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私の青春とauデザインプロジェクト

  auデザインプロジェクトのをことを、覚えている人はどのくらいいるのだろうか。
  2002年から行われたそのプロジェクトの全盛期は、ちょうど私の中・高生時代であった。斬新なデザインの携帯電話が次々と発表され、無骨なデザインの多かった他の携帯電話とは一線を画していたのを覚えている。機械のスペックそのものよりも、「かわいい」ことに価値を見出す女子高生だったわたしには、特に憧れの対象だった。

  実際に私が高校時代に使っていたのは、「neon」という機種だった。デザインは深澤直人氏による。二つ折りタイプの携帯電話で、白・水色・黒の3色展開。折りたたんだ状態だと小さな箱のような見た目で、当時多くの携帯電話についていた背面のサブディスプレイなどもない、シンプルな見た目だった。メールや電話の着信を知らせる際だけ、背面に赤いLEDライトが表示される仕組みで、暗闇の中ではその名の通り「ネオン」サインのように見えた。

  この携帯電話が発表された時、一目で「これが欲しい!」と思った。発売間もなく機種変更の手続きをしに行った。後になって知ったことだが、この機種は生産数が特に少なかったらしい。2006年2月に発売されたにも関わらず、同年3月には販売を終了している。どうりで、同じものを持っている人にはあまり会うことはなかった。

  初めて手にした時の高揚感は、今も記憶に新しい。こんな携帯電話を作ることができるのか、と感動すら覚えた。と同時に、わたしは同じauデザインプロジェクトによる、もう一つ別の携帯電話のことを思い出していた。

「apollo2」という携帯電話は、auデザインプロジェクトのコンセプトデザインとして発表されたものだった。二つ折りタイプのもので、背面にはカラフルなアルファベットが印字された、小さなはめ込み式のブロックが並んでいる。
  特筆すべきはその色合いだった。本体の色は淡いクリーム色で、ボタンのや背面のブロックに印字された文字も、カラフルながらレトロな色合いで統一されている。『2001年宇宙の旅』なんかの60−70年代SF映画の色味を彷彿とさせ、近未来の雰囲気を醸し出していた。

  東泉一郎氏によるデザインが発表されて以降、わたしはこの携帯電話の発売を心待ちにしていた。まだかまだかと待ち続けて、前述の通り「neon」を手にしたのである。
 両者は、似ているといえば似ていた。それに「neon」もとても素晴らしいデザインであり、優れた携帯電話だった。けれどあの、柔らかな色合いの携帯電話が形になることを、わたしは未だにどこかで待ち続けている。

 今、街を歩くと多くの人がiphoneを手にしている。わたし自身もそうだ。もうかれこれ10年、iphoneをその都度新しいモデルに変えながら使い続けている。
 先日も、4年程使っていたiphone6plusに不具合が出て、最新のiphone8に機種変更をしに行った。モデルは2世代新しくなり、ボディはプロダクトカラーのレッドになった。けれど、なんというか、それだけだった。
 データはiCloudに同期しているので、先のものに設定していた壁紙からアプリのアイコンの散らかり具合まで、そっくり同じ。機能は確かに更新させているのだろうけど、目に見えて実感できる部分といえばカメラの性能くらい。所詮iPhoneはiPhoneなのだ。

 機種を変えても、変える前と何一つ変わらず使い続けることができる。これは確かに、便利なのだろう。けれどどこかで、携帯電話会社の新作が出る度に、ワクワクしてパンフレットをめくった頃のような、新しいものに出会う高揚感を忘れられずにいる。
「ガラパゴス」でもいいじゃないか。プランをごちゃごちゃややこしくするよりも、ワクワクするものが出てきたらいいのに。
 手に入れた高揚感や、一緒に過ごした日々のこと、毎日の片隅に寄り添った「お気に入り」のことをいつか懐かしく思い出せるような、ガジェットが。

「INFOBAR xv」が今秋発売になるというニュースを聞きながら、そんな事を考えた。

「スキ」してくれた貴方には向こう1日の幸せを約束します!