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#43 ドイツ留学、ふりだしから始めよう

8月も残り1週間を切り、9月になれば正式に、ダルムシュタット工科大学の研究員となり、勤務がスタートします。今日は後から振り返るためにも、勤務開始を目前にした気持ちをまとめておこうと思います。



迫力のワークショップ

先日、研究室全体のワークショップに出席しました。大規模研究室なので、対面で参加した約30人に加えて、オンラインでの参加者もいて、「活気がある」を超えて「迫力がある」会でした。

1992年に入学した大学での専攻は教育学、その後進んだ大学院では英語教育を専攻したので、僕はいわゆる「完全文系」出身者です。47歳で理系の学問を志して大学院入学、現在50歳で AI 分野の博士課程へ来ましたが、理系へ移ってからたかだか3年です。大学4年間を理学部や工学部で過ごした人たちと比べると、数学やプログラミングの素養は全く足りていません。

今年3月に修了した立教大学の人工知能科学研究科では、研究科初の海外博士課程進学者ということで、学部生向けの授業で話したり、研究科主催のセミナーで講演させていただいたりしました。しかし研究の質そのものでは、多くの仲間たちのはるか後方にいたと認識しています。

ひさしぶりの「ふりだし」

物事をほぼゼロから始める「ふりだし」に立つ経験は、年齢とともに減ってきます。高校3年生で先輩を気取っていても、大学に入学すれば次の「ふりだし」、就職して新入社員になればまた次の「ふりだし」。でも、その後の人生では、「ふりだし」に戻る経験はあまりありませんでした。

しかし先日のワークショップでは、確実に僕が「全研究員の最後尾」にいることがはっきり分かりました。つまり研究者(の卵)として完全な「ふりだし」です。
 研究室の教授は業界では超有名人で、アメリカに本部のある国際学会の会長を務めています。加えて、日本では准教授にあたるポジションの先生方が3人。
 その次に、博士号取得済でまだ教授職にはついていないポスドク研究員(Postdoctoral Researcher)が10人。さらにその次に、日本で言う博士後期課程院生(Doctoral Researcher)が約40人!「3年前に理系に転向して、AI の勉強は2年間しただけです……」という僕はお客さん状態です。


部屋をもらった

先の投稿「#6 お金がないから、留学します」でも説明しましたが、ドイツでは博士課程院生は大学スタッフとして雇用されます。大学へ毎日「通勤」して給料をもらい、休む時は「有給休暇」を使います。そして会社員と同じく自分のオフィスと机、PCなどの備品が与えられます。今後変わる可能性もありますが、スタート時は同じプロジェクトに属する中国からの研究員と同室になりました。ドイツに来る前からメールでやりとりをしていた相手だったので、少しホッとしました。

何より気に入ったのは、オフィスが入っている建物は古いので天井が高いことと、緑豊かな州立公園に面していることです。朝通勤する時も大学のキャンパス内を通らずに、公園から直接建物に入ることができます。建物の外観と、中の様子をちょっとだけお見せします。

この建物の2階(1階は半地下になっている)の部屋になりました
芝生の部分は大学ではなく州立公園なので、市民の憩いの場所になっています
同室の研究員は持ち物少なめ
僕は今はノートパソコンだけですが、いろいろ運び込む予定

いつかあの帽子を

そんなオフィスの廊下には、過去に同じ研究室から無事博士号(PhD)を取得した先輩たちの写真が掲げられています。ドイツには面白い習慣があり、新しく誕生した博士に敬意を表して、同僚研究者が帽子を手作りします。
 その帽子は、普通に米国などで見るような黒くて四角い帽子ではなく、その人の特徴や性格、好きなものをうまく表すような装飾を施した「仮装帽子」なのです。そして、その装飾の一つ一つが何を意味するのかを仲間の前で解説するのが「最終試験」などと言われます。

“German PhD hat” で Google 画像検索した結果
「素敵な博士帽」の作り方を大まじめに解説したページなどもある

立教では偉そうに講演などさせてもらいましたが、ここでもう一度「ふりだし」に戻ります。着実に積み上げて、いつの日かあの帽子をもらえる日のために、日々進みます。でも僕の場合、どんな帽子になるのだろうか……

今日もお読みくださって、ありがとうございました🎩
(2023年8月25日)


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