私が、起業した時のこと(連載1) 広告ってどうやって作るの?

 私(佐藤)が起業したのは今から十数年前の六月だった。いつもは、そんなことを考えることはなかったのだけど、先日ちょっとしたことがきっかけで「ああ、そういえば六月だったな」と思い出したのだった。

 せっかくなので、少しでも記憶が残っているうちに起業した時の事を書いてみようと考えた。実際に手を動かしてみると、自分でもおどろくほど当時の風景を思い出して書き進めることができた。その原稿を、noteに公開してみたいと思う。

これから起業を考えている人や、仕事について考えている人、新しいライフスタイルを模索している人達に読んでいただき、何かを掴み取ってもらえたら幸い。

佐藤の起業日記(その1)

それは手探りの無鉄砲さから、はじまった。

 独立して学習塾を立ち上げた時の話。
 今から十数年前の六月、私は二十九歳で一ヶ月後に三十歳の誕生日を迎えようとしていた。夏の開校に向けて、物件の契約、開業の届け出、机や椅子の手配、掲示物、生徒に配布する資料、次から次へとやらなければいけない作業があったが「自分の手で作り上げる楽しさ」で疲れのようなものは感じなかった。 

 若かったし、体力もあったし、世間知らずの無鉄砲さも良い方向に背中を押してくれていた。「費用が足りなければ、頭を使って工夫しろ」と、何かの本で目にした一文を頭の中で繰り返しながら、できることは自分で全部やってやる、と鼻息も荒く日々の作業を続けていたのだった。
 注文したテキストや受験の資料が届き、それらを教室の本棚に並べると「学習塾っぽい」雰囲気になってきた。固定電話を契約し、業者からもらったカレンダーやポスターを壁に貼り、教室の入口に大きめの観葉植物を設置したところで気がついた。

「そうだ、生徒募集のチラシを作らなければいけない」

 本来ならば早い段階に準備を進めておくべき作業が、全く手付かずのままになっていたのだった。今まで勤めていた学習塾では、担当の部署が用意してくれたチラシを使用すればよかった。「今年のは、あまりかっこよくないね」とか「春のデザインの方が良かったよな」と、好き勝手なことを言っていればよかった。

 しかし、これからは自分で作らなければいけない。しかも、それまでに一度も作ったことがない「広告」を、数日で仕上げなければいけなくなったのだった。


シンプルな言葉で、書くことにしよう。

 当時はインターネットが普及していなかったので、生徒募集の広告といえば「新聞折込」が主流だった。まず最初にA4サイズの折込チラシを作ることに決めたものの、肝心の 作り方がわからない。何を参考にすればよいかもわからない。うかつだった。しかし、なんとか形にするしかない。自分が作らなければ、他に作ってくれる人はいないのだ。
 私は、パソコンのワープロソフトを使って生徒募集のチラシを作り始めた。 今まで見てきた学習塾のチラシを思い出しながら、なんとなくそれっぽいレイアウトを組むことから始めることにした。

 使える写真やイラストが用意できなかったから、自分で図形を組み合わせて幾何学模様を作ってみたところ「わりと良い感じ」と思えたので、それをメインのビジュアルにした。
 キャッチコピーは、学習塾のチラシで使われているような「夏は受験の天王山 さあ勝負の時!」のような「それっぽいフレーズ」にはしたくないと思っていたので、生徒を指導して考えてきたことをシンプルな言葉を使って書くことにした。

 深夜にパソコンに向かい一人で文章を書いていると、生徒の姿が浮かんできた。素直に課題をこなし、どんどん伸びていく生徒もいれば、なかなか思うように進まない生徒もいた。模試で順位を競い合う生徒もいたし、休み時間にモノマネをしてみんなを笑わせることに情熱を注ぐ生徒もいた。

こんな小さな文字を、読んでもらえるだろうか?

 そんな生徒達のことを思い出しながら文章を書いていると、A4の狭いスペースの中には収まり切れない文章量になってきた。

 費用の関係でA4片面のみの印刷にするつもりだったので、使用できるスペースには限りがある。「こんなに小さい文字を読んでもらえるだろうか?」と心配になりつつも、文字のサイズやレイアウトを試行錯誤していると、窓の外から鳥の鳴き声が聞こえてきた。朝になっていた。その2へ つづく


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