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#20【営業ノウハウ】営業に求められる能力【各論④】

Vol.5【各論④】個別能力その3

#営業ノウハウ

noteをだいぶサボっておりまして、実に1年ぶりの投稿です。
営業に求められる能力シリーズ第5弾は各論④の個別能力その3です。
1年越しの最終回となります。

営業として求められる能力

今回は受注確度を向上するための商談コントロール・案件管理と、自身の目標達成のためのパイプライン管理の内容です。

これまでご紹介してきた能力の集大成とも言える内容であるといえます。

営業という職種として会社からお給料をいただいている以上、会社の事業計画に沿って安定的かつ確実に目標数字を達成してビジネスの成長に貢献することは必須のミッションです。

よく「営業は売らない」だの「受注が目的ではない」だの言いますが、前者はお客様への価値ファーストで行こうという話であり、後者はお客様のビジネスパートナーとしてWin-Winの関係を築くのが一流の営業である、という話であるので、あくまでも自分の目標数字が達成できているWinできているという前提があっての話です。

勘違いして数字が未達になる言い訳に使っている人は即刻反省してください。

さて、本日の話の軸になるのは商談管理のフレームワークです。

商談を着実に先に進め、案件を確実に受注するために押さえておくべき内容を言語化し、項目化し、アクション化したものです。

これはかの有名なMEDDICをベースに、私が15年の営業経験の中で蓄積してきた経験や学んできたフレームワークを総合し、分解し、再構築した私の営業のベスト・プラクティスとも言える知見の集大成です。

特に名付けはしませんが、以下の10項目です。

独自の営業フレームワーク

MEDDICを補完するため、足りていない4つの要素(社内周知・スケジュール・相互アクション・リスク)を追加しました。

まずは各項目を解説していきます。

Metrics

ビジネスや取り組みの定量的な評価指標のことを指します。

MEDDICをかじった方は良くこれをROIと言いますが、厳密には違います。
お客様の事業や取り組みの成功によって得られるアウトプット(収益)や、課題が解決されることで解消される損失などのことを指します。
提案によってその全てが得られればROIとイコールで良いですが、一部にしか寄与しない場合はROIとは言えません。
ROIはあくまで、提案したものに投資した場合に得られるリターンのことです。

このMetricsをを明確化することで、取り組み自体の正当性を認識させることができます。

定量的と書きましたが、昨今のSDGsなどの取り組みをはじめとして、必ずしも取り組みの目的が定量的でない場合も増えてきているため、このフレームワークでは定性的なものも含んでいます。

これを明確に合意できているかどうか、がこの項目です。

Identified Pain

認識された課題のことで、導入目的(=Metrics)の阻害要因のことです。

課題のインパクトを軸に優先度を明確化し、その解決策も含めて合意できていることが重要です。

また、顕在課題だけが見えていればよいわけではありません。潜在課題についても顕在化させ、同じテーブルの上で評価する必要があります。
ここは各論②で解説していますのでご参考ください。

Champion

しっくりくる一言がないのですが、当事者意識を持ってプロジェクトを推進し、営業と二人三脚で同じ目標に向かって進む人、という感じでしょうか。

これもよく案件の推進責任者と言っている人が居ますが、それは勘違いです。推進責任者はあくまでも”立場”であり、本来のChampionとは推進する意思と動機と力を兼ね備えている人を指します。

なので、Championが弱い、とか、Championが推進してくれない、ということは本来起こりえないのです(営業側が弱くて単に刺さっていないだけの場合は別ですが・・・)

Championとの関係構築において重要なのはPersonal Winだと思います。

Personal Winとは、その人に与えられた役割ではなく、個人的にその人にとって利益になることです。例えば、導入成功によって昇進できる、とか、賞与がたくさんもらえる、とか、部署のメンバーが働きやすくなる、とか。
公私問わず、その人が心から実現したいと思っていることを実現できるのがわかれば、強力な動機づけになり、ステークホルダーの説得やプロセス前の根回しなど、Championとしての役割を十分果たしてくれるでしょう。

Authorization

社内周知とか社内承認とか、要は担当者の個人的興味レベルではなく公的な検討・プロジェクトであるかどうかです。

ここが確認できていないと、Championっぽい人に踊らされ、様々な情報提供や提案などで散々工数を使った挙句、個人的な情報収集で予算も何もなかった、という悲惨な結果になったりします。

これを確認するために、担当者だけでなく他の人にも検討状況を確認するマルチソースを心がけましょう。

またこのフレームワークでは、ステークホルダー全員がプロダクトやサービスを導入することに合意していることも重視します。

特にVertical SaaSで多いのが、推進者や決裁者はOKしていても現場の声が大きいステークホルダーが反対しているため受注時期が遅延したり白紙に戻ったりすることです。

このリスクを避けるため、Championと協力して全てのステークホルダーのコンセンサスを獲得しましょう。

Economic Buyer

実際に決裁しお金を出す部署及びその責任者のことです。

ふわっとしたDX案件で多いのが、DX推進部署には予算がなく、実際にどの部署がお金を出すか、決裁枠がどのくらいかなどが不透明なまま案件が進んでしまうことです。

予算が有るのか、決裁枠はいくらか、決裁を通す難易度はどのくらいか。

ここをChampionと協力してしっかり詰めて明確化しましょう。

Decision Process

決裁プロセスのことです。

決裁プロセスに関わる承認者が誰で、どんなルートで、リードタイムは通常どのくらいかかるか。

気を付けなければならないのは、決裁プロセスには公式なものと非公式なものがあるということです。

公式なものはいわゆるワークフローで大体の人が知っていることが多いですが、曲者は非公式なプロセス。いわゆる根回しなどです。

例えば、公式なプロセスには登場しないはずの会長に根回しをして内諾を得ておかないと取締役会で絶対承認されないとか、親会社や荷主にお伺いを立てないとダメだとか、そういう話です。

このあたりはChampionでないと把握していないことも多く、中にはChampionですら把握していないこともあります。

Championに探ってもらい、万全に把握する必要があります。

Schedule

導入時期やスケジュールのことです。

ビジネスや取り組みの目的達成を前提としている以上、その目的がいつまでに達成できていなければならないのか、がゴールとなります。

そのゴールから逆算して、稼働時期、導入期間、契約時期、決裁手続き期間、と置いていき、各マイルストーンを日付ベースで設定します。

これが設定できていないと、細かな遅延やボトルネックが可視化できず、月末に気付いた時にはどうしようもなくスリップ、という悲惨なことになります。

また、目的達成時期が明確にない場合もあります。
そのときは、決算タイミングなどのイベントを期限としておくことで、このスケジュールを引くことができるようになります。

こういった、導入のための説得力のある(正当性のある)理由付けとなるイベントを、コンペリングイベントと言います。

Mutual Plan

スケジュールに沿って、各マイルストーンを確実に通過するために誰がいつまでにどんなアクションを行うかを決めることです。

営業側だけでなく、Championをはじめとしたお客様側も”誰が”にバイネームで設定するので、”相互アクション”と言います。

これはScheduleと必ずセットで合意する必要があり、そうでないと、不測の事態で遅延が起こってしまいます。

日付ベースで具体的アクションと担当者を決めることで、日単位で遅延がないかを監視し、問題があれば早期に解決のアクションが取れるのです。

Decision Criteria

意思決定に関わる判断基準のことです。

これはDecision Processとセットでおさえるべき項目です。

決裁プロセスが回って安心していたら、社長からまさかのプッシュバックがあり案件が遅延、最悪の場合は白紙、なんてことも起こり得ます。

それを避けるために、公式・非公式どちらの決裁プロセスにおいても、各登場人物が何を気にしていて、何がクリアになっていれば承認するのかを把握しておく必要があります。

この把握にもChampionの協力が不可欠です。Championと協力してDecision Criteriaを洗い出したら、Championと一緒に稟議書を作成し、これらの要件を充足する内容をすべて稟議書に盛り込みましょう

Risks

その名の通り、プロセスが順調に行かないリスク要因のことです。

ステークホルダーの反対、近隣領域のシステム検討、社長の長期出張など、様々なリスクがあります。

これをChampionと一緒に書き出して、全てについて予防策や起こってしまった際の対応策を考え、実行しましょう。

これらの10項目が完璧に抑えられれば、あとは余程コントロールし難い外的要因でもない限り確実に受注できるでしょう。

これらの項目を、商談のステージ定義と紐づけることで、商談を先に進めるにはどの項目を埋める必要があるかが明確化します。
そうすると、次回の商談の目的をステージを上げることと設定したときに、次のステージに上げるのに足りない項目が判り、それを埋めるためのアクションが明確化するのです。

商談ステージと項目の紐づけの例

これができれば、予定時期での確実な受注のために、いつまでにどのステージに上げるかの計画を立てることができ、各マイルストーンごとにどの項目を埋めるためにどんなアクションが必要かがわかるので、毎商談抜けもれなく準備することができ、計画の実現性が高まります。

フォーキャスト

営業にとって楽しいとは言えない時間、それがフォーキャストです。

しかし、このフレームワークに従って自身のパイプラインを科学的に管理できれば、非常に建設的で前向きな時間になり得ます。

受注できるかどうか不透明で、上司や先輩から「これはどうなってるんだ」と容赦ないツッコミが入るのは、案件が順調か否かを判断する要素が構造化されていないからです。

構造化されていれば、何が充足されていて何が足りていない、なのでNext Actionはこれです、と明快に即答できるようになるでしょう。

さらに、自分の持っている全案件を並べて、計画通りに埋まっているかどうか、期限内の受注のために必要なアクションが取り得るか(=項目が埋まるか)をこの各項目に沿って客観的に評価することで、確実な目標達成のための数字の組み立てができるようになります。

組み立て方の例をご紹介します。

  • コミット

期限内(今月中・今四半期中など)に受注できる可能性が高いもの。
上記の紐づけ例でいえば、全ての項目が埋まっているC-2案件以上がそれに該当します。

このコミット案件で目標数字がすべて、少なくとも8割が達成できる状態であれば目標達成はほぼ確実です。

  • バックアップ(アップサイド、などとも言う)

確実性は高くないが、必要なアクションが明確になっており、かつそのアクションが期限内に間に合うタイミングで実行できる案件のこと。

上記の例でいえば、ScheduleとMutual Planまで合意できているC-1ステージ以上がバックアップ案件と言えるでしょう。

Next Actionは、Decision Criteriaを把握してそれを埋める内容の稟議書をChampionと一緒に作り、Risksを洗い出して対応策を決めることです。

このバックアップ案件は、不測の事態でコミット案件が遅延した場合に、必要なアクションを確実に打って穴を充当するためにあります。

これらの案件の評価と数字の組み立て方が自分の中で型化できてくれば、必要なタイミングで受注できるよう案件をコントロールし、継続的かつ安定的に目標達成し続ける一流の営業になれることでしょう。

営業に必要な能力シリーズは一旦これで終わりとします。

今後は各能力の鍛え方やアクションの確実な実行の仕方など、実践編もいくつか書いていこうと思います。

お楽しみに!!

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