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私が1番幸せを感じられる場所

一人旅をした、という人の文章を読むのが好きだ。
行きたくてもなかなか行く機会を作れない異国の地や、魅力的な国内の巡り方、そこでしか味わえない空気の良さ、人との出会いを自分も経験したような気持ちにさせてくれる。
あと、一人は好きだけど遠くに出かけていくのは不安な私にとって、一人でこんなことができるの?!といった驚きや面白さを知れることも楽しい。

話は変わるが、数年前私は大学入学とともに都会へ引っ越した。都会といっても緑はそこそこある、それでいて東京からは割と近い場所で4年暮らした後、今度は就職にあたって地元へ帰ってきた。地元といっても、高校まで住んでいたところからはかなり離れているし、私が育った静かな過疎地とは違い、ここは祭りが盛んで子どもの数も多い町だけど。都会とは違うゆったりとした時間の流れと、思いっきり吸うと気持ちのいい風の匂い。懐かしさと新しさを同時に味わえるこの場所が、私にとっては幸せそのもの。

同級生には驚かれたこともあった。就職で戻ってくるなんて珍しいね、と。そうなのかもしれない。実際、今一緒に働いている主婦の方々の成人したお子さんは皆、東京や大阪に散らばっているらしい。「まあ、こんな田舎に仕事なんか無いからね」と言っているのを聞いたときは、なんだか的外れだと思ったしショックだった。私、ここであなたと仕事してるんだけどな。

確かに、ゆったりしすぎているあまり、周りを急かしたくなることも無くはない。時代遅れな考えやシステム、都会にいる人にとっては当たり前のことでも意外と知られていないことだってある。同世代の友人と出会おうにも、そもそもイベントやサークル自体が少ない。誰かから、「それなら自分で作れば?」と言われそうだ。そんなことは分かっているけど、SNSで見る同級生のお洒落な投稿を見るとその気も失せる。悔しいけど、キラキラして見えるから。

キラキラした人になりたい、と漠然と思っていた。学生の時、新卒でフリーランスになり今はインフルエンサーだという人に悩み相談をしに行ったことがあるけど、その時も「キラキラしていて素敵だ」と相手を褒めたことを覚えている。たまに昔の幸せに浸りたくて過去の自分のSNS投稿を振り返るのだけど、確かにキラキラしてはいる。気軽に映えスポットに行けたし、友人にもよく羨ましがられた。けれど、あまりにも浮かれていたとも思う。今ではそんな投稿をすることもめっきり減ったけど、十分いい暮らしができているんじゃないかな。

今の自分にとってとてもいい環境。近くにお店も揃っているし、都会より電車賃が高いのは玉に瑕だけど、年に数回推しのコンサートにも日帰りで行ける場所。「都会で汗水垂らして懸命に働き、その褒美に田舎でリフレッシュしに来るくらいなら、いっそのこと田舎に住めばいいのに」という意見を聞いたことがあるが、今の私ならそれも納得できる。都会のキラキラが実際は裏側で見えない苦労や悩みを抱えていることを体感したから、未知のキラキラに対して変に期待して羨む生活をすることももう無い。

都会で過ごすよりも今の暮らしのほうが幸せだ、って今は信じたい。でも本当は、どこで暮らすかに縛られる必要はなくて、合わないと思ったら場所を変えてもいい。だから今は幸せだと思っていても、本当はもっと自分に合った環境が別にあるんじゃないかという気持ちが湧いてくることだってある。だけど、「自分が幸せを感じられているか」を軸に置いたら、今まで身にまとわりついていた承認欲求も泡となってお空へ消えていく。きっとこれからも、一生かけて1番幸せな場所を探し続けるのだろう。




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