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「月はどっちに出ている」

2022年11月某日鑑賞

「月はどっちに出ている」
監督:崔洋一
1993 🇯🇵

"先日観た作品で思い出して“
っていうシリーズ。

先日観た #夜明けまでバス停で に出ていた、
居酒屋の洗い場のおばさん。
が #ルビーモレノ でした!

とは言っても、当時話題だったこの映画、
観そびれたまま、いつか観ようと思ったまま、
30年かっ笑
年月こわ。

ハキハキと、よく通る可愛い声、
スラっとした四肢、ぽってりした唇、
ショートカットが似合ってて今見てもお洒落。
ツンとして甘くない役柄なのがまた魅力的。
男に寄りかからず、
上司(?)にも従わないキャラが余計に惹きつける。

#岸谷五朗 演じる姜(カン)と
後半、ある場面で合言葉の様なものを交わした時の、
その一瞬の表情だけでも、
その年の女優賞を総なめした理由を見る気がします。

そのルビーモレノが、あの声そのままに、
「30年日本に住んでいる」という、「ジャパゆきさん」だった
という設定の「おばさん」になって登場した「夜明けまで…」
に、
彼女は無くてはならない存在だったと振り返って感じます。
彼女に「日本になんて来なければ良かった!」と言わせる。
ゴミ箱をぶちまけさせる。
あの瞬間はびっくりして少し笑っちゃいましたけど、
笑いながら泣いてしまう様なシーンでした。
映画の中の話というよりも、
ルビーモレノに今、日本の路地裏でゴミ箱をぶちまけさせるって事に、
この映画(あっ、すっかり夜明けまで…の感想になってるw)の、
意味を感じました。

彼女達が日本に来た頃、
日本はどんな社会だったのか、
少しは想像できる糸口を持つのが「月はどっちに…」かもしれない。

月はどっちに、の感想に戻ります☺︎

主演のカップルはもちろん、
やっぱり、方向音痴で電話してくる #金田明夫 と、
それに対応する、どこかおばさんみたいな #麿赤兒
…って俳優をあげ始めたらキリのない、
今見ると更に、隅から隅までまぁ凄いキャスティング。

しかし #有薗芳記 演じるホソ
このホソの狂気(?)、良かったなぁ…。
ポケット瓶で酒飲みながらケタケタ笑って運転するホソ、
うわぁ昭和は飲酒運転しても大丈夫だったって聞くけど、
本当だったんだぁ(ってそんなバカな🚓)

今じゃフィクションでもNGだろっていう、
でも映画っていいねっていう、
素晴らしいシーンだった。

あと方向音痴のあいつ、
ああいう生真面目なやつがキレた時一番ヤバいとか、
そういう細かいそれぞれのクセつよキャラが沢山いて、
やっぱり邦画って何が味わい深いって、
母語だし、知ってる土地なの、
そりゃ大きい理由だよなぁ。

「おれぁ朝鮮人は嫌いだけど、お前は好きなんだよ」
って何度も言ってくるホソと、
怒りもせずなんとも言えない受け入れ方をする姜、

バカなのかわざとなのか朝鮮人差別や無知無関心を当人にぶつけるサラリーマン( #萩原聖人 )が
「戦後生まれには関係ないし」みたいな事言った時に。
姜が
「私たちは"解放後生まれ“って言うんですけどねえ」
と嫌味を言ったのだけど、完全スルーした、

あの完全スルーが、当時の日本であり、当時の私でもあった。
今も、差別もヘイトスピーチも無くなっていないけど、
当時の浮かれた日本の、
今より更なる無関心&無神経な雰囲気が、
自分もそうだったので、、震える。

東アジアと東南アジアは違うんだよバカ!
と韓国人とフィリピン人が言い合う場面とか、
#崔洋一 と #鄭義信 という脚本じゃなきゃ到底出来ない。
当事者達がみたらクスッと出来そうな些細な会話の場面だけど、
あの状況を作ってる日本人の私は絶対笑えないって思った。
でも劇場では笑いは起きたかな?
監督のメタ視点な…

細かいところ、
披露宴のシーンで司会をしていたのが #新宿梁山泊 の #金守珍 だと!?
#金子文子と朴烈 の中で日本人裁判長を演じた方ですね!
動画なのを良い事に見返しちゃいました。
若い!🤭

岸谷吾郎が雰囲気変わらないから麻痺しますけど、
皆さん本当に、特に #國村隼 とか、
めっちゃお若いです🤭

#古尾谷雅人 もいる。渋いです🥲
彼が静かにキレてる顔怖すぎでした。

まぁしかし、
どんなに男達が暴れても騒いでも、
結局ルビーモレノにはじまり、
ルビーモレノで終わる映画だったな。
良い意味で☺︎

浮ついてモラルも何もない日本で、
体当たりで頑張って、
きっと命懸けだっただろうな。
景気がおかしくなり始めても、
まだ夢や希望があるフリをしていた場所で、
その見えにくい影の部分にライトを当ててるような存在だった気がします。

夜明けまでバス停での脚本の #梶原阿貴 さんの
朝日デジタルのインタビューを読みました。
ルビーさんのキャスティングは梶原さんの強い希望だったのだそうです。
「ルビーさんがスクリーンに戻ってくれるのはシネフィルにとって悲願でした」
と書かれていました。

ヘイトを撒き散らす人達を軽蔑しながらも、
自分の差別感情にズキズキと直面させられる
特に、今よりあの頃、
なにも想像力を働かせてないなかった自分を
思い出すのも怖い程。

余談しか書かなかったかもだけど名作でした。

#月はどっちに出ている
#映画記録

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