1月の米国CPIは上昇が加速。その要因を深堀り分析します。
2月13日22時半に発表された米国の消費者物価指数(CPI)は市場予想を上回る強い上昇となり、利下げ期待の後退と株安・債券安へとつながりました。
このnoteでは米国CPIの動向を深堀りして分析しました。
なぜ1月のCPIが強かったのか。マーケットの反応の背景。そして今後のインフレと金融政策の見通しについて解説しています。
米国CPI、コアCPIのトレンド
それでは、米国のCPIの動向をまとめていきましょう。
まず、CPI、コアCPIの結果と市場予想の比較は以下の通りです。
ヘッドラインとなるCPIは前月比+0.3%の増加となり、市場予想の+0.2%を上回りました。変動が激しい食品とエネルギーを除いたコアCPIも前月比で+0.4%となり、こちらも市場予想の+0.2%を上回っています。
CPIとコアCPIの前年比をグラフで表すと以下のようになります。
CPIもコアCPIも前年比は低下してきていますが、下がり方がだんだんと緩やかになっています。特にコアCPIの1月の前年比は+3.9%となり、この水準は12月から横ばいとなりました。
CPIとコアCPIが前月比でどのように変化したかもグラフで見てみましょう。
前月比で見るとCPIが上がってきていることがよくわかりますが、CPI、コアCPIともに前月比の水準が加速してきています。特にCPIの前月比は3か月連続での加速となりました。
財価格・サービス価格のトレンド
コアCPIはコア財CPI(モノの価格)とコアサービスCPI(サービス価格)に分けられます。コアCPIの内訳となるコア財CPIとコアサービスCPIのトレンドが以下の通りです。
CPIをモノの価格(財CPI)とサービスの価格(サービスCPI)に分けてトレンドを見ると、モノの価格は去年の半ばからずっと前月比マイナスが続いています。サプライチェーン混乱の終息やコンテナ運賃の下落がコア財CPIの低下につながっています。
また、半導体不足によって高くなっていた中古車価格(Used cars and trucks)も2023年からずっと下がってきており、2024年1月は前月比で▲3.4%の下落となっていました。
一方で、ここ数カ月はサービス価格の上昇が加速しています。
2024年1月はコアサービスCPIが前月比で+0.7%の上昇となり、コアCPIを押し上げる一番の要因となりました。
サービス価格を押し上げた要因を見ると、住居費(Shelter)や輸送サービス(Transportation services)、医療ケアサービス(Medical care services)の上昇が大きいです。
この中で、医療ケアサービスは1月の上昇幅が大きくなる傾向があるので、一過性の可能性があります。
CPI住居費はアメリカの住宅価格に1年程度遅れて動く傾向があります(下図参照)。アメリカの住宅価格の前年比は2022年半ばをピークに2023年半ばまで低下していたので、CPI住居費も今年の半ばぐらいまでは落ち着いてくる可能性が高いです。
上昇が加速したサービス価格の行方
住居費の上昇はこれから落ち着いてくる可能性が高いとはいえ、家賃を除いたベースで見てもサービス価格は上昇が加速しています。2024年1月の家賃を除くサービスCPIは前月比で+0.9%の上昇となり、2023年12月の前月比+0.2%から大きく加速しました。
この原因はアメリカの労働需給ひっ迫にあります。アメリカは失業率が低下しており、求人数はピークから下がってきたとはいえコロナ前と比べると非常に高い水準にあります。
労働需給のひっ迫により賃金が上昇し、それがサービス価格の上昇へとつながっています。平均時給も前年比はピークアウトしてきていますが、それでもいまだに前年比+4%以上の上昇が続いています。
求人数が時給の先行指標となり、平均時給がサービス価格の先行指標となります。サービス価格の上昇が落ち着くためには景気の鈍化か労働供給の増加により労働需給が緩和することが必要となります。今のところ求人数が高水準にあるので、サービス価格は落ちてきにくい状況です。
CPIの結果を受けてFRBはどう動くか?
マーケットでは、FRBが年内に利下げに動くことが期待されています。もともと3月のFOMCや5月のFOMCで利下げを予想している証券会社もいたんですが、1月のCPIの結果をうけて6月から利下げ開始に予想を変更したところが多かったです。
FRBが物価の基調判断に使っているのはCPIではなくコアPCEインフレ率です。CPIの方が発表されるタイミングが早いのでマーケットの注目度は高いんですが、FRBはCPIよりも調査対象が広いコアPCEインフレ率を政策判断の最重要指標として見ています。
コアCPIとコアPCEインフレ率の動向を比べたものが以下のグラフです。
コアPCEインフレ率では今回上昇が大きかった住居費のウェイトがCPIの半分以下となっているため、CPIほどの大きな上昇にはならないと思います。
ですが、トレンドとしてコアCPIとコアPCEインフレ率は同じように動くので、1月のコアPCEインフレ率もCPIと同様に上昇が加速する見込みです。
1月のコアPCEインフレ率は2月末に発表の予定なので、FRBはこの段階では物価が落ち着いてきたとは判断できないでしょう。つまり3月での利下げは可能性が非常に低いです。
FRBは今後の労働需給やサービス価格の動向を見ながら利下げのタイミングを検討することになりますが、利下げは早くても5月、おそらく6月からという感じになると思います。
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