見出し画像

「日本の伝統」の正体

ぼくの本には珍しく、話題になり、売れました。「発売たちまち重版」という宣伝文句には憧れるけど、しょせん他のベストセラー作家さんのことだよなあと思っていました。が、まさかこの本でそういうことになるとは!
この「まさか」の意味は二つあります。
1 まさか藤井青銅ごときで。…これまで何十冊も出してきた本は死屍累々という駄目作家なので、そう思うんですね。
2 まさかこの企画で。…実は、この本の企画メモは2005年に作っていました。その時は「たかだか何年」というタイトル。どこか他の出版社に見せたと思います。が、反応がよくなかったので、そのまま。今回、多少お色直しをしましたが、柏書房が拾ってくれ、おそるおそる出したら、意外にヒットしたのでした。

企画を寝かしていた十数年の間に、テレビも雑誌も本も「日本スゴイ!」の大合唱(それはもちろん、日本の自信喪失、不安の裏返しですが)。それにウンザリしている頃に、たまたま出版されたのです。タイミングがよかったんですね。
だいたいいつも、藤井青銅は早すぎる、と言われます(先日、爆笑問題の太田さんにも言われました。アハハ)。急いでことわっておきますが、これは自慢ではありませんよ。アイデアと企画でメシを喰っている身としては、大きな欠点なのです。自分の興味と時代の読みとのマッチングが下手、ということですから。

だがまあ、なんにせよ話題になり、売れたのはいいことです。おかげで色んな番組、雑誌、メディアからも声がかかりました。

何人かの方が指摘していましたが、ここに列記された一つ一つの事例は、すでに先人が調べて書いているものです。なので、ものによってはご存知の方もいるでしょう。ぼく自身も半分以上は以前から知っていました。
この本でぼくが果たした役割は「あらたに作られた日本の伝統を、ジャンル別に分類した」という点だと思っています。そして「なぜその伝統が定着したか」という分析と考察。ぼくが調べた限りでは、そういう視点で「日本の伝統」を収集・分析した本やサイトはありませんでしたから。
ですからこれは「知ってる/知らない」のチェック本ではないのです。分析と考察をもう一歩進めると日本人論、日本社会論…みたいなものになるのでしょう。そこまで読み込んで評価してくれた方もいました。
もちろん本というものは、出版してしまえばどういう読み方をしようと、読者の自由ですけどね。

この本に限らず、ぼくの企画本の特徴は「着目・収集・分類・分析・考察・提言」からなっています。「ゆるパイ」だって、「略語」だって「東洋一」だってそうです。まあ「そんなものをわざわざ分類・分析しなくても」というケースばかりなんですが…。
牽強付会かもしれませんが、学問の始まりとはこういうことではないか?…とヒソカに思っています。

お読みいただき、ありがとうございます。本にまとまらないアレコレを書いています。サポートしていただければ励みになるし、たぶん調子に乗って色々書くと思います! よろしくお願いします。