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転落の歴史に何を見るか(齋藤健)

なぜこの本

著者で本を選ぶことはありませんか。

私の興味関心テーマの一つに「子ども達」があります。
以前、子どもに関して注目していたある社会論点がありました。
その社会論点の解決に尽力したのが本書の著者で現職国会議員の齋藤健氏。
彼に興味を持ち、当時手に取ったのが本書。
読後に本書を執筆したのが43歳の官僚時代だったことに驚いたことをよく憶えています。

また、本屋で表紙やふと目についた本を選ぶことはありませんか。
本屋でのこういった本との偶然の出会いは楽しかったり、新たな領域を広げてくれる点でとても有意義な事です。
最近では本屋が減少傾向にありますが、昨日のニュースでこの齋藤氏が書店減少に乗り出したことを知りました。

本書の内容と直接関係ないですけど、書店で子ども達が本を眺め、気になった本を手に取り、可能性が広がる。
そんな体験を子ども達もできるといいなと願っています。

どんな本

本書は通商産業省(現在の経済産業省)の官僚であった著者が、組織人として戦前の歴史を分析した本です。

歴史から学び、現在の行政組織に活かせれば、との思いから書き始められた本書の内容は、組織論を超え、日本社会や日本人の価値観、歴史のサイクルなどにまで及ぶものとなりました。

具体的には日露戦争の奉天会戦から第二次世界大戦のノモンハン事件までの間に、日本で何が、何故、どう変わったのかを分析しています。
当時を生きた人々のインタビューや原資料を丁寧に拾い集められているのは歴史的にも貴重なもの。
分析から見える仮説には現代に流れる問題の源流が見え、まるで今の社会における問題点を見る思いがします。
好奇心からのみならず、実学として明治後期から昭和初期の日本史を分析することの意義がここにあるといえるでしょう。
ヴィジョン、戦略、人材育成などは現代経営で考慮すべき論点でありながら、日露戦争から第二次世界大戦に至るまでの日本において問題となった点でもあったのです。
学校で習う歴史の裏のこうした問題は、現代の問題とも類似しています。
ならば歴史を学ぶことで解決に活かしていくこともできるはず。
それが著者の願いであるに違いありません。

日本の文化論の見地でも興味深い点が多数あります。
時代が進むにつれ、日本人の気質が変わっていく様子を当時の新聞や書籍、日本人を外から見ていた海外の人々の証言から描いた部分はその一つ。
特に、明治の元勲をはじめとしたゼネラリストの喪失と共に、急速に武士道や日本版ノブレス・オブリージュが喪失していった様は21世紀の日本に生きる私たちの身につまされるところです。
日本人らしさというのは移り変わっている(移り変わってしまっている)のかもしれません。

誰が、いつ読むのがおすすめ

日本史、日本文化論、組織論を教養として身に着けておきたいビジネスマンにおすすめ。
失われた30年と言われた時代を抜け、経済が再加速を図ろうとする今こそ過去の失敗から学ぶものがあるのではないでしょうか。
また、歴史、文化論を専門として学んでいる学生さんも一読されると違った視点から専攻を見る事が出来て有意義と言えます。

私たちは歴史から何を学ぶことができるでしょうか。


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