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第2章 01 まちづくりとは

そもそも、まちづくりって

 さて、そろそろ本題に入りたいと思います。何度か登場した「まちづくり」という言葉ですが、サルトが取り組んでいる仕事は、大雑把に言うと「まちづくり」と呼ばれています。

 「まちづくり」という言葉は、結構いろんな分野で使われて、防災のまちづくり、福祉のまちづくり、景観のまちづくりなどなど。余りにも範囲が広い言葉ですが、サルトが主に取り組んでいるのは「元気のない地域を元気にする」という分野での「まちづくり」です。そのために個別の建物や施設を扱うのではなく、まちというエリアの価値を捉えて仕事をしています。

 サルトも色んな地域で関わってきたリノベーションまちづくり、リノベーションも色んな捉え方がありますが、ここで言う「まちづくり」も「元気のない地域を元気にする」分野のまちづくりです。政府が掲げる「地方創生」も、同じ分野のまちづくりの1つだと思います。

 その他にも政府が取り組んできた言葉だと、「中心市街地活性化」「地域再生」「都市再生」というものもあります。国土交通省は制度名を「まちづくり交付金」としていたこともありました。

 いろいろありますが、「元気のない地域を元気にする」という分野において、「まちづくり」とはどのようなことを意味しているのか。これをしっかりと考える必要があると思います。何事においても言葉の定義は大切。何を意味するのかということによって、取り組みの内容は変わりますし、どのような価値判断をすべきなのかということも変わってきます。

 「まちづくり」とは何なのか。まちづくりに取り組むべき状況とその原因を探り、まちづくりを定義してみようと思います。

 まずは「まちづくり」というと良く聞く、または色んな地域で取り組んでいる事業を取り上げて、その意味を考えます。

まちづくりの誤解

 まちづくりというと、まずよく出てくるのが合意形成。しかし合意形成をしても、まちが変わらなかったらまちづくりになりません。何度も何度も会議をして、お偉いさんの合意形成をしたって、まちが動かなかったらまちづくりとは言えません。

 それからワークショップ。これも各所でたくさん開催されている。ポストイットを使って、取り組んでみたい事業のアイディアを出したり、自分たちのまちに欲しいお店や施設をたくさんあげたり。それを整理して、なんとなく充実した気分になってみんなが気持ちよくなっても、まちが変わらなければ意味がありません。

 たくさんの市民が参加しないといけないというのもよく聞きます。確かに自立した市民による市民自治はとても大切だと思うし、あるべき姿だと思っています。もちろんそれは否定しません。でもまちづくりを考える時、なぜか多くの市民が参加しないといけないような気になりますよね。そうやって多くの市民が関わり考えて行動した結果、まちは変わらない。それでは意味がないのです。

 みんなの意見を聞くというのも同じ。アンケートをとるのも同じ。いろんな意見が出ても結局まちが変わらなかったらまちづくりになりません。

 それからみんなで仲良くしようとすること。もっというと波風立てないことが良いような雰囲気。もちろん仲が良いことは悪いことではありません。わざわざ嫌われる必要も無いと思います。でも、仲良くやることを前提にして、嫌なことを言えなくて、しなければならないことから目を背けている。だからまちは変わらないというのが、これまで長年この分野で仕事をしてきて思うところです。

対処療法は熱しやすく冷めやすい

 それから、元気の無いまちを元気にしていこうっていう中で、まちづくりというと思い浮かぶ事業があります。もうすでに遠い過去の記憶・遺産のような感じがしますが、街バル、街コン、まちゼミ、100円商店街、ポスター展、ゆるきゃら、B級グルメ、観光動画、マーケット・マルシェ、リノベーション、移住定住などなど。

 これらにどれだけ税金が注ぎ込まれたか。

 もちろんですが、今挙げたそれぞれの取り組みを最初に生み出した人はとても尊敬します。その地域の課題を解決するために、または自分が暮らしたいまちを作るために、または自分のしたいこと等を一生懸命考えて、何らかの仮説や未来のビジョンをもって事業を組み立てたであろうからです。でも問題は、何も考えずに、まちづくり界の狂犬こと木下斉が言う「劣化コピー」が蔓延することです。建前はまちづくりとか、地域の活性化とか、観光で地域を盛り上げると言い、補助金等の税金を使って流行っている何かにすがる人たち。

 そしてそのような地域では、何かをやって上手くいかないと、次の流行っている事業に飛びつく。地域が良くなっていく感じがしないのです。

 これらの事業を含め、今後も現れるであろう流行りの取り組みはツールであって本質ではないわけで、答えが単純ではない問題を解決する時に、本質に迫らずにツールから選んでも上手く訳がない。

 例えば観光動画、たくさんの地方で税金が投入されて作られましたが、本当に地域を再生する継続的な観光につながったのか。全国各地で作られ続けているゆるキャラは下火にはなってきたけれど、本当にまちの活性化につながったのか。マルシェやマーケット等のイベントが、これまた相当の地域で始まっているけれど、何を解決するために、どのような成果やどんな未来を目指して開催しているのか。

 リノベーションも今や空き家・空き店舗・空きビル対策で、全国各地、多くの場所で税金を投入しながら取り組まれていますが、そもそも、空き家・空き店舗・空きビルにお店や施設を入れたからってまちが変わるのか。

 いろんなところで、大量の税金を投入しながらまちづくりをしているけれど、一向に良くなる感じがしない。

 なぜでしょうか。

 次回は、そのなぜに答えていきたいと思います。

この本全体の目次

 そういえば、この本の全体像を示していなかったので、以下に示しておきます!「はじめに」から始まり、第8章新しい都市計画(序論)まで、全10万字程度となっています。
 章や項目のタイトルも多少変更していくかもしれませんが、毎週水曜更新でアップしていく予定です。お時間がある時に読んでもらえたら嬉しいです。

はじめに

第1章 21世紀の都市計画家
・自己紹介
・枚方宿くらわんか五六市
・ダーコラボラトリLLP
・株式会社ご近所
・一般社団法人リイド
・株式会社サルッガラボ
・ビーローカルパートナーズ
・STAY local
・株式会社THE MARKET
・ポップベイパートナーズ

第2章 まちづくりとは
・そもそも、まちづくりって?
・まちづくりの誤解
・対処療法は熱しやすく冷めやすい
・まちが衰退する原因
・変遷するまちの役割
・まちには兆しがある
・未来は今ある真実から生まれる
・オススメの作法
・まちづくりとは何か

第3章 これまでとこれから
・未曾有の人口縮退
・みんなという幻想が成立した時代
・個性、能力、才能を活かす時代へ
・人口が減る時代を楽しく生きる法則

第4章 都市計画とは
・都市計画は時代に合わせた処方箋
・21世紀の都市の在り方
・都市の多様性
・しなやかで反脆い都市へ
・多様性を担保し生み出す
・都市経営課題とリソースの問題
・都市計画の主導権は民間へ
・限られたリソースを最大限活かす
・時と共に最適化する仕組み「アジャイル開発」
・人にフォーカス 未来のお客さんを想定する

第5章 少数派がまちを変える
・まちが衰退する原因の裏側で
・身銭を切ってまちを面白がる少数派
・少数派から多数派へ
・「絞って愛情深く」でファンを増やす
・ファンがファンを増やす時代
・ゴールはみんなのために

第6章 地域に新しいチャレンジを創出する
・定期マーケットでまちに革新を起こす
・まちの期待値を高める
・まちの新陳代謝昨日を活性化させる
・定期マーケット10か条
・定期マーケットはプラットフォーム
・【コラム:衰退プロセスと根源治療】

第7章 ご近所を素敵に変えよう
・ご近所のイメージ
・天王寺まで自転車で10分
・バイローカルとは?
・良き商いを守り育てる
・「どっぷり昭和町」
・バイローカルの日
・365日バイローカルマップ
・期待されるまち、選ばれるまちへ
・THE MARKETのおいしい革命
・ご近所の変化、現在進行形のTHE MARKET

第8章 新しい都市計画(序論)
・日常の自己肯定感の低い日本
・大阪の人は京都が嫌い、京都の人は大阪が嫌い
・試行錯誤する上での羅針盤
・建てないことが正義へ
・複合・混合・多様へ
・自分・少数派へ
・行動しながら変化へ
・しなやか・反脆さへ
・小さい(身銭を切る)へ
・内を意識へ
・目に見えないものへ
・未来ありき(playful Driven)へ
・新しい都市計画



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