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梅仕事は、ひとつずつ、ていねいに数えながら。

目を覚ます頃にはすっかり明るくなってきた今日この頃。

外が明るいと、なんだか活動を始めたくなるもので。ここ最近は、週末も7時頃にはベッドから出て、部屋の掃除をしたりモーニングページを書いたり洗濯機を回したり……そんな生活をしている。

平日は朝の用意をしている途中でも、布団と枕がわたしと離れたくないと駄々をこねているような気がして、何度もベッドに戻りそうになる。けれど、週末はそんなことないから不思議だ。

いつでもベッドに戻っていいとなると、そこまで魅力的に感じなくなるものなのか。きっとこういう思考回路をあまのじゃくと言うのだろうなんて考えながら、ベッドの隣のソファに腰掛ける。

朝ごはんを食べてコーヒーを飲んでいると、モニターフォンが青く点滅している。

宅急便の到着だ。

在宅時、ましてや朝のホットしたいコーヒータイムは、静かに補聴器を付けずに過ごしたい。そんなわたしに、この点滅してくれるインターフォンと来客が誰なのか一目でわかるモニターは、必需品。

モニターを確認して、宅急便屋さんのお兄さんがやってきたことを確認すると、シャチハタを持って玄関にスタンバイする。2回目のピンポンは、玄関の覗き穴から押している姿を確認してすぐに出ちゃう。

お兄さんに「ありがとうございます」と言って受け取った段ボールは、ひんやり冷たいクール便。昨夜アプリで到着を知らせてくれていた、青梅が入っているはずだ。

中身を確認すると、青梅がぎっしりと入ってる。アク抜きをしている間に、いそいそとセラーメイトのガラス瓶を熱湯とアルコールで消毒。アク抜きが終わる頃には瓶の熱も取れて、いよいよ梅仕事のはじまり。

青梅を一つひとつ拭き上げて、ヘタを取る。

ひとつ、ふたつ、みぃっつ……

ひとつ作業を終えるたびに、梅の数を数えずにはいられないわたしが、やってきた。

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たしかそれは、小学生の頃だったと思う。夏休みの間を祖父母の家で過ごしていたわたしは、ある日仕事に出かけていく祖父からこんなことを言われた。

「sanmariに仕事を頼みたい」

内容はいたってシンプルで、祖父が昼間のうちにベランダに干していた梅干しを夕方、梅酢の入ったカメに戻すお仕事。小さい頃から祖父と一緒にやっていたこの作業。(そんなの簡単)と思っていたわたしに祖父がもう一つ仕事を付け足した。

「それからね、カメに入れるときに梅干しの数を数えてね」

我が家の庭にある梅の木になる実は毎年だいたい60個くらいだっただろうか。小学校低学年だったわたしにとって、何十個もある梅の実を毎日数えることは、大仕事のように思えた。

祖母と母が夕ご飯の準備を始める頃になると

「お仕事してくるー!」

と2階へ駆け上り、ベランダで梅の実を数えながらカメに戻す。

ひとつ、ふたつ、みぃっつ……

重いカメを持ち上げて部屋の中にしまいこみ、今日の梅の実の数をメモに残して祖父の席に置いて眠った。

翌朝、目を覚まして一階へ降りると祖父が昨日のメモの横に

「ありがとう」

そうメモを書き足してくれていた。リビングにやってきた祖父は、

「お仕事だからね」

と、500円玉をわたしの手に落とした。

わたしの記憶の中にある、初めての仕事をしてお金をもらう経験がこの瞬間だった。

幼心に、これは大事なお仕事なんだ、と思ったわたしはそれから数日真面目にその仕事をこなし、翌朝500円をもらった。

わたしの住んでいた地域はお盆明けには学校が始まる関係で、天日干しが必要なその期間を終えると住んでいたいつもの家へと戻り、お仕事は終わった。

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お金をもらうくらい大事な大事な梅仕事。そんな遠い思い出にふわっと引き寄せられるように

ひとつ、ふたつ、みぃっつ……

梅の実を数えながらヘタをとり続けた日曜日の昼下がり。

数日前に芒種を迎え、次の節気はいよいよ夏至。今年の夏は、梅シロップで乗り切るんだ。今から出来上がりが楽しみでしょうがない。


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