波
2015年9月のある日、私は波の上にいた。
ワンゲル部の合宿で私たちはツブラ島という無人島に来ていた。生まれも育ちも東京で、コンクリートに囲まれて18年間過ごしてきた私は初めて経験する自然に惹きつけられ、
トイレがなくても
フナムシに脅かされても
街に帰りたいとは思わなかった。
最初の2日間
波は穏やかだった
突然リーダーの無線に連絡が入った。海上タクシーからだった。嫌な予感がした。
「台風が来る」
無人島に使い古したテント3つ…。
私たちは即撤収を決めた。
しばらくして迎えの船が見えた。しかしそれは私たちが待つ海岸から100m沖で止まったまま。
波は少し荒れ始めていた。
「船はこれ以上近付けない」
ツブラ島は砂浜ではなかった
「全員泳いでここまで来い」
泳ぎに自信のなかった私はぎょっとした
『全員20kgの荷物を背負っています、女子もいるので無理です』
船がそこまで来ているのに。帰れると思った期待が泡となって消えていく…
すると、船から何か白いものが海に投げ出された。波にもまれながらこちらに近づいて来るその物体は発泡スチロールをロープで束ねた即席の「筏」だった。
「2人ずつ乗れ、俺が引っ張ってやるから!」
無理とか言っている場合ではない
「実験台」と称して1つ上の先輩と私が第1号として乗り込む。
海に投げ出されないよう、必死で波のリズムに合わせた。
気がつけば
私たちは全員波を越えることができていた。
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