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錦秋の特別展 やまと絵 受け継がれる王朝の美(2023)

十月某日。東京国立博物館『特別展 やまと絵 受け継がれる王朝の美(10/11-12/3)』に行ってきた。
朝イチで家を出て十時ぴったりに上野駅に到着! 御門屋で揚げまんじゅうを三種類購入し、いざトーハク!

にぎやかな広場

おそらく休日仕様なのであろう。シンボルツリー・ユリノキを囲むようにキッチンカーが並び、平成館へ向かおうとする私の食欲を刺激する。
牛タン丼、伊勢うどん、クレープ屋エトセトラ……。いかんいかん。今日は知識欲を満たしにきたのだ!
音声ガイド(語り:夏木マリさん)を借り、いざゆかん、やまと絵の世界へ!

来たぜ!

1.狙うは葦手書き!

今回初めて【葦手書き(あしでがき)】を間近で見た。平安時代&王朝ファンタジーが大好物な人は、一度は聞いたことがあるだろう。公達がさらさらと紙に絵を描き、姫君はそこに恋歌が仕込まれることに気づく、アレだ(ドレだ)
簡単に言うと、水辺の光景のなかに、文字を絵画化して散らし書く表現のことである。
この特別展では、夢にまで見た葦手書きが生でたくさん見られる! なんと幸せなことか!
「葦手歌切(伝藤原公任筆・東京国立博物館所蔵)」と「屏風詩歌切(藤原行成筆)」は並び合っており、四納言好きな私はにやにやしてしまった。
すぐそばに「御堂関白記(藤原道長筆)」もあるので、同時代に生きた公達の筆跡を比べて見るというなんとも贅沢なひと時を過ごした。
行成殿はさすがの三蹟の風格で墨の濃淡の迫力が凄まじく、公任殿は三蹟に負けず劣らず三舟の才を光らせていた。意外だったのは道長殿だ。かなり繊細な印象を受けた。色々苦労があったのだな…と千年よりも遠い昔に思いを馳せる。

2.夕霧と柏木の友情を垣間見る

【国宝】源氏物語絵巻〈柏木二〉 (徳川美術館所蔵)

病の床にある柏木と、彼を見舞う夕霧! 本で何度も見た絵を、この目で見れた喜びで泣きそうでした。柏木は見苦しくないように烏帽子をつけていて、夕霧は心配そうに几帳の端を引き上げて身を乗り出している。
二人から右端に視線を移すと、見事な山水屏風が置かれていることに気づく。山水屏風については、特別展の序章で学ぶことができるので、これから行く方はぜひ序章の屏風と、第一章第三節の「柏木二」に描かれた屏風を見比べてみてほしい。

3.坂東生まれの女将軍が育んだ美意識

【国宝】梅蒔絵手箱(静岡・三嶋大社所蔵)

北条政子ゆかりの蒔絵手箱である。「鎌倉殿の13人(2022年放送)」で、私は北条政子(演:小池栄子)が大好きだった。
伊豆の豪族から、源氏の正室へ。鎌倉殿では、政子は「坂東のおなご達の憧れ」として描かれており、それに応えるべく教養を身につけんと努力し、ついには政治の場へと躍り出た彼女のしなやかな強さに、放送が終わった後も勇気づけられてきた。
手箱の蓋には、梅の老木・几帳・雁の群れが描かれ、銀の薄板で「榮・傳・錦・帳・雁・行」という文字が葦手書きで表現されている。
政子ゆかりの蒔絵手箱に隠されているのは、和歌ではなく漢詩の一節だ。

雁は錦帳を伝え、花は萼を連ねたり、
彩は綾袍を動かし、雁は行を趁う、
白居易

三嶋大社HPより

梅の花の華やかな絵と文学的な意匠は、やまと絵展で見てきた作品を思い起こすと、新しさと懐かしさが融合したような印象がある。
この蒔絵手箱は化粧道具を納めるためのものだから、女性にとって一番身近な調度であったことだろう。このことから、政子はただ教養を身につけただけではなく、弛まぬ研鑽を積み、自身のセンスを結実させたのだと感じた。

おまけ:体力が足りない


本日購入したグッズとお菓子
黒田記念館一階・上島珈琲店

特別展を見終わった後、休憩室で揚げまんじゅうを二個食べた。十一時から鑑賞を始めて、全て見終わったのは十四時半だった。
なんとなく予想はしていたのだが、やまと絵展は情報量が多いため著しく体力が奪われる。
私は「今日は何があるかを確認して、じっくり見たい作品を見つけたら次回に回すぞ〜」というお気楽なノリで入ったつもりなのだが、前のめりで見入ってしまった。スニーカーを履いてきたけれど、足が痛くて堪らん。疲労が強い。
二回目は絶対に平日に来る。そう誓い、残りの年給を数えながら帰路についた。

気力チャージのため、日高屋イン。五臓六腑に染み渡る!
絶対もう一度来るぞ〜!
百日紅は一足早く冬支度中


秋も深まり、葉っぱも色づく
本日のお昼ご飯

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