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呼吸ということ

先月、子供が産まれてから、僕が連れ合いの代役でパンをを焼いています。

とてもとても難しいですが、おもしろいです。

これまでやってきて、豆腐づくりと通じるものを感じてきました。

それは、食べ物を作るのにあたって、他の生き物や自然の力との「呼吸」です。



呼吸というのはリズムだと思います。

自分がいて、他者がいる。
他者というのは、人である場合もあると思いますが、僕らの現場では、食材や火や水だったりします。

その他者とのリズムを合わせること。
それが呼吸を合わせるということだと思います。

豆腐を作る時に僕がやっているのは、そのことだけ、と言ってもいいかもしれません。
食材の力を一番引き出せるタイミングで手を差し伸べたり、何かしらのお手伝いをすること。

それは例えば、油揚げの生地が一番活性化するタイミングに合わせて、薪の火の力が一番活性化するようにくべてあげることだったりします。
例えば、大豆が水を吸って一番活性化する時に、ザルに上げてすり潰してあげることだったりします。



それは、パンでも同じだなぁと感じます。

パンは生きている酵母の働きによって膨らみ、味わいが豊かになります。
 
酵母が一番元気な状態で仕込めるように常に気にかけてお世話する。
生地が一番良く伸びたりくっついたりする場所や力の加え方を感じ取りながら成形する。
そして、発酵の状態が一番いいタイミングで成形し、焼く。

常に行っているのは、酵母や生地と呼吸を合わせること、だと感じます。



他者の呼吸を感じ取るために大切なことは、自分の呼吸にまず素直に従うことではないかと思います。

「息をする」という意味での呼吸も、自分の意思でしているわけではありません。
心臓も自分の意思で動かしているわけではありません。
自分が自分の体の所有者などというおこがましい考えを捨てて、体に生かされていることに感謝します。
そして、私の内側にいる何かが、どうしたいのか、どう感じているのか、そのことに素直に従っていることが、他者の呼吸を感じ取ることの第一歩ではないかと思います。



自分本位ではなくて、他者の呼吸に合わせて動くこと。
しかし、それを能動的に自律的にやる。
豆腐づくりにも、パン作りにも、他力と自力の要素が絶妙に詰め込まれています。

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