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続・心の中のパンクスが騒ぎ出すガッデムグラスゴー

朝起きる、曇っている。一週間ぶんほど貯まった洗濯物を引きずって、近所のCotton Freshというコインランドリーに行ってみることにした。
入ると、大量のゴミ袋や洗濯物に紛れてランドリーマシーンと、白装束のアラブ系おじいちゃんがいた(洗濯物かと思った)
私の洗濯物の量を見て大きいマシンを使えと言ってきたので、はいはいと言われるがままにしようと思ったら、8ポンド(1200円!)とのこと。
ちょっと待て待てコインランドリーに1200円も出せないしマジで高すぎる、と思い小さめのマシンを使いたいと懇願したが全部壊れているという謎の回答をいただく。
面倒になった私はええいままよとここで洗濯することにする。
ゴロゴロカートを押してやって来たおばあちゃんや、クタクタのスウェットの兄ちゃんらを見ていると皆これが当たり前と言った顔をしているので、きっとそうなんだろう。どうりで何日洗っていないんだい?という服を着た人が多いんだなと納得する。こんな調子では私も汚い服族の一員になること請け合いである。
待っている間、家に帰るのも何もかも面倒になってしまったので久しぶりに見た太陽のもとで日光浴をする。
厚い雲の隙間からたまに日光が顔を出すと、それだけで嬉しくてたまらない気持ちになった。
全体的に灰色と茶色の街である。
たまにカラフルな服の人を見ると、それだけでなんだか気分が弾む。

乾燥機も合わせて1500円という恐ろしい金額の洗濯を終えてから、家探しをするにも職探しをするにも何につけてもまず携帯をゲットせねばということで携帯ショップに向かう。
もちろん始まりのインド人に教えてもらったEEでSIMカードをゲットし、その近くの中古携帯ショップで安いスマホを買う。
また降り始めた雨そして風にガッデム!!ガッデム!!と心の中で叫びながら、(私の心の中のパンクスがここグラスゴーでは活発に活動している)雨宿り場所を探す。
ここ数日で私は地面に落ちていたペットボトルやビニール袋が容赦なく空中に舞い上がりぶつかってくるのを避ける技を身につける。
ぼーっとしてるとなんでもかんでも飛んでくるくらいの強風である。
風が強すぎて半目でしか確認できないが、オシャレっぽいストリートに入り込み、そして見つけたオシャレな文房具屋さんに逃げ込む。
そこは、日本の文房具やらを扱っている画材屋さんであった。
店長のニコラスはスコットランドの気のいいあんちゃん!と言った佇まいの赤毛にヒゲをたくわえた気さくな青年で、私がスコットランドのコメディ番組が好きでグラスゴーにやってきたというと大いに笑って、オススメの番組や仕事がありそうなテレビ局の情報などを与えてくれた。
しばし談笑していると、クーン!クーン!と何かの鳴き声がするぞ?と思ったら、なんと文房具棚の中から犬が現れた(置物かと思った)
茶色の毛のツヤツヤしたこのワンちゃん、メアリーちゃんというらしい。
散歩の時間だそうで、クーンクーンが止まらないメアリーちゃんとニコラスさんと私は嵐の中一緒に散歩に出かけることになった。
外に出た途端「あっやっぱ無理!ヤバイ!帰ろう帰ろう!」と騒ぎ始めたスペイン出身のメアリーちゃんを引きずりながらニコラスさんは私に簡単な街案内をしてくれる、はずであった。
が、横殴りの雨、風、もはや嵐である。

「ここ!ずっと行くとアジア系のスーパーあるから!」
「え?!(聞こえない)」
「醤油とか!売ってるから!!」
「え?!!」
「クーン!(風やばいって!)」
「醤油!醤油が!売ってるから!あっちに!」
「わかった!ありがとう!」 
「え?!」
「クーン!クーン!(やばいって!帰ろうって!)」
「醤油!」
「うん、それはわかった!ありが、ウォッ!(なんか飛んで来た)」
「クーン!クーン!(まじだって!)」
「Okay! じゃあ、また!醤油は、ウォッ(なんか飛んで来た)」
「はい!ありがとう!またァァァ!」
「クーン!クーーーーン!(アーーーー!)」

のどかな街案内のはずが嵐の中醤油!醤油!と叫び続ける羽目になってしまったかわいそうなニコラスさんと別れ、路頭に迷った私はもうこれは風ヤバイとどっか適当なライブハウスに入り、若いロックバンドをみる。
ボーカルの小さなTシャツを着た青年が、タンバリンを持っていたので既視感すごいなと思ったらそうか、OASISのリアムもタンバリンを持っていたなと思った。
UKのバンドはボーカルがタンバリンを持つのがデフォルトなんだろうか。

ガーッ!デーム!と私の心の中のパンクスの声が枯れるほどに叫びながらなんとか宿に帰る。

明日も雨なんだろうかと思うと俄然心が落ち込むが、明日は部屋の内見が2軒あるので、張り切って行こう。 
っていうか買ったばかりの携帯がマジで全然ちゃんと動かないし電話できないんだけども一体どういうことなんだガッデム!ガッ・デーム!!寝る!!!!!


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