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【映画の感想】アカルイミライ(2003 日本)


黒沢清監督・脚本、オダギリジョー主演、2003年公開の日本映画。浅野忠信、藤竜也が脇を固め、笹野高史、りょう、加瀬亮もチョイ役で。松山ケンイチも出ているらしい。
ややシュールで掴みどころがない、観る人によって受ける印象、解釈は様々だろうが、明るい未来の話ではない。というのは確か。退廃的なミュージックビデオ風の映像、人影のない街路、廃棄された白物家電、音楽は軽妙。ふらふらと漂う、行き場のない若者の居場所の話、あるいは、クラゲの話かも知れない。無国籍という指摘があったが団塊世代のオッサンが出てくる。紛れもないニッポンの話である。


ざっくりと

舞台は現代、東京。夢の中で未来が見えるという24歳の青年、雄二(オダギリジョー)と、雄二の同僚で27歳の守(浅野忠信)。どちらも大人への反抗心を秘めたまま大人になれないでいる。生きる目的もなく、些細なことで刹那的にブチ切れる雄二にとって、自制できる守は兄貴分的存在。
ある日、守は飼っていたクラゲ(猛毒を持つアカクラゲ)が原因で仕事を辞め、その晩、元勤務先の社長(笹野高史)とその妻を殺してしまう。理由は「ついやっちゃった」としか語られないが、雄二は自分(の反抗心、怒り)の代わりに守がやったのだと思う。
逮捕、収監された守は、雄二が面会に来ても雄二に託したクラゲのことばかり気にかける。お前だけが頼りだという守に、雄二が出所するまでずっと待っていると言うと、未来のことはわかってるはずだ、見損なったと吐き捨て、守は一方的に雄二と絶交する。そして拘置所内で、自殺する。
失意に沈む雄二だったが、守の葬儀での出会いを縁に、守の父親(藤竜也)との疑似親子的な生活が始まる。


ロッテントマト

https://www.rottentomatoes.com/m/bright_future

BRIGHT FUTURE
2003, Drama, 1h 32m
73%
TOMATOMETER
22 Reviews
73%
AUDIENCE SCORE
2,500+ Ratings


見えない未来

大人になれない若者の話。成長譚ではない。淡々と進むが泥臭いシーンも。レビューでは難解という意見もあった。さっぱりわからんという人もいるかも。現行犯逮捕の現場でマグショットを撮るとか、面会室の階段とか、チェ・ゲバラのTシャツを着た少年のグループとか、シュールというか、他作品もそうだが黒沢清って人の世界は独特。浅野忠信の存在感、藤竜也の口ずさむ『星めぐりの歌』も、橋の上からクラゲのエサを川に撒くのもいい。クラゲたちが海を目指すのは『大人は判ってくれない』からだろうか。青春映画として見た。
人はいつ「大人になる」のだろうか。子供にとってそれは未来であり、大人になる未来とは「子供」である已の死である。子供である已の死と引き換えに「大人になる」のが未来なら、未来が見えないとは、大人の不在であり、成長の不在であろう。この国の現在を予言している映画である、といったら大袈裟、ですかね。

主題歌イイネエ
『未来』THE BACK HORN