルランドに来て、はじめはあまりの心細さに1ヶ月で日本に戻ってしまおうかとも考えたのだけど、偶然出会えた同居人達がとても暖かく迎え入れてくれたことで、今の生活にもなじんで来ました。

今では、勇気を出してアイルランドに来てみて良かったと心から思っています。

遡ること2週間前、ダブリン初日は、トラブルと言うほど大したことではないけど、それでもちょっと上手くいかない事がいくつかありました。部屋をダブルブッキングされてしまい直前キャンセルが起きたりとか(それについての彼女の言い訳の仕方は、私の英語力に合わせてと言うオーダーを無視した不親切な対応だった!)、パスポートゲートで自分の現状や収入や滞在理由を事細かに説明する必要があったりとか。どうやら、一度アイルランド連合国に入国した後イギリスに不法滞在しようとする人が居るようです。アイルランド連合国と北アイルランド(つまりイギリス)は地続きになっているから私もそれを疑われたのだと思います。結果、日本に帰るチケットを取得したらメールで情報共有するという条件付きで入国させてもらいました。

ダブリンに着いて、ほんの少しロンドンと似ているけれど確実にロンドンとは違うことが肌で分かる、その感覚が私を落胆させました。オイスターカード色のバスとか、ゲイル語特有のフォントの使い方とか、カトリック教会とか、街の彩りとか。まるで幻想のロンドンにいるみたい…がっくし。

これがただのショートトリップで、翌日には「帰りたくない」って文句言いながら元の家に帰れたら良かったのになと心から思いました。旅は帰る場所があるからこそ旅として楽しめるんだと悟った。

それでも初日は友人(それも既に色んなヨーロッパを渡り歩いてて新しい国への抵抗が全くない)が一緒に過ごしてくれたおかげで、もごもごと弱音を吐きながらもなんだかんだ楽しく過ごせました。弱音を聞いてもらえるって心強い。

友人を見送ったあとの帰りのバスでは久しぶりに人目を気にせず大号泣しました。なんだってこんなところに私は1人でいるんだろう!って後悔しながら、一方で、人生の中で心細さや弱さに触れる経験の貴重さも冷静に感じ取ってもいて。大人になってから新しい環境に飛び込む怖さを経験出来るなんて凄く恵まれた人生なんだろうなと思いながら、異国でたった1人の寂しさに盛大なため息をつきました。自分の内側で矛盾したふたつの意見を戦わせながら背中を丸めて帰宅したこと、この先ずっと忘れないだろうな。

その夜、ドロドロ落胆しながらキッチンへ行くと、小柄なアジア人女性に出くわしました。

「もしかして、貴方が今日来るって聞いてた日本人の女性…?」
「そうだよ、私フリーランスのデザイナーだから家でも仕事できるってわけで昨日ロンドンから移動して来たんだけど…」
「え!!??待って、信じられない。私もフリーランスで、ファッションエディターなの。それに…私、今自分の本を制作しているんだけど、そこに載せる日本のオーセンティックな魅力についてちょうど昨日インスタグラムに投稿したばかりで…嘘みたい。昨日ポストして、今日、日本人のデザイナーに会えるなんて………!」

げっそり落ち込んでいた私の前に、アジア人で、似た業種で、しかもフリーランスの女性が自宅に現れて、私の来訪を大喜びしてくれるなんて。来る前には夢にも思わなかった。

外国に移住する上で、私はくるりの曲みたいに沢山の理由や野望を抱いていたわけだけど、そのひとつが女友達を作ることでした。私は元々同性の友達のほうが圧倒的に多いので(気質かな)、女友達といる方が基本的に安らげる。
でも、異国で暮らすとなったとき、同性の友達を作るのは彼氏を作るより難しいことだろうとなんとなく考えていました。
私の英語力は発展途上だし、人見知りだし、さらにヨーロッパだというのにお酒がほとんど飲めない。この3つの要素は圧倒的に相手に気を遣わせることになるし、私も申し訳なくなって尻込みしてしまう。だから友人作りに絶望的な条件を抱える私にとっては無理難題な目標だと思ってたし、実際ロンドンではそれが叶いませんでした。凄く素敵な日本人のお友達がたくさん出来たからまぁいいかなくらいに思っていました。

でもそれが、ダブリン初日に叶ってしまった。

私が出会った女性、カミルは、簡単に言えばまるで自分だった。変な話だけど、私以上に私だった。今の私に似ていて、かつ、私がここを伸ばしたいと思う自分の特徴を伸ばしきったような人。そんな人に出会ったのは生まれて初めてかもしれません。

それからカミルは、自分の尺度で生きる上での完璧主義者で、インディペンデントな女性だと思う。妥協とか、なんとなく、が嫌い。自分の時間やお金やエネルギーを注ぎたいものに注ぐことに責任を持つことが彼女の幸せなんだということが分かった。ささやかな毎日の会話の節々からそのポリシーが漏れてくるから、話していて楽しい。そして、彼女の話は不思議なくらいちゃんと耳に入ってくる。彼女と話していると、私が使っている言語が英語だということを忘れさせてくれる。言いたいことが内側からどんどん溢れてくるから、もっともっと語彙力が欲しいという渇望も一緒に育ってきた。

この2週間で改めて分かったことは、変化や挑戦によって得られる可能性の大きさでした。

この記事ではカミルのことしか詳しくは書いていないけれど、今住んでいるフラットで、もう2人の女性とも出会いました。そのうち1人は米国最大手企業のひとつでlawerとしてインターンシップをしながら歌手活動もしているマルタ島出身の女性、もう1人は公認会計士をしている北アイルランド出身の女性。皆若くして才能に溢れているので、敬意を持って仲良くしています。

彼女たちが持っている自分自身への絶対的な信頼や、自信の持ち方、スマートさと人間らしさのバランスは、私が手探りでずっと欲しいと思ってきた要素でした。そして、それらはどれも日本で暮らす中でなかなか改善することが出来なかったもの。

だから今彼女たちとダブリンで出会えたのだと思う。

来年もヨーロッパで過ごそうとは思っていたけど、それでも、今回ロンドンから真っ直ぐ帰国しないで良かったな。

無事、健康な状態で滞在2週間を過ごせたので、来週から少しずつ街の美術館を回ろうと思います。今はダブリンを楽しみ倒して帰るぞ!というエネルギーに溢れています。

街の人たちは思いの外皆親切だし(もっと差別されると思ってた)、思っていた以上に多国籍なレストランが充実しているし、こじんまりとしているから移動が楽だし、心構えが変わったことで、街の景色が改めて違って見えてきた。ロンドンにはロンドンの、ダブリンにはダブリンの魅力がある。

これからその魅力を沢山発掘していきます :)

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