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Manchester City編:ゲームモデルの作り方「13の行動」(応用編)〜守備の組織構造〜Vol.6

今回から、マンチェスターシティのゲームモデルの組織的守備「13の行動」の「ボール出しへの守備」について説明していこうと思うが、この章は非常に長い。

よって、最初に、組織的守備のファクターの1つである「守備の組織構造」を先に書いて、次回、マンチェスターシティの「ボール出しへの守備」を書こうと思う。

組織的守備のファクターの1つである「守備の組織構造」は、「ボール出しへの守備」「前進への守備」「ダイレクトプレーへの守備」「セットオフェンスへの守備」を含む。

今回は組織的守備のファクターである、「守備の組織構造」「ゾーナル守備組織」「プレッシング」の各ラインのカバーリングについての原則を紹介する。これらの組織的守備の基準/キーファクターは、どのチームにも当てはまるプレー原則である。マンチェスターシティ特有のゲームモデルという訳ではない。

ただ、多かれ少なかれ、マンチェスターシティや、その他多くのチームの「守備の組織構造」の基本的なプレー原則は同じであると考える。

マンチェスターシティやその他多くのチームの違いは、組織的守備の、「ゾーナル守備組織」「組織的守備の集団アクション」「プレッシング」の方法論や選手間、選手(個人)のタスクに違いが現れると考える。


ゲームモデルのファクター

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組織的守備のファクター

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組織的守備:守備の組織構造

ファクター:守備を組織する時に取り組むべき要因
定義:ボールポゼッションの回復を容易にする、ライン間バランスを維持することを目的として、チームが採用する集団のポジショニングである。
守備の組織構造: 基準/キーファクター
チームはボール、チームメート、相手、プレースペースとゴールに応じて動く。

 守備ブロックの選手の配置は、短い距離(短く、狭く)。選手間の距離を自ゴールに近づくにつれて短くする。

 ラインは他のラインに従って移動し、逆も同様である。

 守備プロセスは、グラウンドの特定のゾーンから始まる。

 可変性:守備の組織構造は、選手の特徴と相手チームの攻撃構造、同時にプレースタイルによって決定される。

上記の「守備の組織構造」の基準/キーファクターは、おおむね、どのチームにも当てはまることだろう。

例えば、サッリ監督のトータルゾーンと呼ばれる守備の組織構造には一部当てはまらないところはあるかも知れないが。



次は、ゾーナル守備組織について説明する。

ゾーナル守備

ゾーナル守備組織:
定義:ゾーナル守備とは、監督やコーチによって決定され、一続きの関係となって動く。守備の組織構造を維持しながら、選手は自分が位置したポジションにおいて集団でマークをする。
ゾーナル守備組織:基準/キーファクター
主にセンターのゾーン(センターレーン、ハーフスペース含む)で相手に抜かれないように努める。(相手をどこへ誘導するか)

 ボールの回復を容易にするために数的優位を作る。

 ボール保持者にプレッシャーをかける。

 選手が上下左右にスライドして、グラウンド内側へのパスコースを閉じることで、アクティブ側(ボールに近い)とパッシブ側(ボールから遠い)のコンセプトをマスターする。

 集団プレーに関連した守備の個人原則を実行する。(マーク、カバーリング、ペルムタ)
※ペルムタ:カバーリングのカバーリング。例:右WGの選手が右SBの後ろのスペースへカバーリングに入る。

 相手チームの攻撃を自チームが行かせたい場所へ方向づける。

 オフェンシブ・ポジションに、どの選手(何人)を残すか、また、その位置とアクションを決める。
純粋なゾーナルとは ゾーナル守備は、各選手が1つのゾーンに入り、そのゾーンを守る責任がある。純粋なゾーナル守備は、スペースを守ることを主要なミッションとして、チームが一続きの関係となって動く。
一続きの関係:
チームは次の要因によって動く:
1. ボール 2. チームメート 3.相手 4. プレースペース 5. ゴールを守る

守備ブロックは、全てのモーメントにおいて、チームメートとの間とライン間の距離関係を維持する(永続的な守備ブロック意識)。目的は相手チームの前進を阻止するためにプレースペースを縮小する。

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例:ゾーナル守備組織:4−4−2(ファイナルゾーンの守備)



プレッシングは組織的守備においての「プレッシング」と「攻撃から守備への切り換え」時に実行する「カウンタープレッシング」の2つがある。ここでは組織的守備においての「プレッシング」について説明する。

プレッシング

プレッシング:
定義:集団戦術の原則の実行は、ボール保持者を中心としたマークの基本的なアクション(戦術の習得)、選択されたポジショニング(守備の組織構造)と、集団的ゾーナルマークから始まる。
プレッシング:基準/キーファクター
選手が上下左右にスライドして、グラウンド内側へのパスコースを閉じることで、アクティブ側(ボールに近い)とパッシブ側(ボールから遠い)のコンセプトをマスターする。

特徴:
- 守備ブロックは、入念にデザインされた様々な一続きの守備(DFライン、MFライン、FWライン)に応じて、上下左右に移動する。第一の原則は、ボールの位置によっての移動である。センターゾーンで相手がボールを循環させる場合、守備ブロックは、内側のゾーンを閉じて、外側へ相手を追い込む。

- ボールから最も遠くにいる選手は、相手がサイドチェンジをする前に、スペースを閉じる責任がある。

- ボールがある場所に最も近い選手は、サポートを望むボール保持者を囲み数的優位を確保しなければならない。

- 自チームのライン間に発生する、ボールを受けようとする相手選手に非常に注意する必要がある。

- ボールから遠いパッシブゾーンと呼ばれる場所へのロングパスには非常に注意しなければならない。

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プレッシング:上下左右にスライド


プレッシング:基準/キーファクター
幅と深さのスペースを縮小する。

特徴:
- 目的は守備ブロックを作り、ライン間バランスを取り、カバーリングのレベルを上げ、ボールの周りをサポートして、相手チームのプレースペースを縮小する。

- タッチライン側にプレッシャーをかける:幅を縮小する。タッチライン側は、相手を封鎖するの可能性が最も高い場所である。(マンチェスターシティの「ボール出しへの守備」時の攻撃的プレッシングの場合は、相手を内側へ方向づける)。

- 相手コートでサイドの相手選手からのパスにプレッシャーをかける:チームがまとまり、ボールを受ける可能性がある選手をマークする。

- 深さを縮小し、守備ラインをミドルゾーン(ゾーン2)まで上げる。

- いくつかの状況でオフサイドルールを適用する。

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プレッシング:幅と深さのスペースを縮小する


現代フットボールは、ポジショナルプレーなどの組織的攻撃の進化により、組織的守備の方法も進化している。よりアグレッシブなゾーン3の高い位置や3/4からの「攻撃的プレッシング」を「ボール出しへの守備」時に活用するチームが多い。

ゾーン2へボールを運ばれても、相手に前進させない、ボールを積極的に取り戻すために、「ミドルゾーンプレッシング」を行うチームも増えた。

普通のゾーナル守備では、ポジショナルプレーなどの新しいプレー概念に対応できなくなってきたからだと考える。

フットボールがバスケットボールや、フットサル、ハンドボールなどの他の球技の戦術を研究し、取り入れていることもフットボールの攻撃と守備が日進月歩の勢いで進化をしている原因であろう。

下記は、ZehoruinniやSacchi、Rinus Michels、López Ramosの往年の名監督が考案したとされるプレッシングの3つのアイディアである。

この3つのプレッシングのアイディアが、現代フットボールのプレッシングの進化に大きな影響を与えている。もしかすると現代フットボールのプレッシング方法は、下記3つのプレッシングのアイディアを洗練させたものにすぎないのかも知れない。

イノベーションとはいつも古いものの中にある。

ボールがある場所の周囲に数的、位置的優位を創る。このアクションは、Zehoruinniによって考えられた構造化である。

特徴:
                               
- ボール保持者に対して常に2対1の状況を発生させる。この2対1は異なるラインの選手(WGとSB)もしくは、同じライン(WGとピボーテ)で発生させることができる。

- ボール保持者にプレッシャーをかけるだけではなく、ボールを受ける可能性がある選手にプレッシャーをかける。(可能性を予測する)

- ボールポゼッションが行われている場所で、数的および位置的優位性を作る。

これら全てが、相手チームの攻撃のコントロールを妨げ、プレーリズムの加速を引き起こす。

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プレッシング:異なるラインの選手で2対1を作る


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プレッシング:ボール保持者にプレッシャーをかけるだけではなく、ボールを受ける可能性がある選手にプレッシャーをかける。(可能性を予測する)


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プレッシング:ボールポゼッションが行われている場所で、数的および位置的優位性を作る。


1980年代後半から90年代前半にかけて、イタリアのACミランの監督として革命的なゾーンプレッシングを使い世界制覇をしたArrigo Sacchiは、現在のフットボールの進化についてこのように述べている。

フットボールが大きな進化を遂げた。現在、チームはボールを取り戻すために攻撃し、ボールを保持すると、今度は逆にボールを守らなければならない。



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