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働きがいはどうあるべきか? -壺中人事塾での学びシリーズ-

9月から参加している壺中人事塾での学びシリーズ、週1回記事を書き始めて今回で4回目。

今日のテーマは「働きがい」です。
話を始める前に、「働きがい」とは何なのかを明らかにしておきましょう。塾のテキストである「図解 人材マネジメント」では、「働きがいとは、仕事のやりがいと働きやすさが揃っていること」とあります(働きがいの調査をしていることで有名なGreat Place To Workの調査でもこのように定義されているそうです)。

さらに「仕事のやりがい」と「働きやすさ」についてはこんな説明があります。

仕事のやりがいの「甲斐」とは、ボートを漕ぐ時に手に持つオールのことです。前に進むときに抵抗を感じてこそ、やりがいなのです。(中略)困難に手応えを感じながら前に進むことが「やりがい」なのです。

坪谷邦生「図解 人材マネジメント入門」p90

働きやすさとは、快適に働き続けるための、就労環境や労働条件があることです。働きやすさを向上させるために、労働時間を短くする、有休消化率をあげる、賃金水準を上げる、といった施策が取られます。

同上

これらの「仕事のやりがい」と「働きやすさ」を合わせたものが「働きがい」であるという認知のもとに以下、お話を始めていきたいと思います。

働きがいをめぐる様々な問いと理論

「図解 人材マネジメント入門」の中では、この「働きがい」をめぐる様々な議論が紹介されています。

個人的に興味深かったのは、
働きがいと業績は本当に関係があるのか?
やりがいある仕事のために必要なことは?
仕事にやりがいを持たなければダメなのか?

このあたりの問いです。人事の人なら、というよりも、多くの働き手の人にとっても、一度は疑問に思ったことがある問いかもしれません。

書籍ではこれらに対してそれぞれ様々な調査結果や議論の紹介がされています。が、塾の講義は、これらの書籍で扱われている調査結果等の紹介よりも、「働きがい」をめぐる各自の原体験を振り返ることに重きが置かれていました。

働く喜びをめぐる原体験

「働く喜びは必要だと思いますか?」
これが講義の中で扱われた最初の問いでした。

塾生たちはこの問いにチャットで回答したりそれを口頭補足したりしながら議論を進めていくのですが、
「絶対必要!」
「自分としては必要だけど、みんながみんなそうだとは思わない」
などいろいろな意見が。

ここに関しては、リクルートキャリア社の「働く喜び調査」が引用されていました。そもそも働く喜びを必要としている人は88.2%、一方実際に働く喜びを実感している人は44.5%という結果になっています。

2019年8月 株式会社リクルートキャリア「働く喜び調査報告書」

話がそれますが・・・この調査を行ったリクルートキャリア社は私の古巣ど真ん中で、14年のリクルート人生のうち半分近い7年ほどをここで過ごしました。このリクルートキャリアの働く喜び調査は、リクルートキャリアができた時のビジョンに根差した調査です。
「ひとりでも多くの人たちが《働く喜び》を膨らませ、《働く喜び》の輪が、新たな活力を生み出している社会を創りたい」
これが同社のビジョンで、この調査は、とても身近でとてもとても尊敬している人たちの仕事。これが講義の時に紹介され、ひとり湧きましたw

私自身そういう「働く喜び」なる目に見えないものに最大の価値を置く会社で人事として仕事をしていたわけで、絶賛、働く喜びは必要だと思う派です。

でももっとさかのぼると、私が「働きがい」「働く喜び」は必要だと思う原体験は自分の父や母、祖母の仕事観にあると思います。
少し個人的な話になりますが、私の父は自営業で歯科技工所を経営しています。母は島根でまちづくりをするための法人を立ち上げ経営しています。おばあちゃんは、ずっと専業主婦で家族を支えてくれていましたが、一時だけ、土木工事で県外から働きに来る人たちの宿舎で賄いを作る仕事をしていました。

子どもの頃から、仕事って楽しいの?と聞くと、みんな、楽しいよと言って、何が楽しいのかをたくさん話して聞かせてくれました。高卒で自動車整備士として働いた後、専門学校に通い直して学び歯科技工士の仕事を始めた父は、患者さんにぴったりの入れ歯を作ってあげられた時、患者さんの生活が豊かに楽しくなることの実感があると言います。母は今はまちづくりの活動をしているけど、ビーズアクセサリーショップの経営、医療事務の会社での実務やマネジメントなどなど、その時々のやりたいことや好きなこと、お役に立てることを大事に自分のキャリアを切り拓いてきた人です。おばあちゃんは、まかないの仕事で、宿舎に住む人たちを我が子と同じに想い、ご飯を作ってあげるだけでなく誕生日にちょっとしたプレゼントをしてあげたりしてみんなにお母さんと慕われていたことをとても生き生きと、本当に生き生きと話していました。いまは亡くなった祖母の、大好きな昔話のひとつです。

いま父は65歳、母は60歳ですが、朝から晩まで本当にガッツリ仕事をしています。父などはいまだに夜が明けるまで働くことがあるくらいで、体が心配なほどです(実家に帰ると特に、朝起きてお父さんが仕事場で倒れていたらどうしようと本気で心配になってしまう)。でもいくつになってもこんなに元気に楽しそうに働く二人を支えるのは、雇用条件など外的報酬としての「働きやすさ」では決してなく、内的報酬としての「働く喜び」「仕事のやりがい」であることは間違いないのです。

そんな私が人事になって

こういう大人たちをそばに見て育った私が、働きがいは生きがいであるという価値観を持つことはとても自然なことです。自分自身だけでなく、広くあまねく世の中のたくさんの人に対しても、働く喜びをめいっぱい味わって、心の底から元気な毎日を過ごしてほしいという願いがあることも。そんな私だからこそ人事としてもやはり、人々の働きがいを高める施策には熱が入ります。

冒頭書いたように、今回の塾の講義では一般的な議論や調査結果の紹介よりも、塾生各自の原体験を振り返る問いを扱うことに力点がありました。自分の仕事観を形成する原体験が、自分が人事として手掛ける施策にも色濃く影響を及ぼすからこそ、人事の人がその原体験を振り返ることに大きな意味がある。それが今回の講義における坪谷さんからのメッセージではなかったかと受け取っています。

とはいえ!働きがいはどうあるべきか?についてどんな議論がされているのか気になる方のために、参考資料をご紹介して今回の結びとします。私も読んでみなくちゃ!

働きがいと業績は関係があるのか?を探究してみたい人へ

やりがいのある仕事のために必要なことは?を探究したい人へ

仕事にやりがいを持たなければダメなのか?を探究したい人へ


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