曹操の詩
「あなたの好きな歴史上の人物は誰か」
このように聞かれると、
私にはまず二人があがります。
一人が織田信長。
もう一人が曹操です。
この二人には似通ったところがあると思っており、
こういうタイプの人が好きなんだな、
と改めて思います。
信長さんについては、
趣味兼勉強がてらnoteを利用して
これまでに色々書いてみました。
noteに書いて記事にするという作業は、
インプットとアウトプットを伴うので、
個人的には身にしみやすいです。
「好きな人のことはもっと知りたい!」
と私は考えますので、
今度は曹操についても試みてみようと
最近企てています。
そこで、
さしあたりいくつかの文献を検索してみて、
使えそうなものを選んでいると、
ふと目を引く本が。
詩はほぼ手に取ったことがありませんでしたが、
読んでびっくり、面白い!
特に好きな人物の作品というだけあって、
「この時にこんなふうに感じてたのか〜!」
と、意外な味わい方を発見しました。
今回は、そんな曹操の詩のなかから、
私が「いいな!」と感じた二首を、
ご紹介させてください。
志は千里に在り
歩出夏門行(めでたき亀は長命とはいえ)
めでたき亀は長命とはいえ、命の尽きる時は来る。
天翔る龍は霧に乗るとも、ついには土塊に帰す。
老いたる名馬は厩に伏す身になろうとも、その意気は千里を駆け巡る。
老境を迎えた丈夫の、猛き心は衰えない。
命の長短は、天が決めるだけではない。
身と心を磨けば、長寿も引き寄せられよう。
めでたやな、歌って思いを詠じよう。
諸行無常、栄枯盛衰は世の常。
そのような世界にあって、
曹操は人間の力を信じ、
宿命を乗り越えようとします。
吉田松陰の有名な辞世の句がありますが、
「老驥伏櫪 志在千里」の節は、
それに少しニュアンスが似ていますね。
酒に対して
酒を前にさあ歌わん。人の命はいかほどあろう。
それはたとえば朝の露。過ぎし日ばかりが積み重なる。
胸に迫って心は昂ぶり、憂いは消し難い。
いかにして憂いを払わん。ただ酒あるのみ。
青い衿の若者よ。はるかに続くわが思い。
ただ君を求めて、今に至るまで秘かに吟じ続ける。
ユウユウと鳴く鹿が、野原の草を食んでいる。
わたしのもとにはめでたきまろうど。瑟を奏で笙を吹いてもてなそう。
明るく輝く月の光に似て、この思いはいつになったら手につかめよう。
心のなかから生じる憂い、断ち切るすべもない。
野越え山越え遠くから、わざわざ尋ねてくれる人がいる。
苦しい時にも楽しい集いにも、昔のなじみは大切に。
月は明るく星はわずか。カササギが南に翔る。
木の周りを三たび回り、身を寄せる枝を探す。
山はどんな高いものも拒まず、海はどんな深いものも拒まない。
周公は口中の食べさしを吐いて賢人を求め、天下のこらず信服したのだった。
人生の儚さと、それを忘れようと飲む酒。
曹操の作品の中で特に有名な歌です。
悲観的な語りで始まり、
大事を為そうとする意思をうたう詩に変化し、
最後は荘厳さをもって締めくくられます。
(ちなみに、この歌については、
以下の動画で語り口を聴くことができます)
小説や漫画、ゲームなどのおかげで、
よく名前が知られる曹操ですが、
そうしたイメージはさておき、
実際にはどのような人物だったのか。
私は中国の漢文を読むことができないので、
翻訳なしに一次史料を読み解くことはできませんが、
これから日本の研究書の力を借りて、
自分なりに曹操の人物像を探ってみようと思います。
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