【詩日記】 夢


 
 
 それは長い螺旋階段を延々と昇り続けるようだった
 上からしゃがれた声がする
 僕は星に触りたかった
 ずっと上まで飛べるように作られたはずだから僕は歩き続けた
 そんな僕を一匹の鳥がしゃがれた声で笑いながら飛んでいく
 赤青緑の鮮やかな鳥たちが真剣な眼差しで昇っていく
 早く鳥になりたかった
 もう二度と人に戻れないとしても僕はそれでよかった
 どうせ元に戻っても僕の居場所は新しい子で埋まっている
 誰も担保してくれないならむしろ星になりたかった
 
 空から溢れて居場所をなくした星たちが
 尾を引いて下に落ち出した
 手のひらに落ちてきた星は一瞬にして消えた
 その後に砂が残った
 僕はその砂を体に塗る
 星になれる気がした
 体に星を塗るとどんどんと重力が消えていった
 僕の足取りは軽くなる
 勢いのついた僕は螺旋階段から浮いて飛び出した
 羽がないからすぐに落ちてしまうだろうけれどそれでよかった
 僕は僕を辞めたかった
 
 星の砂のせいで下に落ちられない
 滑稽にもがく僕を再びしゃがれた声が笑う
 僕は体から星の砂を払った
 恥をかくならこんなものいらない
 なのに後から後から僕のところに星が落ちてきて砂になって僕は軽くなる
 おしまいには僕は螺旋階段の一番上に辿り着いた
 空に触れた
 黒い幕が張っていてその幕をめくると
 向こうに海が広がっていた
 僕は魚になりたかった
 自由に泳ぐ魚が羨ましい

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