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中村 慎太郎さんの棺桶に入れたいお話

家族


僕には、父と母がいる。

家族だ。

でも、バラバラ。

父親と母親は仲が悪かった。夫婦喧嘩をする。

僕は、当たり前だけど、夫婦喧嘩は嫌いで、両親が二人揃うとけんかをするから、

1人が良かった。

小さいころから、1人が楽で、1人になりたかった。



そしたら、本当に一人になってしまった。



中学校の時

両親が離婚して、父親が出て行った。

母親も男のところへ行ってしまった。


中学生


僕はいらない存在。

1人になった僕は祖父母の家で暮らした。



同時に中学校でいじめが始まった。

最初は2、3人からの陰口から始まって、無視。

2、3人がどんどん増えて、やることもエスカレートしてきた。

僕の困った顔が見たいから、困ることをどんどんする。

傷つけて、傷つけられた僕の顔があいつらは見たいから、容赦しない。


祖父母の反対を押し切って

僕は、学校へ行くのをやめた。


友達もいなくなってしまった。

本当の一人になってしまった。


「学校行かないで、何してるんだ!」


「ゲームだよ」

心の中で答えた。

ゲーム、スタート

からのエンドロール、おめでとう。

からのスタート。

エンドロール、おめでとう。

からのスタート。

時間はいくらでもあるし。

ゲームは気に入らなかったら、リセットもできるし。

くそじじい。くそばばあ、め。


リセット。


僕の人生も、リセットしたい。

ずっと思ってた。

あいつらが、行かない高校

絶対に行けない高校に行って生まれ変わるのだ。


超、進学校。

そこに行って、人生をリセットする。

中2、現在、E判定だけど。


これが塾へ通い始めるきっかけ。


学習塾


塾は17時から自習室が開く。

19時から21時までが授業。

じい、ばあと居たくないから僕は17時に塾へ行く。


学校も行けない、

家にも居たくない。

家よりも塾が良いってこと?

わからない。


でも、塾は学校とは違う場所だった。

塾の先生の

「やめなさい」の言葉の響きがちがっていた。

「それはちょっと違う」

「良くできたね」

「残念!」

「がんばったね」の響きも学校とは違っていた。

なんだろうね、この塾。

学校の先生とは違う。


塾のエントランスはいつもまぶしかった。

エントランスには先生たちの白い机や白いプリンターがある。

白いものが集まった、白い場所。

先生たちと話したくて、

理由もないのに塾生が集まる。

どうでもいい、中学生の話。

部活とか、ゲームとか、アイドルとかサッカーとか。

どうでもいい話なんだけど

なんでだろうな、

僕たちは、誰かに聞いてほしくて。


先生たちがにこにこしてるから、

みんなそこでしゃべっちゃう。


21時を過ぎると

ガヤガヤ、笑い声が

エントランスで始まる。


学校とは、違う感じ。


東山先生


超、苦手な教科があった。

英語。

わけわからん。

お手上げだ。


「お手上げだ」を英語で書くと?



I  don’t know what to do.

(どうしてよいかわからない)



だけど、ここは塾で、先生がいる。

I know what I should do, just ask  the teacher.

a teacher じゃなくて 

the teacher なとこがミソ。

英語の東山先生。

先生はいつも時間をかけて教えてくれた。

「いいかい、英語の文法は、数学の公式と一緒なんだ。」

「公式を使って、数学の問題を解くように、文法というルールを使って文を作れば良いんだよ」

ルールとは

to の後ろの動詞は何があっても一人称の現在形が来るとかいう決まり事。

go, goes, went, gone, going

英単語の用法を見て頭を抱えるのではなくて、

その文を支配している文法を見極める、

そっちを優先した方が英語はわかりやすい。

数学が得意だったから、数学に例えて話してくれた。


先生と話すと、

苦手な英語がニコニコしながら少しずつ、僕に近づいて来ているような気がした。

no problem!

英語は少しずつno problem!になってきた。


黒いシミ


でもね、中3の夏になる前、梅雨が終わるか終わらない頃、

うっすらと黒いシミが塾にできてきた。

最初は2、3人。

僕が不登校で休んでいる学校の同級生。

最初は普通だったのに、

僕が近くを通ると、彼らはちょっと、ほんのちょっとだけど動きを止める。

僕が通り過ぎた後に、普通に戻る。

ちょっとしたときに、奴らだけで目を合わせる。

そのシミは危険な兆候だった。

学校の始まりの時と一緒だったから。

黒いシミはじわじわと、あっという間に広がって僕を包囲してしまう。

また、誰かの憂さ晴らしのために

僕は徹底的に傷つけられる。

やっと、学校以外の安全地帯が見つかったのに。

どこへ行っても追いかけてくる、黒いシミに僕は絶望した。



再びの

I  don’t know what to do.

そして再びの

I know what I should do, just ask  the teacher.

英語の東山先生。

でもすぐには相談できなかった。

学校の先生は、いじめの相談をしたときに、僕をさらに地獄へ突き落したからだ。

口では「大変だったね」「何とかするから」って言うけれど

「いじめられる原因は何だと思う」って聞いてくる。

それって、僕が悪いってこと?

ほんと、嫌な思い出だ。

先生は信じられない。

父親も

母親も

大人は信じられない。


あ、やっぱ、僕一人。

かな。


でも、勇気を出して東山先生に相談できたのは、

相談しても、しなくても、また地獄がやってくるならば、

相談するほうにかけよう。

東山先生を信じてみよう、と思ったから。



自習室で、机を挟んで向かい合った。

僕は、先生の目を見て

中学校からのいじめの話、

学校に行かなくなった話をした。

最近感じる嫌な感じ、

不安な気持ちでいっぱいなことを話した。


先生は、僕が話す間、

ずっと僕の目を見てくれた。

僕の目を見て、

僕の気持ちを受け取ってくれた。

今でも覚えているのは先生が言った2つの言葉。


「君は、この場所に居ても良いんだよ」


「いじめは、なんとかするから」


胸の中に渦巻いていた、どす黒い雲がサッと消えた。

胸が軽くなって、

深く、深く呼吸ができるようになった。


あぁ、ここにいて良いんだ。

ここは、

僕の

安心できる居場所なんだ。


なぜかわからないけれど、東山先生が僕を守ってくれるから

大丈夫、と思った。


先生と話し終わって、自習室を出たときから

この塾は

僕の居て良い場所。

安心できる場所になった。


翌日の塾。

黒いシミの存在を恐る恐る探ったけど、

なくなっていた。

消えていたのだ。

恐る恐る、一番話しかけやすい友達に

自分から話しかけてみた。

普通に笑って話してくれた。


先生が何をしたかはわからない。


でも、先生は僕のために

塾にできた黒いシミを綺麗に拭ってくれたのだ。


中3の夏は、今までで一番軽い気持ちで生きていることができた。


志望校


E判定だった、超難関の志望校。

その夏、僕は初めてすっきりした気持ちで

勉強をすることができた。


いつも不登校のこと、

いじめのこと、

居場所がないこと、

1人きりなこと、

モヤモヤがいっぱいあって

モヤモヤの中で勉強していたから

数学、国語、英語が

勉強したことが

そのままスッと入ってこなかった。

成績は伸びなかった。


しかし、中3の夏の僕は違っていた。

心の中も、頭の中もすっきりクリアになっていたから

教わったことは

どんどん

どんどん

頭の中に入っていった。


安心できる自分の場所が見つかると

人ってパフォーマンスが上がるんだね。


中3の秋の模試は

Dも、Cも、通り越して

B判定をもらった。


1月の受験に向けてひたすら勉強に取り組む。

9月

10月

11月

カロリーメイトのフルーツ味。

小腹が空くと

カロリーメイトの黄色い箱を開けて

フルーツ味をかじる。

もごもご、ぱさぱさ、

ちょっと甘いドライフルーツを

味わうか、その前に

水かお茶で流し込む。


僕は、ただ勉強を続けた。

勉強の目的も、いつしか変わっていた。

最初は、自分が生まれ変わりたいから、新しい人生を始めたかったからだったのに、

今は、僕を応援してくれる先生たちのために勉強していた。

先生の「がんばれ!」の気持ちに応えるために勉強していた。


自分のためよりも

誰かのための方が

あきらめないんだね。


そして12月


滑り止めの高校が落ちても

不思議と落ち込まず

勉強を続けることができた。


そして本命の受験当日も

僕はいつもと変わらない

淡々とした気持ちで問題を解いた。


合格発表


発表の日、僕は制服にコートを着て父親と

志望校の掲示板の前に立った。

数時間前に発表されていたから

掲示板の前には僕と父親だけがいた。


まだまだ寒くて

雪がパラパラ降っていた。


「あ、あった!」

見つけたのは父親の方だった。

僕の番号があった!

E判定からのスタートだったけど

学校の先生には絶対無理って言われてたのに

不登校で

いじめられっ子で

家でもずっと一人きりで

やせてひょろ長くて

自分から人に話しかけることもできない

こんな僕が、

合格した。


自分の番号を見つめている時

東山先生が近づいてきた。

合格発表が始まったときからずっと僕を待っていてくれたのだ。

寒かったろうに。


先生は

一番の優しい目で、

まるで自分が受かったみたいに

喜びがじわじわと溢れる声で

「おめでとう」

「本当に、良かったですね」

と言ってくれた。




これが、僕の棺桶に入れたい話。


東山先生は

15歳の僕が、

父親からも

母親からも

必要とされてなかったのも

いじめられて

人とかかわるのが怖くて

学校に行けなくて

独りぼっちだったことも


ギリギリのところで

それでも必死で生きていることも知っていた。


あと一歩で壊れそうな僕を

そんな僕を、

どうにかして幸せになってほしい!って思ってくれていたんだね。

ありがとう。

ありがとう!

ありがとうございます。



僕は今、専業のトレーダーとして

チャートの動きを追って

収入を得ている。


やりたいことがある。

昔の僕のように孤独を感じている人、

そんな人に

居場所を作って

僕と仲間の温かい気持ちで

心を温めてほしい。

そして力を蓄えたら

目標をもって

誰かのために生きる目標をもって

羽ばたいてほしい。

あの時の塾の

まぶしくて温かいエントランスのような

そんな居場所作りをしている。


興味のある人は、Twitterをフォローしてほしい。

どんな人に対しても

少なくとも

僕は、

あなたの味方になります。


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慎太郎さんのnote


以上、中村慎太郎さんの棺桶に入れたいお話でした。

最後までお読みいただきありがとうございました。

私は、たくさんの方と一緒にその方のキラキラしたストーリーを掘り起こし物語を書いています。

今、この記事を読んでくださっているあなたの物語もできたら書きたいな、

と思っています。

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