見出し画像

詩#1 ワルツ

酔って言葉を撃ち出すのはやめた 酔って打ち出す言葉はあまりにも虚ろで毎日毎日毎日毎日
その戦場を大斧で叩き砕く朝が朝が朝が 来る俺は
こんなこと書いちゃいない
てか俺ははこんなこと思っちゃいない
思っちゃいないことを叩くのは
酔ってる俺を虚飾が支配して欲にまみれたその弾丸で自分自身を
撃ち殺そうとしてるからだ

だからやめたんだ

やめたんだがしかしそれは
誰に押しつけられたことでもないし自分で拵えた勝手な掟で守ろうが破ろうが俺を罰する者は無い
ただひたすらに俺が俺を罰するだけだ 柔らかい鞭で 分厚い尻を撫でられたって
勃起こそすれ 反省なんかするわけもなく

いいぞいそもっと打て!もっと打てよ!

俺は喚き散らして酒瓶を壁に投げる
隣人が絶叫しながら壁を蹴って俺の部屋の壁はヒビだらけ
真っ白かったその壁はヤニだらけの上にヒビだらけであと何度かで崩れ落ちるさ
そうしたら大家に言いつけて隣人を叩き出してやるぜ
もちろんその前に砕けた空の酒瓶は破片のひとつも残さずに掃き掃除して窓の外へ

掟がなんだい
なにをお高くとまってんだ

破戒の罰で喰らった柔らかい鞭で勃起
醜いったらありゃしねぇ
捕縛を抜ける
何だ簡単な事だ

大仰なメロディ
壮大な展開
指は縺れることも無く貧民の哀れを流麗に奏でながら決して音階を外すことのないその声で無残なその暮らしを高らかに歌い上げる

どうせならシングルノートでワルツを弾け
音と音を大きく離してまるで 分断  されて い る ように
次の音が鳴る前に突っ伏してしまうように
よろけながらワルツを弾けよ必ず
シングルノートでね

和音は俺の気を狂わせる
酔って打ち出した言葉の数々を翌朝に大斧で叩き砕くのは和音を奏でる不快さに反吐がもう喉にまで競り上がって来てるからだ

高らかに唄うへっぴり腰の音楽家
おまえは喉を大事に労わりながら酒浸りで脳が白化しかけた労務者の暮らしを歌い上げる
そりゃいい
和音は金になるからな
隣人との喧嘩に明け暮れて怒号で潰れた喉をもう一度バーボンで灼いて透明になった脳のまま 
間の延びたシングルノートで語るのはそのまま現実の生活
生きるままにただ鍵盤を叩きシングルノートのワルツに乗せて雰囲気だけで語るのはきっと明日生き延びる言葉

だがそれは和音に乗った途端大斧で打ち砕かれてしまうだろう
だからどこまでもシングルノートのワルツを
大切なことは掟を守る事じゃない
ただシングルノートのワルツを
触れたこともない鍵盤に震える指で触れながら
ただ三拍子で
ワルツを

この記事が参加している募集

ほろ酔い文学

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?