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(感想)平穏の揺らぎ

(以下、筆者Xアカウントより転記)

映画初めは『PERFECT DAYS』。淡々と過ぎる規則化されたような平山の毎日だが、一見同じ日々であれども全く同じ瞬間はなく、平山はその微細さを楽しんで生きているのではないかと思いながら観ていた前半、ただ平山の生活を追うだけなのだがもうこれでいい気がした。しかし、小さくはない変化が起こる。

自分の平穏を揺らすのはやはり他人なのだ。そっとしといてあげてと思うのだが、今の揺らぎはいつかの過去に起因しているはずで、その過去があったから今に至っているのだから、揺り戻しも避けられはしないのだろう。

平山は毎朝、アパートの駐車場にある自動販売機で缶コーヒーを買って飲むのだが、その古びた自販機がちゃんと稼働しているということは、そこに他者の手が入っているということで、直に会わないとしても他者の存在なしでは、平穏な毎日も成り立たないのだ。

公衆トイレが綺麗なのも、平山のような清掃人が地道に仕事をしているからだし、あまり意識しないところで動いている他人の存在なくしては、自分が意図する自分らしい存在ではいられないのだと感じる。自分だって赤の他人のそういう存在なのだろう。


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