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432番でお待ちのお客様


朝のホームでペットボトルのフタが転がる。上京してきて11ヶ月、ほぼ毎日電車に乗っていると、あんなに怖かった黄色い線の外側も歩けてしまう、のもあって、フタを掴まえる数秒に久々にひやひやした。


乗り込む7号車のドアも流れる景色も覚えたというよりは染みついて、今では全く味がしない。無味であるだけで無臭ではない車内は、いつも違うおじさんでいっぱいで、女性は少ない。東京はおじさんの割合が多いのか、女性は電車以外で移動しているのか、おじさんに擬態しているのか、流れる広告で喋る無音の俳優に頭の中で勝手な事を言わせながら考えている。理由が分からないのは不安だ。女の子が電車に乗るのはおかしくないから(笑)、と言わせてみる、松坂桃李は言ってくれる。



会社を休んだり遅刻したりすることが前よりもずっと怖くなって、心身の弱さは変わらず死んだ顔で通勤している。痛いどこかをごまかすと化粧が薄くなり、良くも悪くも顔色の悪さが目立つ。欠勤恐怖症は色々心当たりがあって、お給料が減ること、ちゃんと怒ってくれる上司、やさしい先輩、心配してくれるバイトの子たち、等々…。周りの良い人たちに迷惑をかけて悪印象を与えお給料が減る、のと引き換えに辛いから休む、なんてとてもじゃないが出来ない、程度の辛さなんだろうか。わたしを蝕むこいつらは、みんな飼ってて飼い慣らしてるものなんだろうか。だとしたら…


宇宙の仕事をしていた人が亡くなったニュースを見た。任されていることが大きすぎたから、かつては憧れて勝ち取った仕事だから、誰がどう見ても"まずい"環境下で限界を迎えてしまったのだろうか。そしてこういうニュースを見る度に思う、誰かが死なないと分からなかった、ことって本当にたくさんある。不謹慎を承知で言葉を選ばずに言ってしまうと、そこにチャンスを感じてしまう。誰かが、何かが、悪くて自分で死んだ時、誰がに殺されるよりもよっぽど役に立てそうな気がしてしまう。そういう終わりにまだ、憧れている。

同時に、自分はそこまで過酷な環境下にはいないこと、それでも生きづらさを感じて生きていることを申し訳なく思う、だからといって楽にもならない。


もがけばもがくほど潜ってしまう、意識があるうちにLサイズのフライドポテトを食べる。お金で買った脂肪の種をかじりながらイートインにいる人たちを観察している時、わたしは何をしているんだ、(笑)、という気持ちに、見事になる。あの黄色くて大きいMに会釈して早く家に帰りたい。帰ります。



#日記 #電車 #欠勤 #宇宙 #ポテト #あいろんのにおい

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