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「スランプ」について

スランプです
ついこの間まで調子良かったんです
スランプは突然訪れます
みなさんも気をつけてください
スランプはあなたのすぐ後ろまで来ていますよ

そこで
わたしの短い人生の中で最大のスランプを紹介しようと思います
些細なことではありますが
お付き合いください

それは大学の部活動で起こりました
大学に入学したらまた楽器をやろうと決めていたので
部活動の勧誘がスタートしてすぐジャズ部に足を運びました
そこで出会ったのがわたしの崇拝する先輩
イージー先輩です
彼はわたしが出会ったトランペット奏者(身近な)の中でダントツで上手く
ウォーミングアップもそこそこに
ハイトーンを軽やかに奏でる化け物でした
ソロは耳に心地よく力まず
良い意味で力の抜けた演奏は
わたしの憧れでした
そんな憧れが目の前にいるからこそ
スランプは訪れたのです
そもそもコンクールにも出たことない
楽しいという理由だけでテキトーに吹いてきたので
基礎は弱々
アンプシェアぶれぶれ
腹筋緩々
ハイトーンなんて夢のまた夢でした
しかもパートは先輩とわたしの2人
できることなら先輩を陰ながら支えたいという思いとは裏腹に
音は出なくなっていく一方でした
今まで自分の音が嫌いになったことはありません
むしろ個性があって好きでした
大きくて華やか
だけど少しガサツな
金色のトランペットにあった音
しかしこの音が
先輩の繊細な音を掻き消してしまうと思うと
自然と息が楽器に入ることを拒みました
そんな状態でも部活動は続きます
正直先輩の隣で吹く自信がなくて
部活休もうかなと何度も思いました
でも自分は小学生の頃から部活一筋で
高校も部活動で決めました
なのでここで部活に行かなかったら
不登校になると思い
重い腰を上げ
部活へ向かう日々でした

スランプから脱却した瞬間は今でも覚えています
イージー先輩はコンサートマスターで
合奏練習の指揮をとっていました
その日はたまたま欠席で
当時の学責が代わりに指揮をとっていました
本番が近くなり
少し緊張した空気の中
曲も仕上げに入っており
いつも通り頭から一曲ずつ通していました
先輩が欠席だったのでわたしは1人でトランペットを吹いていました
相変わらず音は違うし
ハイトーンは出ないしで
合奏の足を引っ張っているのは明白です
そんななか学責に言われたんです

「もっと音出していいよ」

学責は合奏のバランスをみて言っただけなのに
わたしには「許可が降りた」ように感じました
今まで
周りの邪魔をしないように
ミスしないように
先輩が1番輝くようにと
勝手にブレーキをかけ
勝手に自分の音が嫌いになっていました
でも「許可が降りた」
自由になったと思いました
ずっと誰かから許して欲しかった
自分の音を吹きたかった
誰かに合わせるのではなく
たとえ歪でも奏でたかった
そう気づいたと同時に
先輩がいないなんて皮肉なものだなと思ってしまったことを今でも忘れられません

悲しいことに
先輩と正式に同じステージで吹いたのはこれが最初で最後でした
ようやくスランプから脱却し
これから楽しく演奏できそうだと思っていたのですごく悲しかったです
しかし幸か不幸か
友人と2人でコンサートマスターを引き継ぐことになりました
スターバックスで行われた引き継ぎの話し合いでは
今までのコンマスの方が書いたノートを渡されました
その場でもいろいろお話しを伺いましたが
後日家でそのノートを読み返すと
イージー先輩の書いた部分がありました
そこには
「もっと後輩に積極的に声を掛ければよかった」
「コロナ禍でも活動できるようにオンラインを使うなど工夫できた」
と先輩の部活への後悔が書いてありました
コロナ禍の影響で
先輩自身まともに活動できた期間は短く
それでも部活を存続させるにはどうしたらいいか悩んでいたのかと思うと
失礼ながら嬉しく思いました
正直な話し
先輩とどう接していいか分からず
なんとなく浅い関わりになっていたので
初めて心の内を知れた気がしました
なのでわたしは
この部活でできることが少ない(主に技術面)ということもありますが
積極的に後輩と関わろうと心に決めました
これが後に
後輩大好きおばさんに転じることは
また別のお話です

今でも先輩に上手くなった自分を見てほしいと思っている反面
上手く言葉では言い表せない申し訳なさがあります
わたし達の引退前最後のリサイタルにも結局呼べずじまいです
それでもこの部活が好きなので
そう安安と引退しようと思っていません

もう一度
今度こそ最後のリサイタルで
この勇姿を見てもらうまでは

p.s.
明日同じパートの可愛い後輩2人と呑みに行きます
やったね👍

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