まうんこ

 ドカーンッ!!ドカーンッ!!

 火山が爆発、大変だ。火山が爆発、大変だ。

 火山岩が、槍のように降ってくる。

 ドドーンッ!!ドドーンッ!!

 キャー!!キャー!! キャー!!キャー!!

 逃げ惑う人々。まるでゴジラが来た時のようだ。ジラジラジラジラ。もちろん、佐藤一家も例外ではない。

「時子、禎子、時夫、逃げるぞ!!」

 家長の時蔵が声を掛ける。

「逃げるわ!!逃げるわ!!」

「逃げます!!逃げます!!」

「逃げない!!逃げない!!」

 みんなが時蔵に同調する中、長男の時夫だけ反対する。口を一文字に結び、なにか覚悟を決めているようだ。一体どうしたのだろう。

「なぜだ。なぜ逃げないのだ。」

 時蔵が尋ねる。

「あれは火山岩ではない。山のうんこ、まうんこ。うんこはトイレに流さなければいけないのだ。まうんこ!!まうんこ!!」

 時夫は言った。

「まうんこ!!まうんこ!!」

「何言ってるんだ時夫!!死ぬぞ!!」

「まうんこ!!まうんこ!!」

 そうこうしている間に時夫は頭におまるを被り、外に飛び出そうとしている。

「な、何をしてるんだ時夫。やめなさい!やめなさい!」

「そ、そうよ!!なにしてるの!一緒に逃げるのよ!」

「ほんとよ!ほんとよ!」

 三人は時夫を止めようと摑みかかる。

 ズババーッ!!ズババーッ!!

 バタン!バタン!!

 しかし、簡単に払い除けられてしまった。屈強な成人男性には、三人がかりでも敵わないのだ。それはまるで、ライオンに飛びかかっていく亀のようだった。

「まうんこ!!まうんこを取るんだ!!行ってきまーす!!まうんこまうんこー!!」

 ダダダダダダダダダーッ!!

 時夫はおまるを頭に被り、外へ走り去って行った。川に放たれた魚のように、すごい速さであった。

「ああ!!時夫はもう駄目だ。三人で逃げるぞ!!

「うぅ、うぅ。」

「うぅぅ、うぅぅ。時夫ぉ、、」

 三人は泣きながら避難した。

 時夫は帰ってこなかった。三人はうんこをするたび、時夫を思い出し涙を流すのであった。

「ああ、私のうんこはまうんこではない。時蔵のうんこだから、ときぞうんこなのだ。」

(時蔵の懺悔)

 完

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