毛虫をペットにして散歩させていた妹、泣く。

北海道 紋別のデカすぎるカニの前から失礼します。サクライツクルです。

あと44日で30歳になります。
44日なんて二十日大根が2回収穫できるのでまだまだ全然先ですね。


今日は過去のお話です。自分の中で何故かよく思い出す想い出なのですが、今日はそれについて書こうかなと思います。


タイトルにも書きましたように私には一つ下の妹がいます。詳しい情報は書けないですが、名前は【カオル】と言います。

ツクルとカオル

という童話の世界みたいな名前で兄妹やらさせてもろてます。ただ妹の名前の理由は5月生まれで【風薫る五月】から取ったっていうなんかすごいいい感じの理由で名付けてもらっています。

せーので名付けた とだけ説明される自分からしたらとても羨ましいです。

そんな妹とはまあ歳も近いこともあり、ある程度仲良く、ある程度喧嘩しながら幼少期を過ごしていました。


小学生になったばかりの頃だったでしょうか。

この歳のみんながなるように、妹も【ペットが欲しい】ということを言うようになりました。

あの、自分の命も守れないのに他の命に手を出そうとする時期はなんなんでしょうか。自分もありましたけど。

自分の子供に言われたらなんて答えようか考えてしまいます。


そして、うちはかなり貧乏だったので、ペットを買うなんてことはできません。もうその断られ文句を知っていた自分は、(残念。うちは、無理なんだよ・・・)と思っており、妹も案の定断られていました。

自分の時は、(ああ、うちは貧乏だからか…)と多少なりとも凹んだのですが、妹は違いました。

次の日から玄関に虫かごが設置され、そこには【ケム太郎】と書かれた紙が貼ってありました。妹は、庭で拾ってきたなんか黒くて毛むくじゃらの全然かわいくない毛虫をペットして喜んで飼い始めたのです。


平等なんだ?

犬とか猫とかと、その毒ありますよみたいな雰囲気バンバンの毛虫を平等の命としてペットに出来るんだ?


変に犬とか猫とか買ったらだめですね。子供がペット欲しいと言い出したらまず毛虫を与えてみよう。


妹はケム太郎を、ものすごく可愛がっていました。

思えば私が大学で農学部生物学科という分野に進んだのは、妹がこの命を平等に扱う様子を見て感動したからというのも根底にあるかもしれません。


ただこのお話は急転直下悲しい結末を迎えます。


妹は毛虫の【ケム太郎】を犬や猫のペットと同様に平等に扱っていました。


名前を呼んで、えさをあげて、なんか普通に撫でたりしてました。(撫でてた時だけあんまり辞めた方が良いよ。と言いました。)それでも妹はケム太郎を愛し、ケム太郎をペットして扱いました。


平等だったがゆえにその日は当たり前のようにやってきました。ケム太郎を散歩させると言ったのです。

散歩???????????

当時小学校入りたての自分は困惑しました。それでも妹のケム太郎への愛を見ていた自分は何も言わずとりあえず見ていることにしました。

夏の暑い日でした。

まず、妹はケム太郎の首に(首がどこかはわからないけど)タコ糸を巻きました。散歩だからです。散歩ならリードつけてやりますもんね。そっかそっか了解。

ケム太郎を傷つけないように丁寧にリードをつける妹。なんだか心なしかケム太郎も散歩をしたがっているように見えてきました。

外に飛び出しリードを放つ妹。1分に3mmくらいのケム太郎のペースでゆっくりゆっくり歩く妹。この光景を見て誰がケム太郎をただの虫だと思うでしょうか。彼はこの瞬間から立派な櫻井家の家族になったのです。

私は純粋に毛虫に愛を注ぐ妹を誇らしい気持ちになりました。このままで大丈夫だろうと思って部屋に帰ると、すぐに妹も一人で帰ってきました。

「ケム太郎は?」と聞くと妹は、

「一人になりたい瞬間もあるだろうから少し置いてきた」と言いました。

Excellent!!


もう言うことなしです。彼女は優しく強く育つことでしょう。そう思って部屋でしばらくゆっくりしていると庭に戻った妹が泣きじゃくってる声が聞こえました。

急いで庭に行ってみると、妹が小さな黒だかりの前で泣いていました。


ケム太郎はアリに運ばれていました。


急いで自分は、アリたちから家族を救い出そうと木の棒を振り回しました。お兄ちゃんとして最初に助けたのが【いじめっ子から妹を】とかではなく、【アリから毛虫を】になった瞬間でした。

ものすごいアリを追い払ったあとのケム太郎は息も絶え絶えでした。ケム太郎は括られたタコ糸から出ることも出来ずにただアリの格好の的となっていたのでした。ただこれで誰が妹を責められようか。

妹は立派に愛を注いでいた。知識が少し足りていなかっただけだ。人は失敗を、犠牲をもって成長していくんです。


瀕死のケム太郎だって「有難う。ごめんね。もっと綺麗な姿を見せてあげられなくて。それでも最後まで愛されて僕は幸せな毛虫だったよ」と言っているようでした。自分にはそう見えました。

なんと形容したらよいか分からない気持ちで二人でケム太郎のお墓を立てました。家族が一人増えて一人減った日でした。


その日は、蝉がいつもより早めに鳴くのをやめました。



はい。個人的にはすごく悲しいけど愛しい話でとても大切な想い出です。



因みに妹は今、マンションの最上階で犬2匹と暮らしています。

あの時の気持ちは忘れていないといいな。


それでは。今日も29歳でした。

また明日。



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