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『協働ラボ』リレーnote⑥ パートナーから(ブランディング担当:八木田一世さん)

20年くらい前には、ブランドといえばファッションのことで、ブランディングは大企業が行うもの、という考えが一般的でした。

 しかし、最近では色々な業界で「ブランディングって大事だよね」という声が聞こえるようになり、Amazonで調べればざっと1000冊くらいは関連本が見つかる、という変化が起きています。

 

なぜそうなったのか。幾つか理由はありますが、最も大きなことは誰もがスマホを持ち、高速インターネットの恩恵を受けながら、情報のやりとりが出来るようになったことです。

 

昔は社会に対して何か情報を発信しようとすれば、新聞や広告などのメディアを使わなければならず、それなりの費用がかかりました。しかし、いまや誰もが指先ひとつで世界に向けて情報が発信できる時代です。

 

その結果、僕たちは毎日3,000〜5,000くらいの広告メッセージに囲まれる生活を送っています。「え?そんなに?」と思った方が多いのは当然です。なぜなら、その98%くらいを僕らは無視して過ごしているからです。

見ているのに見ていない、耳にはしているが覚えてない。情報がより届けやすくなった分、情報はより伝わりにくいものになりました。

 では、伝わる情報とそうでない情報の差は何なのか。僕はその差は、相手がその情報を「自分ごと化」してくれるかどうか、にあると考えています。

人間の脳とは面白いもので、たとえ雑踏の中にいても誰かが自分の名前を呼ぶと、多少のノイズであればかき分けて聞こえてきます。(これを認知心理学ではカクテルパーティ効果と呼びます。) 

自分に関係ないことは脳が自動的に無視をする反面、少しでも自分に関係あることならば、優先的にスイッチが入ってメッセージが届く。言い換えれば、自分に関係あると思ってもらえた企業や商品のメッセージは、情報の波をかきわけて届くのです。だからこそ、そんな関係性づくりのための方法論である、ブランドやブランディングの手法に、近年では注目が集まっているのです。

 では、どうすればその手法が身につけられるのか、が気になりますよね?

 ものすごく大きな括りで言うと、ブランディングでは以下の3つがポイントになります。

 

①   自分を知る

②   相手を知る

③   助け合う

“ブランド”とは“信頼”と言い換えることができるものです。ブランド化されている状態とは、そうでない関係性に比べて「この相手なら大丈夫」という信頼があること。それは、人と人との信頼関係とほぼ同じです。

 

それこそ、自分が愛着をもっているお店・企業・サービス・ブランドのことを思い浮かべる時、そこに感じる温かい気持ちや親近感は、きっと「仲良しの友人」のことを思い出す感じと似ているはずです。

そんなお互いにとって良い関係をつくるためには、まずは相手に自分を知ってもらうことが最初の一歩になります。 

しかし、いざ自己紹介を……となると意外と見えないのが自分自身のことです。そんなあやふやな状態では、良い自己紹介ができず、相手に自分を印象づけることもできません。だからこそ、ブランディングのために最初にすべきことは、①の「自分を知ること」になるのです。


「自分は何が好きで、何が得意で、どんな活動をしていて、それはなぜなのか。また、将来的に何をしたいと考えているのか。」こういう質問への答えは、意外と口にしてみようとすると、すんなり言葉にならないものです。まず自分を知るために、こういった質問への答えを書き出してみましょう。

その準備ができたら、次のステップは②の「相手を知ること」です。「自分を知ってもらいたい!」とはやる気持ちもわかりますが・・・まずは自分の好きや主張だけを一方的に押しつけず、しっかりと相手の話を聞いて対話を行い、どうやったら相手のために自分が役立てるか、を考えてみましょう。


情報が多い現代社会で「とにかく俺の話を聞いてくれ」という態度は無視されます。でも、「あなたのよりよい未来のために、僕ならばこんなことができます」という話であれば、耳を傾けてもらえるチャンスは増えます。それ以上に、相手とのよい関係性もつくりやすくなるでしょう。

そして最後の「助け合う」とは、自分だけで何もかもを行おうとしないことです。先程話をしたように、ブランディングを通じて良い関係性ができている場合、時には相手に自分が助けられることもあります。

自分ひとりではできないことも、誰か他の人の助けがあれば実現します。例えばNPOなら、1つの事業所でできないことも、2つの事業所で協力すればより多くの人を助けられるかもしれませんし、予想外の成果をそこから生み出すことも十分あり得ます。全部を自分で抱え込まずに、周囲に上手に助けを求めていくことも、選択肢にいれておきましょう。

余談になりますが・・英語圏ではよく「May I Help You?」「Do You Need Help?」といったように、「HELP」という言葉が会話の中で日常的に出てきます。反面、日本だと「人に迷惑をかけてはいけない」と育てられるせいか、つい誰かを頼ることに遠慮しがちです。しかし、大きな夢を叶えようとする時や挑戦のハードルが高い時ほど、ひとりの力でできることは限られています。

 

「どうやるのか」の視点で小さく終わってしまうよりも、「誰とやるのか」の視点こそ、21世紀のブランディングには大切な考え方。まさに「協業」こそが、ブランドをつくるブランディングには大切な要素だ、ということがこのnoteで伝われば嬉しいです。

文責:八木田一世

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