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【読書日記】「ねじの回転」本当に怖いのは誰だ?

筋書きとしては簡単なのに、なぜこれほどまでに難解な作品に仕上げることができるんだ、ヘンリー・ジェイムズ!
イギリス郊外の貴族屋敷を舞台に、両親を失った幼い兄妹と、家庭教師として雇われた「私」、そしてそこに存在する(?)「幽霊」の物語。

結論から言って、恐ろしいのは幽霊ではなく、①家庭教師を雇う際の雇用主が出した条件「俺を一切煩わすなよ」、②家庭教師の心理状態の極度の不安定さ、③幼い兄妹、特に兄マイルズの狡猾さ、この3点かと思う。
この小説、最初から最後まで主人公である「私」の心が揺れ放題揺れている。読む側はその揺れにより、心理的な眩暈をおこす。なんなら酔う。その眩暈によって平衡感覚が麻痺し、見渡せば霧の中。読み進んでいけばいくほど、誰の言葉を信じればいいのかすらわからない。

なぜこの難解な作品が名作として読み継がれているのか。驚くべきことにこの作品が世に出たのは1898年。「現代のホラー小説の先駆的な名著」として紹介されるのも納得。実は主人公の妄想では?という解釈ができるあたり、現代ホラーに非常に近い感覚ではなかろうか。
何度か映像化もされているようだが、これはやはり小説として、大いに想像力を鍛えつつ読むことをおすすめしたい。

やりなおし世界文学、2冊目。

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