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身代わり

あの恋を忘れるために好きになった。
ただそれだけ。


ぬちゃぬちゃした音とザラザラした感触が嫌いだ。気持ち悪い。
こっちを見た時のジトりとした瞳に寒気がする。
影ができるほど長いまつ毛に嫉妬した。
頼りなく丸い背中に傷跡をつけた。
『お前は身代わりだぞ』という小さな反抗だった。



それでも、あなたの何もかも失ったままの格好で、永遠について語る様だけが酷く美しかった。
薄い身体に寄り添うと、どうでもよさそうな声で「どうしたの?」と聞いてくる。
ぼんやり光るサイドランプ。
照らされた私の顔は、うまく笑えているだろうか。



「どうもしないよ、眩しいから消して。
眠れないじゃん。」
眠る気なんてなかった。ただ、見られたくなかった。惰性の恋を悟られたくなかった。


「眠る気あるの?俺は無いよ。」
思い出した。あなたはそういう人だった。
やる気のない声で、酷くだるそうな顔つきで、全部見透かしているんだ。



きっとバレている。
私があなたを代わりにしていること。
私の頰に骨張った手を伸ばして呟いた。



「嘘つき。」



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