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秋は、お山がチャーハンみたいに見える。遠い彼方の記憶は、ホンモノだった。

ここ数年、紅葉狩りといえば京都だった。昼は南禅寺のインクラインの紅葉を眺めてため息をつき、夜は清水寺の池に映る赤い紅葉をみて息を呑んだ。
その度に思い出す。遠い記憶の彼方のこと。

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母が運転する幼稚園への車の中。紅葉した山々を眺めながら、わたしはこう呟いた。

お山が、チャーハンみたいだよ。

すると母が、笑いながら「なるほどねぇ。sanmariには、チャーハンに見えるのね」と答える。

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紅葉の季節になると、ふと思い出すこの場面。

でも、ここ数年
紅葉=もみじの赤
というイメージがこびりついていたわたしは、どうもこの思い出が腑に落ちなくなっていた。遠い記憶だし、確かではない。本当は、そんなエピソードはなかったのかもしれない。それでも、ここ何年かずっと引っかかっていた。

この秋、ちょっと長めのお休みをいただいたわたしは、黒部峡谷にいた。
大好きな電車に乗りながら、紅葉狩りをする。宇奈月はビール産業が盛んな街。わくわくしながら、乗車駅でビールを購入して、トロッコに乗り込む。

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トロッコが動き始めてすぐ、黄色く色付いた山とコバルトブルーの湖が見えてきた。そして、山が、紅葉していた。赤ではなく、黄色に。


チャーハンみたいな色だな


そう思いながら、クスッと笑ってしまった。この風景を語るのに、これ以上適切な言葉が全く出てこなかったのだ。
幼稚園児の頃から、わたしの思考は大して成長していないみたいだ。

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思い返せば、あの頃土曜日のお昼ご飯は父が作る中華料理であることが多かった。彼は妙に味噌ラーメンに凝っていたのだけれども、あの野菜だらけのラーメンをどうしても好きになれなかったわたしは、チャーハンが出てくる日を心待ちにしていた。
だから

お山が、チャーハンみたいだよ

は、わたしにとって精一杯の褒め言葉だったんだろう。毎日車窓からのぞく紅葉を見るのが楽しくてしょうがなかった。

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トンネルを抜けると、そこはあたり一面真っ黄色の山々。京都の紅葉のような艶やかさはないけれど、なんだか懐かしい山々が、そこには広がっていた。

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