書籍:世界史と地理は同時に学べ

こんにちは。
3人娘を育てている、ベンチャー企業のCTOです。


世界史と地理は同時に学べ!

「世界史と地理は同時に学べ!」という書籍を拝読しました。

著者について

本書は、「一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書」で知られる、山﨑圭一さんの著作です。

山﨑圭一さんは、歴史・地理の授業動画をYouTubeにアップされている、ムンディ先生としても知られています。

中田敦彦さんのYouTube大学で最初にバズった世界史の授業は、このムンディ先生の書籍をベースに実施されたことでも有名です。

本書について

世界史における様々な出来事は、地理的条件によって発生していることが多々あります。

例えば、古代ローマ帝国が滅亡する原因となった「ゲルマン民族大移動」は、地球の寒冷化の影響だということは広く知られています。
同時期に、中国史においても、寒冷化の影響によって北方騎馬民族が南下し、国家を築いたことも知られています。

このような、地理(や気候の変化)が世界史に影響をあたえているのですが、世界史の教科書ではそこまで触れることはないでしょう。

本書では、そのような歴史上の出来事と地理的要因の関係性に注目して、44個のテーマについて説明しています。

一般的な世界史の授業では、出来事を時代区分ごと・地域ごとに説明しています。
そのため、時代区分を超えた説明がされずに、その地域特有の歴史的なつながりが理解しずらい構造になっていると言えるでしょう。

本書では、学校の授業ではなかなか学べない「歴史的な出来事が、地理的な条件を踏まえた上で、時代区分を超えてどうだったか」といったことを知ることができます。

今回は、本書の中からいくつか部分的にピックアップしてご紹介します。

メートル法とフランス革命の理念

メートル法

地球の周囲は約4万km(赤道は約40,075km、北極と南極を通った一周は約40,008km)です。

この約4万kmは、たまたま4万kmなのではなく、「地球の周囲の4分の1の長さの1000万分の1を1m」としています。

つまり、メートル法は地球のサイズを基準に作った長さの単位です。

一方、アメリカ、イギリス、カナダ等で用いられているフィートやマイルという単位は、人間の体のサイズを基準に作った長さの単位です。

1フィートは足のサイズを元にした単位、マイルは歩幅を元にしています。

重さの単位についても、グラムは純粋1立方センチメートルの重さを基準とし、ポンドは小麦の重さを基準としています。

フィート、マイル、ポンドは人間の生活を基準にした単位です。
そのため、普段の生活との親密性を考えたときには、これらの単位を使ったほうが便利でしょう。

しかしながら、現在は多くの国家ではメートル、および、メートルを基準としたグラムを使っています。

フランス革命

フランス革命は、王政を廃止し、共和制を樹立した革命です。
このとき、特権階級である聖職者と貴族から、多くの特権を剥奪し、平民と特権階級の差が大きく縮まります。

フランス革命における理念は、自由・平等・博愛でした。
ここで、国民議会は人によってまちまちな体のサイズによって規定されたフィートやマイルといったものよりも、地球という全員にとって同じ大きさのものを基準とした単位の方が「平等」を表現できると考えました。

そして、フランス革命期の1791年に開発が始まり、1799年にメートルとキログラムのプロトタイプが作成されました。

アルザス・ロレーヌ地方

歴史的変遷

アルザス・ロレーヌ地方が世界史の教科書で注目されるのは、19世紀後半の普仏戦争だと思います。

このとき、普仏戦争に勝利したプロイセンとドイツ諸国がまとまり、ドイツ帝国となり、そのドイツ帝国にアルザス・ロレーヌ地方が割譲されました。

その後、第一次世界大戦後にフランスに、そして第二次世界大戦中にドイツに、さらに第二次世界大戦後にはフランスの領土となります。

しかし、近代以前でも、この地域はフランス語圏とドイツ語圏を行き来しています。
アルザス地方、ロレーヌ地方、それぞれが、中世のフランク帝国や申請ローマ帝国時代に、支配者が変わっています。

取り合いとなる理由

アルザス・ロレーヌ地方は、このように何度もドイツとフランスに取り合われていました。
その理由は、単に二国の国境に位置しているだけでなく、石炭・鉄鉱石の産地であることがその最たる理由でした。

鉄は、国家にとって非常に重要な要素です。

古代では、製鉄技術がそのまま軍事力につながっていましたし、鉄製農具によって農業生産性も大きく向上します。
近代では、ドイツ帝国の首相ビスマルクによる「鉄は国家なり」といった言葉も有名です。
日本でも、「鉄は産業の米」とも呼ばれていました。

この鉄を精製するには、多くの石炭と鉄鉱石を必要とします。
1トンの鉄をつくるのに、現在の技術では2〜3トンの材料が必要となります。
近代以前では、その効率はもっと悪かったことでしょう。
運送コストを考えると、原材料の産地に近い場所で製鉄する方が、圧倒的に有利です。

そうしたときに、鉄の原材料である石炭・鉄鉱石の産地である、アルザス・ロレーヌ地域は、奪い合いとなります。

アルザス・ロレーヌ地方と同様の属性を持つ地域が他にもあり、ここはシュレジエン地方と呼ばれます。
ここは、歴史的にプロイセンとオーストリアで取り合いがされています。

EUの出発点

EUの出発点である欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)は、フランスとドイツの石炭・鉄鉱石の共同管理のための組織と言えます。
歴史的に係争の地となり、二度の世界大戦でも取り合いとなったアルザス・ロレーヌ地方を安定化させることが、ヨーロッパの安定にとって必須と考えたのです。

このECSCが、ECを経て、EUとなります。

EUの議会は、アルザス地方のストラスブールに置かれていることから、この地の重要性を計り知ることができます。


以上、「世界史と地理は同時に学べ!」の一部をピックアップしてご紹介しました。

世界史と地理を組み合わせた知識は、現代社会につながる様々なものにリンクします。
そのような知識は忘れづらいですし、そもそも興味を持って学びやすくもあります。
そして、何よりも、現代社会を理解する上での重要な教養となります。

本書は、そのような知識を学べるので、非常にオススメです。

また、YouTubeで「地理」を検索すると、そのようなテーマを扱っているチャンネルが見つかります。

これらも非常にオススメです。


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