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映画『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』【レビュー&ちょっと考察】※ネタバレ有


2021年に公開された「死霊館ユニバース」の8作目、映画『死霊館 悪魔のせいなら、無罪』。裁判もからむストーリーがめちゃくちゃ好きなので、勢いでレビューと考察を少しだけ。
※ネタバレ有

【レビュー①】セリフより雄弁な表情

「アナベル人形などが保管されているうちの家に招待するよ」と言われて、「あら面白い」と余裕の表情だった弁護士が、次の裁判所のシーンで「死ぬほど怖いものを見た……」の表情をしているのがめちゃくちゃ好き。何があったのかを語らない、映像にしていないからこそ生まれる説得力がすごく良い……!
本作ではそんな演出が多く、おかげでストーリーのテンポが良くなったうえに、キャラクターのコミカルさもアップ。ホラーは日常の描写が平和であればある程、恐ろしい描写が際立つので、こういったコミカルさがとても素敵。

【レビュー②】現実と神秘の境界の曖昧さ


画像出典:映画「死霊館」シリーズ公式Facebook


裁判の場で、法律の前で「悪魔がいる」なんて言えない。という事に対して、「でも証言する時、みんな必ず聖書に誓わされる」というアンサーも好き。

欧米諸国では、聖書に手を置いて「嘘を吐かない」と神に誓わされます。これは裁判所が「神」の存在を肯定している証拠ではないでしょうか。

「神」がいるなら同じように「悪魔」は存在する。「悪魔」がいない、なんて言うほうが矛盾するのだ。

とウォーレン夫妻は主張します。こういった現代社会における「宗教」「神」の立場への言及好き。(裁判所が「神」を信じているのではなく、「人々の信仰心を利用して嘘を吐きにくくしている」だけ、とも言えるのですが……。「利用」している以上、裁判所もそうはっきりとは言いにくいのかもしれません)

現実と神秘、裁判と宗教……相反するもののようだけれど、紙一重で境界はあいまいです。こういった「悪魔を証明する裁判」はそれを象徴するような出来事ではないでしょうか。オカルト、ホラーものの裁判作品の面白さはここにあります。

【考察】裁判の結果

法律で裁けない存在に対して、裁判は陪審員はどう判断するのか?
本作の場合は「有罪」でした。これは「悪魔の存在」を認めない結果のように見えます。邦題でも「悪魔のせいなら、無罪」だと書かれています。しかし、処罰はたったの「5年」。死刑を求刑された事件で5年です。
これの意味するところは、
法律では「有罪」
信仰では「無罪」
ということではないでしょうか。
法律では悪魔を証明できず、悪魔を裁くことはできない。だから有罪。
しかし、法律を使う人々は「悪魔」と「神」の存在を信じる。よって5年という軽い罰。
これは、ほぼ「勝った」と言える結果ではないでしょうか。
「有罪、5年」という結果は、現代社会と神秘の境界・妥協点なのだと感じました。

まとめ


私は、社会と信仰の間で揺れ動く、「悪魔の裁判」を題材にしたこんな作品がめちゃくちゃ好きです。こういったオカルト裁判作品が好きなら映画『エミリー・ロズ』もぜひ!


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