マネジメント あらためて考えるパーパスが必要な理由

新型コロナウイルスの影響から明けて1年近く経ちます。回復した産業や企業もあれば、すっかり環境が変わってしまった産業や企業もあります。
ただ、これは以前の記事でも書きましたが、景気循環という視点から考えれば、これは極めて短期的な影響です。勿論、パンデミックによって急激な変化を余儀なくされた面はありますが、今の状況に至った背景は、もっと以前からありました。

・長い時間で考える
例えば、少子化の問題が取り上げられたのは、1992年の国民生活白書からですから、30年以上前のことです。この年僕は大学生になった年で、まだ世の中の問題を身近に感じることはできませんでしたが、例えば現在に至る労働力不足は、既に労働問題を専門とする研究者の間では議論されていたはずです。
少子化社会対策基本法が制定されたのは2003年ですから、20年前には法制定を必要とするほど深刻なものと認識されていました。

少なくとも、この時点で雇用の確保を考えていた企業であれば、今人手不足に陥ることはなかったはずです。言い換えれば、人手不足対策には、最低でも20年の猶予があったことになります。

そうは言っても、この発言は後出しジャンケンにしか見えないでしょうから、多くの経営者の方からは「今更言うな」と言われるかもしれません。

2003年だと、僕は大学の教員になって2年目、まだ30歳でした。
僕が何かを言っても、例えば経営者の方からは、「世の中を知らない若い先生の机上の空論」と歯牙にもかけられないことがしばしば。その頃たまに立ち寄っていたお店、とても可愛がって頂きましたが、経営者の方が集まるお店だったので、頭が白くなった方(酔っておられましたが)から、「経営を教えてやろうか」なんて言われたこともあります。(笑)

実はこうした場で話したこと、まあ僕も若かったので、周りが見えず一生懸命だったのですが、後になって、「ちゃんと聞いておけばよかった」といわれたことが何度かありました。

・VUCAの時代
元々は1990年代、アメリカの軍事用語として発生しましたが、2010年代には、ビジネスの世界でも「VUCAの時代」という言葉が使われるようになりました。
世の中が非常に複雑で曖昧なものになり、様々な基準が通用しなくなっています。

こうした中で、色々な経営者の方と話していて、感じたことがあります。それは多くの方が「どうしていいか解らない」と感じていることです。

これも以前の記事で書きましたが、例えば教科書の歴史区分では、戦後を現代としています。しかし社会科学の世界では、平成、つまり1989年以降を現代と考えるようになっています。ただ、今の日本の産業や企業の状況を考える場合、やはり教科書の区分で考えた方が良いでしょう。

2010年代というと、おおよそ戦後70年ということになります。つまり私達は、約70年に渡って、一定の目標や方向性に、盲目的に進んできました。
例えばCSRや理念経営、ミッション、パーパスなど、形だけで、本来の意味で浸透しづらかったのもこのためです。
戦後、日本の企業は「大きくする」ことが正解であり、最大の目標でした。こうした考え方は、今でも多くの経営者の方に見受けられますが、企業の能力や適性市場規模を超えて拡大した場合、企業がとうなるかは、例えば「いきなりステーキ」や「ビッグモーター」の例をを見ればお解り頂けるでしょう。
こうしたことから日本企業では、先に挙げたCSRなどは、形式化し、大義名分になってしまいました。

今の社会は、端的に言ってしまえば、共通の目標や模範解答がない状態になりましたから、与えられた、もしくは模範解答的な目標や正解がありません。そうしたものを自分で見つけ、設定しなければならないのです。

しかし約70、与えられた目標に従ってきた私達は、自分で正解を見つける力を失ってしまいました。
これを取り戻すための、人が取り戻すべき能力がIDGsなのではないでしょうか。

これは経営者の方に限ったことではありませんが、これからの時代は、全ての人が、自分なりの正解や目標を見つけ、生き方を決めなければなりません。
僕の立場からすると、これは大学での教育も含めて、ずっと行ってきたことなので、残念というか、とても皮肉に感じてしまいます。

・全ての人にパーパスを
これまで述べてきたこと、これからの社会で、自分自身で生き方を決めること、これこそがパーパスです。
パーパスは、言葉自体の意味は「目的」ですが、今言われている意味は「何かを為す根源的理由」であり、「志」と位置づけられています。

一人一人が、自分自身の生き方も含めて、根源的理由、つまり「志」を明確にして、それに従う。

極論かもしれませんが、これを見つけられないなら、例えば経営者の方であれば、企業を終わらせることも正解の1つだと話しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?