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道後温泉物語

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2002年頃の愛媛は松山、道後温泉。元花街にひなびたコンパニオン派遣事務所があった。18歳の主人公は事務所から派遣されて、地元の若者に混じってケンブンの宴会場で働く。ある日、人手… もっと読む
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道後温泉物語 4話  阿婆擦れ

道後温泉物語 4話 阿婆擦れ

道後温泉の裏には花街がある。温泉本館の側道をゆるゆる登っていくと、左手に上人坂なる路が現れる。さらに登ると、一遍上人の宝厳寺に辿り着く。上人坂は昭和の時代にはネオン坂と呼ばれバーやパブが軒を連ねていた。私もここの【バー姉妹】といううらぶれた看板と、宝厳寺の大銀杏のおかしな取り合わせを、上人坂下から見上げたスケッチとして描いた覚えがある。
それくらい、かつての道後は、俗世間と聖なるものが分け隔てな

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道後温泉物語 3話 ツーフィンガー

道後温泉物語 3話 ツーフィンガー

リーダーの声が響く「いらっしゃいませ!」
続いて他の者が声を揃えて言う「いらっしゃいませ!!!」
料飲部のスタッフが勢揃いで、広間に等間隔に立ち、お客様を出迎える。お辞儀の角度は90度。頭を下げている時間はたっぷり10秒。この仰々しいお出迎えを見たお客様に自分は王様か、姫様か、と感じてもらえればパーティーの間の気分は上々…。
我々給仕人は待機するときは右手を左手で軽くにぎる。これは、「利き手を抑え

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道後温泉物語 2話 冷静と情熱のあいだに

道後温泉物語 2話 冷静と情熱のあいだに

道後商店街の黄ばんだアーケードを抜け、農協の脇の小路に入る。澄んだ水が流れる側溝沿いに歩くと、左手に巨大な四角い建造物が見えてくる。建物の手前で、バイトリーダーのタケウチさん(推定20歳)がくるりと私の方を振り向いた。日本人形みたいな顔立ちだ。やたらと目の上が青く唇が紅い。「新人さんこれが【ケンブン】、今日の派遣先よ」ケンブンってなんのことや?と思いつつ、ついていく。通用口の脇にでっかく【愛媛県民

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道後温泉物語 1話 口紅

道後温泉物語 1話 口紅

10代の終わり、桜が散る季節だった。プータローになった私は、四国は道後温泉の、とある事務所に履歴書を持参して面接を受けていた。

黒い合皮が所々破れたソファーに、3人が向かい合って座る。
「あっこ、18歳、高卒か。就職せんかったん?」
明るい茶髪の30歳くらいの美女が、細い指に煙草をはさみながら、残りの指で履歴書のシワを伸ばし、こちらを見てきた。
高卒、という言葉にドキッとしつつ、そりゃそうだ当た

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