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A4のマタニティーマーク

先日、婦人科に行った。

40歳を過ぎた頃から、ホルモンバランスが崩れているのか、体調やメンタルが不安定になることがあった。
婦人科で処方してもらった漢方薬が体にあったので、定期的に婦人科に通っている。

とはいえ最近は調子がいいので、飲み忘れるくらいだけど。

そう、飲まないのではなくて、飲み忘れるくらいがいい。

けど、お守りは持っておきたいので、定期的にお薬を処方してもらっている。

私が通う婦人科は地元でも有名な産婦人科なので、待合室にはたくさんの妊婦さん。

みんな、マタニティーマークをカバンにつけている。

懐かしいなあ。と私は思う。

そして、思い出す。
私のつけていた、A4サイズのマタニティーマークのことを。

マタニティーマークを作ってみた


マタニティーマークは妊娠すると産婦人科で母子手帳と一緒にもらえるやつだ。
自治体によっては違うかもしれないけど、調べるのが面倒なのでその辺の説明は割愛する。

ピンクのハートの中にお母さんと赤ちゃんのイラストがデザインされたマークを私は産婦人科でもらった。

自分が妊娠していることを周囲にお知らせするためのマークだ。

長男の妊娠中は、産婦人科でもらった一般的なマタニティマークをつけていた。
片手におさまるくらいの、可愛いビニール製のやつ。

しかし、次男の妊娠中はそのサイズでは飽き足らず、私はでかいのをつけることにした。

次男を妊娠していた時か、その前か。
記憶は定かではないが、大きめのマタニティマークをつけている人を見たのがきっけだ。
片側一車線の道路の反対側からでもわかる大きさのマタニティマークを、その人はつけていた。

「でかいのもあるんだな」

と私は思った。

次男を妊娠している時、私もあの大きなマタニティマークをつけたい!!
という衝動に駆られた。

検索してみたけれど、特別に大きなマタニティーマークを手に入れる方法はよくわからなかった。
しかし、あのマークをプリントアウトすることはできそうだ。

では、プリントアウトして自分で作ろう。
それが手っ取り早そうだ。

そう考えた私は、すぐにマタニティーマークをダウンロードした。

そして、カラーでA4サイズに印刷。
100円均一に行き、A4サイズのラミネートフィルムとカードリングを購入。

マタニティーマークをちょきちょきと切り、A4のラミネートフィルムでラミネートし、さらにまあるく切った。

パンチで穴を空け、カードリングをつければ、ほら!!
A4サイズのマタニティーマークのできあがり。

A4サイズはだいぶデカかった。
ちょっとやりすぎ感はあったが、満足いく出来上がりだった。


マタニティーマークをつけてみた


私はそのあまりにでかいマタニティーマークをカバンにつけた。

歩く時は内側にして、マタニティーマークが見えないようにした。

欲しいと思い、お手製で作ったA4サイズのマタニティーマークだったが、堂々とつけて、街を練り歩く勇気は私にはなかった。

妊娠する前は自転車通勤だったが、妊娠中はバス通勤にした。

つわりの時期の公共交通機関での通勤ほど辛いものはない。
匂いは辛いし、立っているのも辛い。

バスから降りるたびに嘔吐するぐらいに辛かった。

しかし、つわりは病気じゃない、と思っていたし、事実病気じゃない。
もちろん、ひどくなれば病気である。

でも、つわりぐらい我慢して当然。
当時はまだ、そんな認識だった。

私は優先席や普通の席に座ると、隠しておいたA4サイズのマタニティマークをお腹の上にどんと置く。

チラチラと視線を感じるが、そんなことは気にしない。
多少、変なヤツと思われた方が、絡まれなくていい。

ある時、いつものようにバスに座っていたらどこからかほのかな柑橘系の匂いがした。
香水とかそういう系ではない。
リアルなやつ。

どこかでみかんを食べているやつがいる。

匂いの出所を確認すると、目の前の席のおばさんからだった。
そのおばさんは、座席に座り、袋から取り出したみかんの皮をむく。
皮を剥がれたみかんは、そのままおばさんの口の中に放り込まれる。

そしておばさんは、むしゃむしゃとみかんを美味しそうに頬張っている。
はずだ。

私は後ろの席なので、当然おばさんの顔は見えない。
しかし、次から次にみかんの皮を剥き、口に入れている様子は後ろから見ることができた。

次から次に食べているんだ。
さぞかし、うまいみかんなんだろう。
美味しそうに食べているに違いない。

誰も「車内でみかんを食べるのはご遠慮ください」なんて言ったりしない。

堂々としすぎていて、あまりにも当たり前のような気がする。
そもそも、車内で飲食禁止というルールがあったかどうかすら、よくわからないが。

それにしたって、みかんの素晴らしいこと!!

収穫したそのままの姿で、持ち運ぶことができる。
そして、手で皮が剥ける。
さらには、果汁がこぼれないように、個包装までされている。

洗わずに、手も汚さずに、いつでも食べれる果物が他にあるだろうか?!

私はみかんという素晴らしき果物に、感動すら覚えた。

こんなに合理的な果物は、きっと他にはない。
私は今後、みかん推しでいく。

いや、あるね。
バナナもですぅ。

話が大きく逸れた気がしないでもない。

まあ、みかんおばさんが堂々とみかんを食べれたように、私は堂々とマタニティーマークをつけていたおかげで、ゆっくりと席に座ることができた。

そして、席が空いていない時も、たくさんの方々に席を譲ってもらうことができた。

ありがたすぎる。
こんなワガママ妊婦にも、世間は優しかった。


大きいマタニティマークをつけた理由


私に触れると火傷するぜ

と言わんばかりのマタニティーマークをつけた私に、誰も席を譲れなんて言ってこなかった。

長男を妊娠していた頃は、時間に余裕があった。

余裕のある時間に出かけ、移動距離が歩ける範囲であれば、公共交通機関は使わずゆっくりと歩いた。
夫に送ってもらったり、迎えに来てもらったりもして、バタバタと慌ただしい生活を避けることができた。

しかし、次男を妊娠している時は、当然長男の世話もある。
夫も仕事があるし、そうそう自分の都合だけを優先できなかった。

多少なりとも自分のことは犠牲にして生活を送らなければならない。

しかしバスくらい、ちゃんと席に座りたい。
つわりはきついし、お腹も張るし。

でも、妊娠は病気じゃないし、他にも座席を必要としてる人だっているかもしれない。
そう頭では考えたりもするが、座れるもんなら座りたい。

優しくしてください。
配慮してください。

とアピールするマークに抵抗はあるものの、それを活用するしかない。

私にとってマタニティーマークは声にならない声だった。

明らかに妊娠中とわかる大きさのお腹であれば、マークなんて必要ないかもしれない。
けれども、妊娠初期や中期はそうもいかない。

「妊娠してますか?」という質問に
「太ってるだけですけど?!」と回答が返ってくるぐらいの腹の出方しかしていない。

今の私の食後の腹の出方となんら変わりはない。
むしろ、今の方が腹が出ているのではなかろうか。

ということは、妊娠を見た目だけで判断するのは難しいと考えます。
そうですよ。難しいですよ。
私は妊娠してませんよ。

たとえ見た目に妊娠がわかっていても、場合によっては、優先席に座っているだけで文句を言われたり、「譲りなさい」と言われることもあるらしい。
実際に言われたというのも、よく聞く話だ。

世知辛い世の中だ。

とはいえ、譲りなさいという人にもなにか事情があるのかもしれないけれど。

私は、妊娠中とても幸せだった。
妊娠は喜ばしいことだし、嬉しかった。
大変なこともあるけど、お腹に赤ちゃんがいると思うだけでがんばれた。

なんら後ろめたいことはない。
堂々と座ってやる。

と、A4サイズのマタニティマークをつけた。

知人に言わせると、お前になんか誰も文句を言わねーよと言われそうだが、そんなことはない。
そんなに気の強そうな感じで外を歩いてなんかいません。

・・・多分。

でっかいマタニティーマークをつけていた私は、ちっちゃいマタニティマークを見ると、がんばれと心の中で声をかける。

ドアの前でベビーカーを押してる人を見ると、ドアを開けてあげたい。
赤ちゃんを抱っこしてたり、ちっちゃい子を連れてるお母さんやお父さんを見ると、どうぞどうぞって先を譲りたい。
大変だろうなって思うから。

でも、それって、経験したからわかること。
経験してないことを理解するのは難しい。

私も高齢者の気持ちを理解するのは、正直難しい。
ヘルプマークの方を見かけても、どう配慮したらいいかわからない。

想像することと、理解することは近いようで大きな隔たりがある。
理解できない私に手助けできることなんて、ないんじゃないかと思ったりもする。

けれど、想像するだけで、
その想像から相手の気持ちを慮るだけで、
そして少しだけでも行動することで、
優しい社会だと言うことができる世の中だといいなと思う。


話が大きくなってきたが、みんなみんな、元気な赤ちゃんに会えますように。

そして生まれてくる赤ちゃんたちに優しい世界が、未来が待っていますように。



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