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でかい風呂に入らなければ!

12時間の睡眠から目が覚めて、覚醒するよりはやく近場の銭湯をGoogleで検索する。目が覚めて突然、大きなお風呂に入らねば!という使命感に駆られたのだ。

わたしはひとりで銭湯に行ったことがない。
家族で温泉に行こうとか旅先で友人と、など機会があったら行く程度で、というか多分温泉と銭湯はお風呂好きに言わせれば違うんだろうけどそれはさておき。

そんなわたしがなぜかはわからない。
わからないけれどこれだ!と強く思った。

使命感というとやや大袈裟かもしれないけど、神さまの啓示受ける人ってこんな気持ちなんじゃないかと思うくらいの強さで、こんなことは初めてだった。


かくして家から10分くらい歩いたところに銭湯があることがわかり、結構雨も降っているのに歩き出す。雨のせいかぬるい夜、歩き出しながら「わたしは何をしているんだろう」と思って少し笑ってしまった。気持ちが軽いのも夜があったかいせい。

日常的に銭湯に行くわけでもないのに、変なの。

そこは最近リニューアルされた清潔で新しく、しかしタイル画など昔の雰囲気も残したこぢんまりとした銭湯だった。

脱衣所でもちりん、とドアの開く音や「こんばんは〜」と挨拶する声が聞こえる。

ひとりで行く銭湯ははじめてだったのに、とても自然に服を脱ぐことができて嬉しい。湿った空気を見渡しては嬉しい。鍵を腕につけることさえ嬉しい。

でかい風呂というのはどうしてこうも良いのだろう。家でゆっくり入るお風呂も好きだけれど、年齢様々な女たちと肩を並べて入る風呂は格別だ。

女たちは無関心に身体を洗う。わっしわっしと髪を泡立て、固定されたシャワーで頭をさかさまにしてしゃかしゃかと泡を流す。

女たちは無関心に湯に浸かる。声を発さず目を合わさず、それぞれが「個」になって浸かっては立ちあがり、入れ替わり立ち替わり。

やわらかく脂肪を潜ませた身体が、惜しげなく晒されるのをじっと見る。人様の裸体を見るのは失礼かもしれないが、目の前にあったらやっぱり見る。


湯に浸かって見知らぬ裸体を眺める、こんな変態ちっくな行為がしかし、銭湯では日常的。

身体はあたたまる、というよりも中心から発熱するような心地で、ふと見渡すと女たちは裸であったことが嘘だったように服を纏い身支度を整えていた。



お風呂あがり、コーヒー牛乳を静かに飲む。1人銭湯は気楽だけどやっぱり人と行くほうが「おいしい〜」って言えていいなと思う。


女たちの生活を覗き見た銭湯。
大変よかったのでまた行こうかな。

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