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Manchester City編:ゲームモデルの作り方「13の行動」(応用編)〜ボール出しへの守備〜Vol.7

前回は、Manchester City編:ゲームモデルの作り方「13の行動」(応用編)〜守備の組織構造〜Vol.6について書いた。

守備の組織構造はマンチェスターシティだけではなく、多くのチームにも適用することができる守備の一般的なプレー原則であることを説明した。

今回は、Manchester City編:ゲームモデルの作り方「13の行動」(応用編)〜ボール出しへの守備〜Vol.7についてである。



ゲームモデルのファクター

ボール出しへの守備のファクターは、守備の組織構造の他に3つある。

「ゾーナル守備組織(帯状のラインを作る)」「組織的守備の集団アクション」そして「プレッシング」である。



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マンチェスターシティの「ボール出しへの守備」の目的は、グアルディオラが目指すフットボールの根幹となる、「ボールをできるだけ早く取り戻す」ことである。

当然、相手チームがゾーン3(マンチェスターシティから見て)で、ボールを保持した場合は、高い位置から激しい「攻撃的プレッシング」を使い、できるだけ早くボールを取り戻す。

「攻撃的プレッシング」を「ゾーナル守備組織」で行う場合もある。

マンチェスターシティのゾーン3高い位置からの「攻撃的プレッシング」は、例えば4−4−2のゾーンディフェンスだったり、多くは4−3−1−2のシステムを使う。4−3−1−2の場合は、ミックスディフェンスとゾーンディフェンスを併用するコンビネーションディフェンスを使うことが多い。

これから、マンチェスターシティの「ボール出しへの守備」を説明するが、彼らは組織的攻撃の時と同じように、組織的守備の場面においても「ポジショナルプレー」を実行していると考える。

相手チームの「ボール出しの配置」によって、「ボール出しへの守備配置」も変わってくる。

「攻撃的プレッシング」を状況によって、プレッシングの配置が異なることで「シチュエーションプレッシング」と呼ぶ人もいる。

次回になるが、ゾーン2おける「前進への守備配置」も「ボール出しへの守備配置」と全く異なる。それはマークのタイプ(ゾーン、ミックス、マンツーマン)についてもそうだ。

その試合における相手チームの配置によって、組織的守備の配置も変わる。もちろん、事前に相手チームを分析した結果に基づくトレーニングをした上である。

もしかすると、試合の状況によっては、トレーニングをしたことのない、「ボール出しへの守備配置」もあり得る。

それでもマンチェスターシティの「ボール出しへの守備」は機能する。なぜなら、それだけ素晴らしい選手が各ポジションに揃っている。また、臨機応変に対応をすることができるのが一流のプロ選手だと思う。



行動7:ボール出しへの守備

マンチェスターシティの「ボール出しへの守備」は大きく2つに分かれる。

1. 相手GKからの「ボール出しへの守備」
2. 相手ゴールキックからの「ボール出しへの守備」

例えば、インプレー中、相手GKがボールを保持している場合は、「高い位置」から、もしくは「3/4の位置」から「攻撃的プレッシング」を開始する。

「3/4の位置」からのプレッシングの効果は、FWライン、MFライン、DFラインのライン間のスペースをコンパクトにできるので、相手チームにディフェンスライン間のスペースを与えない強みがある。

「3/4の位置」からのプレッシングの弱みとは言わないかも知れないが、相手GKからDFライン、特にCBへの最初のパスに対してプレッシャーをかけるのではなく、2つ目のパスから「攻撃的プレッシング」を開始するので、相手のGKはそれほどプレッシャーを感じることなくCBにパスをすることができるだろう。


ここで、もう一度、プレッシングのタイプ、定義を確認する。

プレッシングのタイプ:
攻撃的プレッシング: 相手コート高い位置 対 ポゼッションプレー(ポジショナルプレー含む)
攻撃的プレッシングの定義:
ボールを失い、自チームにとってプレッシャーをかけることができる状況にある時、もしくは守備ブロックが高い位置にある時に相手コートでプレッシャーをかける。このプレッシングのタイプは、非常に良いコーディネーション能力と相当なフィジカルの消耗がある。
いつ攻撃的プレッシングを適用するのか:
・相手コートでボールを失った後。
・相手のゴールキックやGKからのボール出し。
・相手の最初のパスを容認し、プレッシングの動きを開始する。
・どんな最初のパスに対しても。
・相手がミドルゾーン(ゾーン2)でボールを回し、バックパスをした時、守備ブロックは押し上げて高い位置を取り、相手コートでプレッシングを開始する。

上記は全て、マンチェスターシティのゲームモデルの基準/キーファクターであるが、どのチームにも適用することが可能なプレー原則である。

「攻撃的プレッシング」を適用するのは、相手の組織的攻撃に対しての組織的守備としての「攻撃的プレッシング」と、ボールを失った後の「攻撃から守備への切り換え」時に起こる「カウンタープレッシング」の2つがある。

この章は、組織的守備における「ボール出しへの守備」なので、「カウンタープレッシング」は含まない。

マンチェスターシティやその他多くのチームは、通常「攻撃的プレッシング」に参加する人数は6人である。相手チームの「ボール出し」に参加する人数は、GKを含めて8人(基本的にFWラインの選手は、ボール出しに参加しない)である。

「攻撃的プレッシング」は6対8の数的不利な状況で行っているのだ。7人目が「攻撃的プレッシング」に参加しても良いが、DFラインに残る人数と相手に与えるDFラインの背後のスペースを考えると、非常にリスクが高くなることだろう。

攻撃的プレッシングをする時に必要なこと:
1. より多くの攻撃ラインの選手を守備の配置に使う。
2. 集団ゾーンマーキングの必要性。        

マンチェスターシティは、明確なマンツーマンディフェンスは使わない。ミックスディフェンスとゾーンディフェンスの併用であるコンビネーションディフェンスを使うことが多い。もちろん状況によっては純粋なゾーンディフェンスも使う。


3つのプレッシングのアイディア:

1. SacchiとZehourinniの構造化のアイディア
基本的なアイディアは、ボール保持者の周りに円形の構造を組織する。前進する経路を閉じて、ボールを失うことを強いる、もしくは間違わせる。

2. Rinus Michelsの配置のアイディア
ボールを失ったチームはすぐに後退しないで、激しいプレッシングをボールを失った場所から開始する(カウンタープレッシング)。ボールを失った場所から、ボールを回復を試みるために、ブロック全体が高い位置を取る。

3. López Ramosのマンツーマンのアイディア
集団組織のマーキングの基礎であるマンツーマンディフェンスが、プレッシングのアイディアのベースである。

2. Rinus Michelsの配置のアイディアは、「カウンタープレッシング」に言及したものなので、この章では、扱わない。

グアルディオラが採用する「攻撃的プレッシング」は、1. SacchiとZehourinniの構造化のアイディアと、3. López Ramosのマンツーマンのアイディアが進化したと思われるミックスディフェンスをゾーンディフェンスと併用したコンビネーションディフェンスだ。

ミックスディフェンスの強みは、選手が担当するゾーン内で、マンツーマンディフェンスを実行するので、相手チームは、フリーな選手を見つけるのに苦労することだろう。

弱みは、相手にスペースを与えてしまうところだが、ゾーンディフェンスと併用すると、「ボール出しへの守備」の場合など、ある特定の状況においては非常によく機能するのではないだろうか。

ただ、ミックスディフェンスは、最終的にゾーンディフェンスになる。例えば、MFラインがミックスディフェンスだとして、1人のMFラインの選手が相手にドリブルで突破される危険があったり、突破された場合は、他のMFラインの選手はカバーリングポジションに入らなければならない。これはマンツーマンディフェンスも同様である。


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