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幸せな人生の終わりって……

おしどり夫妻で知られたジェフさんとお連れ合い。
彼女が余命宣告を受けるような病気だと知ったのは、
たぶん、2年位前。
Zoomに並んで姿を現した時、お連れ合いは、
酸素吸入をしながら、ジェフさんの隣で微笑んでいた。
それから1年ほどして、お連れ合いのお葬式があった。
オンラインでも流すから、妻の旅立ちをみんなで見送ってほしい
という連絡があり、私もオンラインでお葬式に参列した。
ジェフさんの、凜としたお姿が印象的だった。

それから1年。
先日、彼と親しいビルさんとそのお連れ合いとお昼を食べているとき、
ジェフがね、あんまり具合がよくないんだよ、
ビルさんが言い出した。
そうなんですか? ご葬儀の時は、しっかりしていらしたけど。
と答えると、あれからすぐに体調を崩して、今は車椅子なのだという。
一人ぼっちになって、体も思うように動かず、つらそうだよ、
とビルさん。

そのビルさんも、一昨年みんなでご飯を食べたときに比べると、
お連れ合いが弱ってきているのがわかる。
相変わらず快活な彼女は、よく笑い、一緒にいると楽しい人だけれど、
移動がずいぶんゆっくりになり、座っている時間が長くなった。
会話にも、少し入りにくくなってきているような感じもした。
冒険心の強いお連れ合い。彼女なしには、この人生は乗り切れなかったよ、
というビルさん。
だって、ほら、Happy wife, happy lifeっていうからね。
そういってウィンクして笑っていたのは一年くらい前だっただろうか。

ジェフさんも、ビルさんも、妻を愛し、
二人三脚で人生を乗り切ってきたのをよく知っている。
最後にお連れ合いの体調が崩れていくのを見守り、
介護し、場合によっては、相手を見送る。
人生の最後の最後に、一人ぼっちになる。
確率は半々。もし、神さまに、これが君たち夫婦の最後だよ
と近未来を見せられたら、「イヤだ!!!」といいたくなるんじゃないか。
お二人の話を聞きながら、そんなことを考えた。
イヤだ!!! こんな二人の終わり方はイヤだ!

でも……だったら、どんな終わり方だったらいいんだろうか。
妻に看取られて先にいければ、幸せだろうか?
それが、いつでも? どんな形でも?

帰り道、そんなことが頭から離れなかった。
長い人生、短い人生。
病気、事故、自死……。
終わりの形と、幸せな人生は
実は、あんまり関係がないのかもしれない……。
どんな終わりか
どこで最後を
誰と迎えるかより
そこにたどりつくまでの軌跡が
ずっとずっと大事だよね……と改めて思いながら家路につく。



得意技は家事の手抜きと手抜きのためのへりくつ。重曹や酢を使った掃除やエコな生活術のブログやコラムを書いたり、翻訳をしたりの日々です。近刊は長年愛用している椿油の本「椿油のすごい力」(PHP)、「家事のしすぎが日本を滅ぼす」(光文社新書)