見出し画像

ならいごとの旅 in 台湾(1)薬草を学ぶ旅

アジアの農村で自然とともに暮らす知恵の聞き書きをしています。

前回記事では中国の発酵やお茶をテーマに書きましたが、多民族国家台湾の民俗文化も実に多様で面白いです。

原住民の暮らしと薬草

薬草王国台湾でも特に薬草を生産しているのが台東。
原住民族が多い東は在来種の宝庫だったりします。

こちらの薬草園では、有機認証を取得している農園で200種類の薬草を生産し、商品加工をしたり、体験教育をしたりしていますが、とくに印象的だったのが、薬草バイキング!

画像1

ここで提供されている薬草カタログが配られ、薬草を使ったフルコースが楽しめます。サラダから鍋、醤油やスパイス、コーヒー、紅茶、スイーツ。全てに薬草がちりばめられています。

醤油、ソース、スープの多様性がすごい!
ぜんぶ手作りで、しかもオーガニック。

受付時に配られるリーフレットには、それぞれの薬草の解説が書かれている。

画像2

もりもりに盛りつけられた薬草がずらりと並ぶテーブルは圧巻。

市場に売ってるショウガの品種の多様性がすごい。使い分けをどうしているのか、どういうときにどの品種が適しているのか、市場のおじさん、おばさんに話を聞くのもたのしい。

画像3

セデック族の村でも、野草料理をごちそうに。
家庭料理の中にも、いろんな香草が使われていました。

画像4

画像5

庭に植えられている香草の違いと使い方を聞き書きしているところ。

画像6

各家庭の庭に必ず植えられている樹豆。救荒作物なのだそう。

画像7

桃園集落のおばあちゃん。

画像8

龍葵(Solanum nigrum L.)イヌホオズキ
中国や台湾では、民間薬として使われているし、市場でも野菜として売ってる。

莧菜(Amaranthus inamoenus Willd.)ヒユ、ハゲイトウ
市場でよく見る、緑に赤い模様が生える野草。

「香椿xianchun」チャンチン

スパイスとして、スープに入っていたりします。
お茶にしてもおいしい。

画像9


シソ科の「仙草」
台湾の夜市にいくと必ずあるのが、「仙草」のジュースやデザート。
漢方っぽい独特の味がするのですが、慣れると病み付きになるかも?
実際に生えているところを見たいと思っていたのですが、初めて見ました。
初めて見た感想は、おお、やっぱりシソ科だなあという感じ。

画像10

白鳳菜 (Gynura formosana kitamura)
台湾特有種だそう。
アイスプラントみたいな食感でけっこういけます!
発見者はキタムラさんでしょうか。学名にお名前がついています。

赤道桜草 (Asystasia gangetica)
はじめてみる野草。生でもけっこううまい。
なぜか、別名が、日本枸杞というのだそうです。
でも、日本語で検索すると、chinese violetとしか書いてなくて園芸種として紹介されています。

藤三七 (Anredera cordifolia)
「川七」とも言うらしき薬草。
葉っぱはつるつるで、ツルムラサキみたいな食感。
でも、ちょっと苦い。

角菜 (Artemisia lactiflora wall)
ヨモギ菜。初めてみたのは、タイヤル族のおばあちゃんの市にて。
山で摘んで来て市で売ってるそうです。
日本のヨモギはindicaなので、属は同じだけど種が違う。
欧米ではマグワートと呼ばれる。
サラダにしても食べられる。

葉下紅(Emilia sonchifolia)
日本語では、ニガナ。キク科の植物。
緑なのに、なぜ葉下紅なのか?
尋ねてみたところ、時期が来ると葉が赤くなるのだそうです。
苦いし、いかにも漢方な味で、生では食べられたものではないです。

薬効が強すぎて、食べ過ぎると、逆にふらふらになります^^;
とくに生ではあまり食べ過ぎないほうがいいと思います。

他にも、台湾には植物や薬草について学べる場所がいろいろとあります。

ルカイ族の薬草パン工房

石板屋とよばれる石でできたルカイ族独特の集落にある薬草工房。
お父さんにガーデンを案内してもらいながら、いろんな植物を使った加工食の試食をさせてもらえます。野草を使ったパン以外にも、お茶や化粧品、そして調味料も面白いものがありました。屏東のルカイ族を訪ねる機会があればぜひに。

画像11

画像12

雾台神山佳人香草工坊
霧台村2鄰神山巷26-1號
+886 8 790 2214

中医学について学ぶなら中国医薬大學

中国語で「木を育てるには10年、人を育てるには100年。」という言い方があるそうです。1958年に台湾初の中国医学と西洋医学の両方を学べる大學として「中国医薬学院」が設立されました。2003年に「中国医薬大學」に名称変更。悠久の歴史をもつ漢方医の養成には100年のスパンで考えられているのですね。

中医学の博物館には、薬草園の他、生薬の解説や中医学の歴史について展示されていて、一般人でも見学できます。

画像13

画像14

40402 台中市北區學士路91號
http://www.cmu.edu.tw/

台湾大学の植物標本館がおもしろい

台湾大学には気軽にはいれるミュージアムがいくつかあって、民族学系だったり、農学系だったり。種子系もすごいのがあるんですが、割愛。植物標本室には、有用植物を活かした製品の展示や古い文献が保存されています。

画像15

学芸員の郭さんに葛から紙の作り方をきいているところ

画像16

国立台湾大学植物標本館
10617 台北市 羅斯福路四段一號植物標本館
+886 2 3366 2463 
tai2.ntu.edu.tw

生薬の店が軒を連ねる市場

観光地としても有名な龍山寺のとなりの路地を入ったところに並ぶ生薬のお店。清朝からつづく生薬街で、10軒あまりの店で100種類ほどの薬草をあつかっているそうです。
先日、月ヶ瀬村で染め物の原料として使われる「烏梅」の製法を見学させてもらったのですが、生薬としてつかわれる烏梅を確かめたくて探しに来ました。

画像17

画像18

青草巷 
108 台湾 台北市萬華區西昌街224巷

===

日本の昔のおうちにも、シャエンバ、ヤシキリン、イグネなどと呼ばれる食べられる樹木や作物を植えた菜園がありました。山には焼畑で主食を育てる「畑(火を入れる田)」、歩いていける距離にある「畠」とは、植える作物の種類を使い分けていたのですが、身近に薬となる植物を植えていたり、救荒作物を植えていたり。

昔のお屋敷に植えられている植物をみると、そんな昔のひとの100年先を読む力と、生きる知恵に学ぶことは多いです。

ゲンノショウコ(現の証拠によく効く)、センブリ(千回振る)、ドクダミ(十薬)、オオバコ(車前子)などは身近にある民間薬。山村にいくと、ばーちゃんが、庭を案内してくれます。植物を生活にどう活かしていたかということも。

その土地の気候や風土によって根付いてきた薬草は違えど、国を超えて同じような使い方が伝わっていたりする。中国にはなくなってしまった文化がむしろ日本に残っていたり、逆もあったり。それぞれの暮らしの知恵を学ぶことが、現代の生き方にちょっとばかしプラスになったらいいなと思います。

旅はわたしにとって、暮らしに必要な生きる知恵を学びにいくこと。
観光地ではなくて、日常に会いにいくこと。
旅を通してそんな日常を伝えていけたらなあと思っています。

たまに、取材の同行者を募集しています。ぜひ、また機会がありましたらご一緒に〜!

前回募集していた旅の記録


この記事が参加している募集

よろしければサポートお願いします。いただいた費用は、出版準備費用として使わせていただきます。